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第4回 「総合学習」問題


皆さんこんにちは。仙台では、学校行事のウォークラリーの最中に痛ましい事故が起こってしまいました。教員としては、教え子が若くして亡くなるということほど、無念な話はありません。亡くなった生徒さんに心よりお悔やみを、そして、学校の関係者の皆さまにお見舞いを申し上げます。

今回は「総合学習」について取り上げます。お子さんのいる方は、「今、総合学習では何をしているのか」、「面白いかどうか」を、ぜひ聞いてみて下さい。
 総合学習は、義務教育では2002(平成14)年度、高校ではその翌年に正式に開始されました。公立校であれば、「総合」という名前で時間割に記載されているはずです(私立校の場合は、学校によって差があります)。簡単に言えば、「通常の教科の学習では得られない、子ども自らが生きる力や考える力をつける」ための授業です。文部科学省のサイトに解説がありますので、詳しくはそちらをご覧下さい。
 「総合」について:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/sougou/020501.htm

この授業に関しては、子供用の教科書もなければ、教員用の指導書もありません。「地域や学校の実情に応じて実施する」のが原則だからです。ですので、学校の校長、現場の教員の判断で、授業の内容に差が生まれています。

新聞記事

以前、私のメールマガジン「週刊 みどりのひとりごと」(2004/03/13)でも指摘したことがあるのですが、その差はひどいものです。中学3年間、悲惨な内容の授業を受け続けた、という話も珍しくないですし、「通常の授業の補習だった」という話もよく聞きます。また、教育評論家の中には「総合で補習をするのが公立中学の良い学校」という趣旨の意見を言う方もいます。

ですが、補習をしても、「総合」は他の教科のように評定をつけないので、結局ふざけて集中しない、という話も聞きます。それならば「補習」ではなく、現行の指導要領で抜け落ちている部分のテストをする方がまだ良いのではないでしょうか。

「総合」は、学校や学年で統一方針を立て、その中で行なわれているところもありますが、各教員の裁量が一番重要です。その結果、「出席だけとって、後は何もしない」というとんでもない授業から、充実していて、子どもが「出て良かった」という授業まで、同じ学校内でも大きな差が生まれているのが実態です。つまり、教員の能力によって格差が生まれていることになるのです。

「総合」の授業は、教員の創意工夫や想像力が大きな鍵を握っています。教員の中には、新しいことを創意工夫する能力に乏しく、1年間、マニュアルのないことを続けるのは苦痛でならない、という人も明らかに存在します。そういう授業を1年間受け続ける子どもは本当にかわいそうでなりません。私も、自分の授業では、生徒の感想で満足度を確認しています。また、他の教員の総合学習を受けている生徒に感想を聞くと、「あんな授業、許せない」、「先生も受けてみる?ひどすぎるよ」と、かわいそうな答えが返ってくることがあります。また、こういった状況は、保護者から見れば「無駄な授業に対価を払っている」ことであり、教員が「給料泥棒」と指弾されても仕方ないと私は考えています。

このような授業を放置するのは、もちろん良くないことです。そういった教員の授業を受け続けても、子どもには何のメリットもありませんし、通常の教科の勉強をする方がはるかにましです。また、1年間そのような質の低い授業を許してしまうことは、教員にとっても「こんな程度で許される」という悪い前例を作ってしまうので、良くありません。子どもが「総合がつまらない」と言っている場合、よく話を聞き、また、クラスの他の保護者とも話し合い、改善の要求をすることが重要です。要求の方法は、第2回に書きましたので、詳しくはバックナンバーをご参照下さい。

でも、ただ「改善を」と言っても、能力の乏しい人には考える余地がないので、精神的に追い込まれ、休職などの事態に陥ってしまうことも考えられます。ですから、「こういう授業はどうでしょうか」、などと、積極的に保護者のアイデアを出していただきたいのです。

今、変質者による犯罪が増えていることもあり、子どもは「保護者」、「教員」、「習い事などの指導者」以外の大人と口をきくことが昔よりも減っています。読者の感想にも、郵便配達の方でさえも「こんにちは」と声をかけても無視される、というお話がありました。でも、これは、子どもの成長にとって、決して好ましいことではありません。多くの大人が良いところをほめ、間違いを正すことで、子どもは成長していくのです。ひとりでも多くの大人の声が、子どもに届くのが良いことなのです。

「総合」は、能力とアイデアある教員に習うと、こんなに楽しいものはないでしょう。お子さんの声に耳を傾け、日本全国の学校の「総合」が、楽しい時間になるよう、どうか保護者の皆さんにも積極的に動いていただきたいです。

2005.5.25 掲載

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