第3回 「ゆとり教育」問題
皆さんこんにちは。読者の方からご意見が寄せられるようになり、各地での教育問題にあれこれ考えさせられています。教育問題は地域によって関心の寄せられる話題に差があります。私も各地の実態を知りたいですので、ご意見がありましたらどうぞお寄せ下さい。
今回は「ゆとり教育」について考えます。本格的に始まったのは3年前、現在の高校3年生が中学3年生だった時のことです。私の教えている国語を例にしますと、その時の教科書の内容の「劣悪化」に、想像していた以上の衝撃を覚えました。小説は簡単な内容のものだけ、読解力のある子には「読めばすぐわかる」ものばかりです。評論(説明文)の内容も簡単になりました。なお、完全週休2日制もこの年にスタートしました。
ゆとり教育下のカリキュラムでは、国語は中学生では週3時間しかありません。1週間が7日あるうち、半分以下しか勉強しないのです。たとえば、時間割の都合で、国語が「月・火・水」曜日にあったら、木曜から日曜までは国語を勉強する機会がないのです!これでは毎週定期的に宿題を出さなければ、成果を定着させるのは難しいでしょう。
また、国語では新しく「話すこと」の重視も方針として打ち出されました。ディベートやスピーチなどが苦手だといわれる日本人の実力をあげよう、というものでしょう。ただ、中身あるスピーチをするためには、中身ある話が構築できなければならず、そのためにはしっかりとした国語力が必要になってきます。でも、国語は週3時間。しかも、その中で小説や評論も読み、スピーチもして、ということになってくると、どちらも中途半端に終わってしまう危険が大いにあるのです。両方の実力をまんべんなくつけるためには、週4〜5時間は授業数を確保しなければ難しいでしょう。
また、国語の読解力(インプットする力)が低下していることは、充分物事が理解できない状態なのですから、すなわち文章の表現力(アウトプットする力)も落ちていることを意味します。ですので、数学の文章題で誤読してしまう、英語の和訳で意味不明な文章を書く、など、他教科ほぼ全てに悪影響が出ていると言っても言い過ぎではありません。更に、この世代が文章力や読解力に欠けることで、成人後、本人のみならず共に働く同僚なども大いに困るという可能性もはらんでいます。
今のゆとり教育を図式化するとこうなります。いかが思われますか。
「学校では勉強が中途半端→充分に実力を養う時間がない→塾や私立校で勉強をする」
ゆとり教育で得をしているのは私立校と塾・予備校だけだと私はにらんでいます。公立校で土曜日を休んでいる間に、私立校と塾ではしっかり授業をしていますから、行っている子と、行っていない子との間で差がつくのは当然です。
でも、塾に行かせれば全て安心、というものでもありません。結局は「自主的に学ぶ」、「積極的に自分で何ごとも取り組む」といった姿勢が子どもに身につかない限り、塾に行っても成績が上がることはありません。また、塾はどうしても偏差値重視の姿勢がありますから、「偏差値でしか進路を選べない」、「親の言いなりにしか物事を選べない」子どもを量産する危険もはらんでいるのです。
現行のゆとり教育は明らかに子どもにとってマイナスですが、学校から解放された時間を家庭で有効に利用し、親子で一緒に本を読んだり、計算・漢字ドリルに取り組む時間などにすることで、子どもにとって大いに有意義な時間に変えることができます。無目的に塾に行かせるよりは有効な場合もあるのです。
子どもにとって、「長いスパンで見た時、何をすればプラスになるか」を大人は考えて、ゆとり教育の過ごし方を考えていきたいものです。
2005.5.10 掲載
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