2013年に史上初となるアメリカ大陸出身のカトリック教会長として第266代ローマ法王に就任したフランシスコの半生を、実話を基に描いた作品。「イタリア映画祭2016」では『フランチェスコと呼んで みんなの法王』のタイトルで上映されたものです。
今回、2つの興味から本作を見ることにしました。
1つは、汚職問題などで揺れるヴァチカンの救世主のごとく登場し、“ロックスター法王”と呼ばれるなど、絶大な人気を誇る法王に興味を持ったこと。もう1つは、第95回で紹介した『沈黙-サイレンス-』を見た影響です。
神の存在が、今の時代において、いかに意味を持つのか?カトリックの世界を生き続ける法王の半生から何かを感じることを期待してのものです。
本作の中心となるのは、軍事独裁政権下におけるアルゼンチンでの日々です。1960~70年代の非道という以外に言葉が見つからないほどの圧政の中、神の道に生きる当時の法王が、いかに生きたか?その苦悩と苦難の日々、それをどう乗り越えるのかが、最大の見どころですね。状況は全く違えど、共感できるところがきっとあるはず!
教会といえども組織ですから、上の意向で物事が決まっていきます。本来、弱き者を助けるはずなのに、たった一言の命令によって無残にも叩き潰されることもあるわけです。愛も正義もあったもんじゃない。こうした理不尽さに遭遇することは、何も映画やドラマの中だけの出来事ではありません。程度の違いこそあれ、日常に、ごく当たり前のように起きて、誰しも経験するようなことです。
神が沈黙し、教会も政府も誰も助けてくれないような状況にあるならば、我々は一体どうするのか?長きものに巻かれて、涙を飲むのか。それとも…
ちっぽけな一人の存在が、時に神にも勝るような大いなる意味を持つ。そして、それを見ていてくれる人が、どこかに必ずいる!生きる力を与えてくれる作品ですね。
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