遅ればせながら、
1月に公開になった話題作『沈黙-サイレンス-』を見ました。
世界20ヵ国以上で翻訳されている遠藤周作の同名小説を原作に、巨匠マーティン・スコセッシが、28年もの長きに渡る構想の末に完成させたもの。
見終わった後、いえ、厳密にいうと見ている途中からいろんなことを考えさせられる作品でした。
舞台は、江戸時代初期、キリシタン弾圧下の長崎。
社会の授業を通じて基礎知識は持っているものの、ぼくを含め、日本人の多くは事情をよくわかっていないのが実情だと思います。
まず、神の存在について。
もし、この世に神がいるのならば、なぜ困っている人たちを助けてくれないのか?理不尽な死を前にして苦しむ人間の前に姿を現さず、なぜ“沈黙”を貫くのか?
神はいるのか、いないのか!?
さらには、信じること。そして、正しさとは?
自らの信じること、信念のために、人が犠牲になってもいいのか?殉教こそが正しき態度であり、正義なのか?
いや、人の命を守ること以上の正義などないのではないか?
これでもかとばかりに次々襲ってくる主人公のロドリゴの苦悩を見るにつけ、もし自分なら一体どうするのかを考えずにいられません。
また、キチジローという見下げた卑怯者のような、誰よりも正直者のような、何ともいえない存在が見る人の胸中に、複雑な思いをかきたてます。
そして、もし、神が存在し、その答えが“沈黙”であるとするならば、「答えは自分で見つけなさい」ということなのかな、と思ったりもしました。
究極の選択というべき厳しい状況下だからこそ、考えること、決断することに一層意味を持つような気がします。
それと、本作は2時間40分もの大作ですが、全く長さを感じさせません。画面に吸い寄せられて、あっという間に駆け抜けた感じで、もっともっと見たかったくらいです。
キチジロー役の窪塚洋介をはじめ、浅野忠信、イッセー尾形ら日本人キャストの活躍も見どころの1つ。劇場でも、ソフトでもいいので、ぜひ見ていただきたい作品です。
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