『木靴の樹』、『ポー川のひかり』など数々の名作で知られる
イタリアの巨匠、エルマンノ・オルミ監督の最新作です。
前作『ポー川のひかり』を
自身の映画人生における最後の劇映画、
と語ったオルミ監督が、前言を翻してまで発表する最新作。
それだけでも十分見る価値があるのではないでしょうか。
今のこの時代に、どうしても伝えておきたい、
残さねばならない、と監督の心を奮い立たせたものとは?
そこから、この物語が始まると思います。
本作で一際印象的なのは、その絶妙な状況設定。
明日にも取り壊される教会堂にひとり残る老司祭と、
救いを求めてやってきたアフリカからの旅人たち。
老いて消される運命にあった司祭と教会堂が
皮肉なことに、不法入国者たちの存在によって
新たな使命を帯び、輝きを取り戻す。
堂内に、にわかに誕生したダンボールの村。
この「ダンボールの村」こそが本作の原題であり、
重要なカギです。
人々の交流から生まれるドラマの数々。
しかし、ダンボールが指し示すように、
あくまで一時的なものです。
それは次の夢への仮宿なのか、
それとも、吹けば飛ぶような脆さ、絶望の象徴なのか。
いや、今の時代こそがダンボールそのものなのか。
まだ希望の芽はあるのか。
もしあるとするなら、それは一体何か。
劇的な動きのない、シンプルな流れの中、
見る者の脳裏に、様々なものが去来することでしょう!
この物語の結末を決めるのは、あなたです。
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