日本映画の活性化を目指し毎年開催される「TAMA映画フォーラム」。この映画祭の中でも、映画界に新風を送り込む才能の発見で注目度の高い、「第8回TAMA NEW WAVE ある視点」部門に選出された「ヘルベチカ・ステップス」の監督、星野顕亮さんにお話をうかがいました。
■映画作りにかかわったきっかけを教えてください
大学に入り、バレエをやっていた母の影響でまず演劇部に入部したのですが、考えていた雰囲気とちょっと違うなと。そこで、落語研究会へ転部し、「追手門十三」という高座名まで持っていました。しかしここでも居心地が悪く、最終的に映画研究会へおさまった、という流れです。当時はまだ8mm映画が主流でしたね。その後Windows95の台頭で、編集もPCでできるようになり、撮影から編集までを、独学で学びました。卒業後は特許事務所で申請業務に携わりながら、土日を利用して映画製作を続け、今に至ります。
■星野さんが影響を受けた作品、監督を教えていただけますか
一番好きで影響を受けた人は、押井守監督です。映像の美しさと乾いた人物表現のコントラストが、いいなあと思いますね。自分が作品を撮るときにもそうなんですが、できれば情緒的表現はぎりぎりまでそぎ落として、核の部分をクローズアップしたい。そこでいまは、内容をあまり話そのもので見せるのではなく、映像技術で表現することに注力していますね。ほかには、アメリカの映像プロデューサー、デビッド・E・ケリーも好き。「シカゴ・ホープ」や「アリーmyラブ」なども、たくさんの人間を描きながらもウィット過ぎないところが気に入っています。
■初めての長編「ヘルベチカ・ステップス」製作中のエピソードなどはありますか
「ヘルベチカ〜」は当初の構想で、3時間半という大長編でした。それではあまりに長いということで、台本に再考を重ね編集も工夫して、なんとか120分にまで短縮したんですよ。しかし上映会の当日、初回でお客さんの反応を見ていたら、退屈そうにしている人や、中には途中で帰る人も出てきて・・・。これに焦った僕はすぐに帰宅。その場で再編集をして、最終上映までに、78分に縮めたものを映画館に持ち込みました。製作スタッフからは「何やってるの?」と叱られましたが、上映館の担当者さんには、「フットワークの軽さが気に入った!」と言われましたね(笑)。アンケートを読んでも、1回目と3回目ではお客さんの反応が明らかに違うので、決断してよかったと思っています。
■映画監督として、今後の活動予定や展望をお聞かせください
このあと撮る予定にしているのは、「話術の巧みな兄と無口な武闘派の妹」という二人を、謎の男三人が追うお話です。性格のはっきりした人物をどう絡め、どんな仕掛けをしようかと、いろいろ考えています。将来的には、観る人がハッピーになれるミュージカルを作りたいですね。もともと大学でも、1本の作品に2つのBGMをかぶせてその違いを検証する、などの試みもしていましたし、現在も友人のバンドでPVを製作するなど、「映像と音楽のシンクロによるエンターテインメントの最大効果」が、自分のテーマでもあるんです。そのためにも、音楽を使った映像製作の実績を増やしたいので、バンドのPVを作ってほしいという方は、お気軽に相談していただけたらと思います。
「ヘルベチカ・ステップス」オフィシャルサイト
http://www.psynet.jp/helvetica/
【星野顕亮(ほしのけんすけ)略歴】
1975年京都出身。大学在学中より映像製作を始める。
2003年:SETAGAYA E10 FILM設立。
2003〜2005年:千駄ヶ谷LOOP-LINEにおいてアートイベントLOST&FOUNDに参加
2007年:「ヘルベチカ ステップス」
下北沢トリウッド上映
TAMA NEW WAVE「ある視点」部門選出
シネアスト・オーガニゼーション・オオサカ オープンコンペ部門入選
「セカンドライン」
ふかやインディーズフィルムフェスティバル優秀賞
ZERO GENERATION FILM FES Vol.3選出
|