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シネマの達人

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メジャー/マイナーにこだわらず、シネマの達人(何様だ!)が注目する映画を5つ星評価で紹介していきます。(毎月25日頃更新)

  今回は『カンナさん大成功です!』『ディセンバー・ボーイズ』『夜顔』の3本です。

【巻頭コラム】「映画検定1級(第1回)にトップ合格して」 吉田康弘
【とっておきの1本】「マルホランド・ドライブ」('01米)

巻頭コラム : 「映画検定1級(第1回)にトップ合格して」

検定が流行だそうで、種々雑多なものが行われる中、待ってました!
と映画ファンに言わしめた、キネマ旬報社主催の映画検定。第1回の試験は、2006年6月に2〜4級が行われました。というのも、1級は、2級合格者のみ受験資格があるということでしたので。この時は2級3級を受け合格。とはいえ順位は両方とも100位前後でした。4択問題・マークシート方式で、70%以上の得点で合格です。

免許などの資格試験ではなく、力試し的なものですから、これに合格したからって、仕事等に有利になるわけでもないので、試験自体と試験勉強を楽しんで、自分の知識を試す、腕試し、遊びとして受けてみたわけです。

第2回で1級。それと、やっぱり遊びなら遊びで、全階級制覇も良いかな?と思い、4級も受けました。

結果、両方合格したわけですが、1級は何とトップだったそうで(1位は4人いたそうです。4級はやはり100位前後)、これにはビックリでした。後で100位代の人に聞くと、その方は私と1点差と言うことでした。なお、1級には一部筆記問題もありますので、運だけでは合格できないでしょう。

第1回と第2回を通して言えることは、問題の難易度が結構低く、得点数が接近してしまったために、たった1点差で200位近い順位の差が出来てしまっていたことです。

おそらく、そんな事で批判もあったのでしょう。2回目の1級試験も受けてみたのですが、その難しさと言ったら! 試験時間を倍にしてくれ! と言いたい難易度でした。

次回の2008年5月の第4回試験がどの程度の難易度になるかは、私にとって大注目なのですが、確かにどの程度の難易度の問題にするかは、難しいところでしょうね。まだ始まったばかりですから、キネ旬さんに、頑張って欲しいところです。

勉強については、難易度が不安定で、何とも言いづらいのですが、やはり手始めはキネ旬発行のテキスト1冊と問題集を何度か読むことでしょうね。問題集は3冊出ていて、おそらく3月頃には5月の試験に向けた4冊目が発売されると思います。最新版が一番良いとは思いますが、余裕が有れば、全部読み込んだ方が、出題傾向も分かってくると思います。勿論出題は、日本映画を含めた世界中の映画及び、その歴史全般なので、あらゆる映画関係の本が、教科書であると言えますし、ネット検索も参考になると思います。

私の場合、何より遊びと割り切って、楽しむことを第一に考えるようにしているので、試験勉強自体が楽しくて仕方がありませんでした。電車の中でも、布団に入っても、一月ほどは、どこでも映画の本を開いていました。

映画が好きな皆さん、気楽に、好きな映画を楽しむのと同じに、試験勉強と検定試験を楽しんでみてはいかがでしょうか。

私も、しばらくしたら、また腕試しをしてみたいと思います。


(吉田康弘)


最新映画星取表 =1点、=0.5点。最高得点=5点

『カンナさん大成功です!』   
監督:キム・ヨンファ
出演:チュ・ジンモ、キム・アジュン
配給:ワーナー・ブラザース映画
http://wwws.warnerbros.co.jp/200poundsbeauty/
鈴木由美子のコミックを韓国で映画化。全身整形により幸福を手に入れようとするヒロインを描き、韓国で大ヒットしたコメディ。

野川雅子            ★★★★★
 世界中の女性の共通の願いは、好きな人に愛されること。その為に、少しでも綺麗になりたいと努力するのだ。しかし、外見だけ美しくなれたら、それだけで幸せ?人の本当の魅力は、外見だけじゃない。素直に正面から向き合う気持ち。そんな大事なことを、全身整形をし、恋に身体をはって挑もうとするカンナが教えてくれる。カンナは美女になっても、ブスだった時の優しさや素直さを失くさない。そこが、この映画の1番の魅力であり、誰もが彼女のファンになってしまう所以。もう1つの見所は、綺麗な人を追いかけるくせに、整形にはシビアな韓国人男性の現実がわかるところ。自分の彼女には整形美人はNGって・・結局、どの国も変わらないのかも。
悠木なつる           ★★★★★
 美容整形に賛成するか否かはさておき、本作を観たら、ヒロイン・カンナを応援せずにはいられなくなる。でも、もし整形したカンナが、意中の人・サンジュンと結ばれるとしたら、結局、女は外見だということ!?
と、様々な思いを巡らせながら鑑賞した。主演2人は存在感たっぷり!
キム・アジュンの透明感溢れる美しさと、真っ直ぐな眼差しが印象的なチュ・ジンモに心を奪われた。日本の漫画が原作なだけに、国内で作られなかったことが悔やまれるが、整形に寛容な韓国だからこそ、ストーリーには説得力があるし、ラブコメのセンスも光る。クライマックスシーンでは思わず涙がホロリ。観た後は、自分磨きをせずにはいられなくなる作品。
団長               ★★★★
 整形、ゴースト…芸能界の裏側をシニカルに照らしつつも、コミカルでロマンチックなエンタメ作品です。男女で見た印象がかなり違うと思われます。一人の男として、僕の個人的意見を言わせていただくと、「生死をかけてまで整形しなくても、別に太ってたっていいじゃないか。オペラ歌手も太ってる人が多いし、歌が最高ならそれでOKでは」と思ったりするんですが、そこはオンナゴコロの難しいところ(?)。女性だからわかる、というところも多々あるようで、劇場内でも泣いている人がたくさんいました。いい話のネタにもなると思いますし、ぜひどうぞ!
伊藤洋次            ★★★★☆
 どこにでもありそうなシンデレラ物語……と思いきや、実際には「整形」をめぐる悲喜こもごもを見事に表現した良作だ。もしこれが米国ハリウッドで作られていたら、ラストの場面はチカラ技を駆使して(?)とりあえずみんなハッピーめでたしめでたし――といった作品になっていただろうが、そんな安易な展開にしないのが今の韓国映画の実力。コメディーの持ち味を生かしつつ、家族の絆をきっちりと丁寧に描き、観客を納得させるレベルに仕上げている。主役のキム・アジュンは、大げさな演技ながら、そこがまた魅力的でとても良かった。



『ディセンバー・ボーイズ』 
監督:ロッド・ハーディ
出演:ダニエル・ラドクリフ、クリスチャン・バイヤーズ
配給:ワーナー・ブラザース映画
http://wwws.warnerbros.co.jp/decemberboys/
「ハリー・ポッター」のダニエル・ラドクリフ主演による、オオーストラリアを舞台にしたひと夏の青春ストーリー。

吉川北京波           ★★★★
 非常に豊かな作品である。孤児院の4人の少年たちの予期せぬ夏休みの日々。父母を知らず家庭を知らない12月生まれという共通点のみを持つ孤児たち。無意識のうちに培われるはずの情愛の表現を知らず、愛玩犬がひたすら媚び甘えるように、「選ばれる演技」を繰り返していた彼ら。人の避けられぬ死を学び、理想や思い込みに傷つく悲哀を学び、同じように喘ぎ彷徨する同志としての異性を通して、人を慮ることを学ぶ。その人生の真実を学ぶ日々は、少年としての日々との永遠の訣別にほかならない。その意味で、極めて清潔な映画であり、いま少年というよりも、かつて少年であった人間には強く迫りくる映画である。予告編からはダニエル・ラドクリフ少年のファンの女の子たちの集客を狙った青春映画的セールスがミエミエだったが、本作は『サイダーハウス・ルール』のごとき厳しい人生のドラマで、映画は清潔だが、商品価値を高めようとすれば不潔にもなる実例となった。
箕輪克彦            ★★★
 オーストラリア版スタンド・バイ・ミーと言えるノスタルジックな青春映画。孤児院の仲良し4人組ディセンバー・ボーイズ(皆12月生まれ)が、後援者のはからいで海辺の小さな村で過ごすひと夏の思い出を、オーストラリアの美しいロケーションを背景に描いている。外界を知らずに育った少年たちが、ホームステイ先の老夫婦や、近所の人々と深めながら成長してゆくドラマに目新しさはないものの、同じくオ−ストラリアを舞台にジャズミュージシャンを夢見る男を描いた秀作ディンゴを手がけた脚本家マーク・ローゼンバーグの奇をてらわない作劇は好感が持てる。ボーイズの最年長マップスをハリポタことダニエル・ラドクリフが好演しているが、欲を言えばもう少し蔭りが欲しかった。


『夜顔』   
監督:マノエル・ド・オリヴェイラ
出演:ミシェル・ピコリ、ビュル・オジエ
配給:アルシネテラン
http://www.alcine-terran.com/main/yorugao.html
ルイス・ブニュエル監督にオマージュを捧げ、「昼顔」の登場人物たちの 38 年後を描く。

根岸侘助            ★★★
 1967年のルイス・ブニュエル監督作品「昼顔」の続篇。38年前、女は夫に隠れて売春することに被虐的かつ加虐的快感を覚え、男は彼女の夫の親友で、偶然彼女の売春行為を知ってしまう……そんな男女が38年後のパリで偶然出会い、食事し、別れる様子を70分の中篇として組み立てた映画です。 99歳の現役最高齢監督マノエル・デ・オリヴェイラは、的確なフレーミングとカット割りによって簡潔極まりない語り口を披露しつつ、今もなお下心を丸出しにする男の俗物ぶりを暴き出し、38年前の過ちに口を閉ざす女の悔恨を描きながら、男の身にも、女の身にも押し寄せる老いの哀しみを、そして黄昏れゆくヨーロッパ文明への哀惜を浮き彫りにしているように思えます。 洒落ていて、枯れていて、それでいて映画の艶を失わないオリヴェイラ節に驚嘆。


とっておきの1本 : 「マルホランド・ドライブ」('01米)

難解な仕掛けの数々と奇想天外な登場人物が織りなす不可解な世界にマニアが続出した。
この映画は最後まで真実を明らかにしない。作るだけ作ってあとはアンタらが好きに解釈してくれればいいと監督リンチは語る。

当然だ。いい映画は言葉を必要としない。だから以下の解説は無用ではあるが、本作を未見の方々がマルホランド・ドライブでローラ・エレナ・ハリング(N・ワッツとともに本作のキーマンを演じる女優)のように迷わない・u桙スめの道案内程度のものだと受け止めていただければ幸いである。

この映画は現代版「サンセット大通り」であり、昔も今もハリウッドは砂上の楼閣であると語っている。ハリウッドで女優として成功する条件は

1.プロデューサー(当然男)の情婦になる。
  2.親戚が映画業界と有力なコネクションを持つ富豪であること。
  3.ブロンドの巨乳であること。

であり、そのどれにも恵まれなかったレズビアンの女優志願は現実の世でその夢を叶えることができないのである。

レズビアンを演じたN・ワッツはこの映画出演を機に10年に渡る下積み生活からスターダムにのし上がった。映画の主人公はN・ワッツそのものと重なるところが多分にあった。だから演技なのか地なのかよくわからない。わからないからこの映画は恐ろしいのである。

劇中で彼女が恋人を失ったあと自暴自棄になって泣きながら自慰行為を繰り返すシーンがある。女優というのは演技と称してここまでやるのだなと私は思っていた。ところが、アクターズ・スタジオ・インタビューであれは演技ではなく、監督に命令されてもうやめてくれと泣いて抗議しながらやっていたものだと彼女は語っていた。やはり映画作りは恐ろしい。女優志願者はこの映画のワッツを見てもう一度考え直したほうがいい。

N・ワッツはスターになってしまい、本作の頃のB級女優っぽさが年々落ちてきてしまっている。それが彼女の魅力であったと失われてから気づくのである。

(重本絵実)

2008.5.7 掲載

著者プロフィール
野川雅子 : 1985年山形県生まれ。19歳で映画に出会い、それ以来、映画に恋愛中。人の心を描いた邦画が特に大好き。日本中に映画の魅力を幅広く伝えられる映画紹介をするのが夢。

悠木なつる : 1973年生まれ。紆余曲折あり、現在は銀座の会計事務所勤務。最近は、ゲットした「歌舞伎町シネシティ メンバーズカード」を片手に映画を観まくる日々。『映画イヤーブック2007』(愛育社)では、本名の横○友○で映画紹介記事とコラムを執筆。

団長 : スーパーロックスター。メジャー契約なし、金なし、コネなしながら、来秋、日本武道館でライブを行う。ラジオDJ、本のソムリエ、講演、コラムニストなどとしても活躍中。大の甘党で"スイーツプリンス"の異名をとる。バンドHP http://www.ichirizuka.com

伊藤洋次 : 1977年長野県生まれ。業界紙の会社員(営業)。メジャー映画はなるべく避け、単館系しかもアジア映画を中心に鑑賞。最近気になる監督は、廣末哲万・高橋 泉、園子温、深川栄洋、女池充など。

吉田康弘(mixi name:YAS.) : 1960年1月福岡市生まれTV映画と、親に連れられて行った映画館で、映画の魅力にとりつかれ、たくさん観ることも勿論ですが、大学で自主製作と上映会を覚え、映像から離れられずに、仕事にビデオ映像制作を選んだ、映像一筋のバカ野郎です。

吉川北京波 : 映画館で映画を観始めたのは3歳。少なくとも7歳のとき内田吐夢監督『花の吉原百人斬り』ジャック・ヴェッケル監督『穴』を観て、一生映画を観ようと決めました。以来映画漬けの半世紀です。内科の医師をやっていますが、仕事に立ち向かうパワーは映画から貰っています。

箕輪克彦 : 映画好きが高じて日本最小21席の手作り映画館シネマバーザ・グリソムギャングを経営。毎週末監督や俳優さんらをお招きしてイベント上映しています。ぜひお立ち寄りのほどを。

根岸侘助 : 1955年、東京生まれ。某出版社に入社し、少女漫画雑誌の編集に10年間従事したのち、某放送局に転職、現在に至る。2007年は、年間427本を映画館で観た。古今東西なんでも観るが、ハリウッド娯楽大作は苦手。

重本絵実 : 1981年富山県生まれの名古屋育ち。研修医として市内の病院に勤務中。医者をやめてからの人生ばかり思い描いていた陰鬱な医学生時代を乗り切れたのは映画があったから。医者をやりながら世の鑑識眼のない批評家を罵倒して映画と付き合い続けます。

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