悠木なつる ★★★★★
これほど満足感を得られる作品に出会ったのは久々だ。オープニング早々、おデブだけれど、伸びやかな歌声と、キュートな笑顔が魅力的なニッキー・ブロンスキーに一目惚れ! ダンスは苦手だけれど、思わずリズムに合わせて踊りたくなった。永らく、ミュージカル映画からは遠ざかっていたジョン・トラヴォルタが、母親役で出演しているのが嬉しい。ただ、あのゴツいビジュアルに最後まで慣れることはなかったけれど(笑)。トラヴォルタと、名優クリストファー・ウォーケンがダンスを踊るシーンでは、豪華な顔触れに思わずニヤリ。笑いあり、涙あり、気分爽快指数は100%!! 観た後はサウンドトラックを手に入れずにはいられなくなった。
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はたのえりこ ★★★★
ミュージカルにも、歌を聴こうと臨めば大満足、ダンスに感動、劇的なプロットそのものを楽しむなど、様々なタイプがあるが、本作は最初に挙げた歌タイプ。一度聴いたメロディはあまりに親しみやすく、あらあら早速鼻歌が・・・。自分らしいって最高!という超ポジティブなテーマは、ビッグなヒロイン母娘の存在や人種問題に触れながら、迫力の歌で堂々と示される。ミュージカルという表現手段のためか、そこに重々しい雰囲気はない。大抜擢の新人ニッキー・ブロンスキーや平成の郷ひろみ(?)ザック・エフロン、トラヴォルタなどのベテラン勢も素晴らしい活躍を見せる。でも、今回ダントツ気になったのは、慌てた表情が抜群にキュートなヒロインの親友ペニーと、クールかつホットな美声の持ち主シーウィードの人種の垣根を超えたカップル! アマンダ・バインズとイライジャ・ケリーによるデュエットは必聴。甘酸っぱい感じがなんかよい。
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南木顕生 ★★★
88年のジョン・ウォーターズ版は見てるのだがほとんど記憶に残っておらず、今回のミュージカル版でストーリーを思い出した。恐らく筋そのものは変わってないはず。公民権運動シーンも確かこんな感じではなかったか?今回の07年版もここだけ別の映画のように重い。
デキは今回のほうがオリジナルよりはるかにいい。それは多分、ブロードウェイ版がよく出来てるからなんだろうな。映画は舞台となってる60年代初頭のミュージカル映画のルックを意図的に再現してるかのようでもあった。時間と空間を駆使する手法が楽しい。
オリジナル版にはなんとなく「グリース」の影響を感じたが(そもそも「ヘアスプレー」というタイトルは「グリース」のパロディ?)、本作のトラボルタ起用はまるで先祖がえりのようなサブリミナル効果を感じる。しかし当のトラボルタはミスキャスト。単にキモいオヤジの女装にしか見えない。まだオリジナルのディバインのほうがオバサンに見えた。
それでも一級のエンターテーメントとしては上々の出来で、ハロウィンの夜にはもってこいの映画だった。ミシェル・ファイファーの怪演が楽しいし、クィーン・ラフィアとクリストファー・ウォーケンの芸達者ぶりが画面に厚みを感じさせる。ヒロインのおデブちゃんもキュートだ。多分この役しかできないと思うが…。ほとんどはじめて接する若手俳優たちにこの手の映画にありがちなウザさが微塵もないのも特筆モノ!
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ナツ ★★★★★
のっけからのハイテンションに少々気圧された。ミュージカルは嫌いじゃないけれど久しぶりに見たのでアタマがついて行かない感じだ。観る映画を選ぶとき、結構先入観で選ぶので、観る前の私の印象は「ヘアスプレー」?ジョン・ウォーターズ版のリメイク?トラボルタの女装??そんなもの誰が見たいの?主役は無名、大スターではあるもののウォーケンはマニアックすぎるし、ミシェル・ファイファーは旬を過ぎてるし……しかしよく出来ている。重いテーマをエンターティメントに昇華しているところがすごい。黒人と白人をダンスで対比させるところもいい。もちろん演出の巧さによる部分も大きいが黒人の生まれ持った資質を際立たせ、「mixされた音楽を生んだ不幸と幸福」までも考えさせられた。中盤のヤマ場のシーンはこの映画の重いテーマを訴えかけながら説教臭さに堕ちることなく、悲しげではあるが希望に溢れ美しい。ウォーターズ版の評価は高く、舞台版はトニー賞を受賞するなどの実績があるけれど、この映画のヒットはブランドに支えられたものではなく、できのよさによるもの。観るとハッピーになり誰かに勧めたくなる映画…観ればわかる!
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