高井清子 ★★★★★
現代にありがちな「他人のせいにしてばかりの若者」を「面白い」とあざ笑うブラックユーモアが痛快だ。さらに最近の風潮を象徴するような「何でもポジティブ」という人間もまた、どこかそら恐ろしくて笑える。同世代の劇作家ゆえの鋭い視点は、今の時代や若者をさまざまに浮き彫りにしつつ、絶妙な組み合わせで楽しめるストーリーにまとまっている。若者よ、ともに笑おう! そして愛を見せようぜ! |
伊藤洋次 ★★★★☆
久々にガツンと手ごたえのある人間ドラマを見た。屈折した家族の生きざまを、鋭くかつ皮肉たっぷりに描いた本作は、人間臭さがプンプン漂い、とても刺激的だ。映画の中で展開されるのはドロドロとした愛憎劇ではあるものの、そんな中で兄嫁(永作博美)の底抜けな明るさが絶妙のアクセントになっていて、物語の面白さを倍増させている。ホームドラマで、よく「家族だから」とか「家族なのに」という台詞が使われるけれど、この映画の前では、そんな言葉は完全に無力だと痛感した。 |
野川雅子 ★★★☆
キャストのインパクトが強烈な作品である。主演の勘違い女、和合澄伽を取り巻く4人の家族の極端すぎる程のキャラクターが、この映画の全てと言ってもいいだろう。澄伽のワガママに振りまわされるストーリーの中で、それぞれが自分の役割をしっかりと演じており、本編中ずっと観客を飽きさせることはない。しかし、こんなにも胸のムカムカが治まることなく2時間を過ごすことは、私は稀である。それ程までに、主演の佐藤江梨子が澄伽を完璧に演じているのだ。今でも目をつむると、恐ろしい顔が浮かんでくるようである。再度観たいかと言われたら絶対にNOだし、勘弁して欲しいという気持ちだが、なかなか見応えのある骨太な1本であることは確かだ。 |
悠木なつる ★★★★☆
意地悪でワガママなヒロイン・澄伽を演じる佐藤江梨子。これは演技ではないのでは? と思えるくらいハマリ役だった。足の長さや胸の谷間に、ちょっぴりジェラシーを感じたりもして。ただ、最も好感が持てたのは、永作博美の演技だ。永瀬正敏演じる夫から、どんなにひどい仕打ちを受けても笑顔で乗り切ろうとする姿が、ひたむきで、いじらしいことと言ったら! それは、生まれた時から孤独な人生を歩んできた故の、家族に対する強い憧れがあるからだ。また、姉・澄伽から容赦のないイジメを受けてきた妹・清深は、クライマックスで衝撃の復讐劇を繰り広げる。形は違うけれど、3人の女性の「強さ」が印象に残ったブラックユーモア溢れる作品。 |