岡崎圭 ★★★★★
私が働くラブホテルの名前は「HOTEL AROMA」。名前のとおり"香り"には他一倍気を使っている。1階エントランス部分には高価なアロマディフューザーを設置し、2階から5階までの各階には小型のアロマディフューザーを配置。純粋100%の精油だけを選び、季節ごとに香りを変え、館内全体がいつも何かしらの"香り"で満たされるようにしている。お客様から香りを褒められたり、使用している精油の名前を尋ねられる時、大変嬉しく光栄に思う。純粋な精油には無意識の意識に働きかける力があり、精神や肉体に対しても多くの効能があるらしい。目には見えないけれども確かに存在する"香り"というものに、仕事的にはもちろん個人的にも、より敏感でありたいと思っている今日この頃。そんな中で観たこの『パフューム』は最高に強烈かつ最高に美しい残酷なおとぎ話。すべてのモラルの垣根を取り除けてしまうほどの魔力溢れる香りであり、偏執狂の殺人鬼でさえ"天使"へと昇華させてしまうような至高の"パフューム(香水)"とはいったいどんな香りだったのかしらん?恐れおののきつつもぜひ一度私も嗅いでみたい…。 |
はたのえりこ ★★★★☆
究極の嗅覚を持った青年ジャン=バティスト・グルヌイユ。ある日、一人の赤毛の少女から匂い立つ運命の香りと出会うが、怯える彼女を誤って殺してしまう。そこから彼が目指す究極の香水作りと連続殺人の行く末はいかに?変質者による殺人回顧録なんだろうなという先入観から見始めたところ、意外にも最後まで展開が読めずに引き込まれた。究極の香水がまかれ、人々の本能が露にされる衝撃シーンを経て、エンディングまで――すべてが終わったとき、これは童話なのかもと思った。グリム童話にもけっこう残酷なものが存在しているし。ジャン=バティストが執着する赤毛の美少女ローラの父親を演じるアラン・リックマンの存在は大きい。ハリポタのスネイプ先生とはまた違った厳格さが渋くて素敵。 |
南木顕生 ★★★★
蛆虫がわく魚を売る市場で産み落とされる冒頭の赤ん坊のイメージが強烈。汚物、裸の死体、殺人鬼、サスペンス、アクション、私がおよそ映画に必要だと思われるものはすべて入っている。しかもクライマックスはソフト・オン・デマンド製作のスペクタクルAVだし、しかもラストは「ゾンビ」!変態を極めれば英雄になるというオハナシが澱みなく語られて、騙されて観に来たオシャレOLの困惑が痛快な悪趣味映画。やっぱ、こうでなくっちゃ♪ |
重本絵実 ★★★
今までどのような映画にも登場してこなかったであろう男、体臭を持たないが天性の嗅覚を持つ超越者が体験する物語に終始飽きることは無く、音楽(ベルリン・フィル・ハーモニーの演奏)も18世紀パリ近郊を再現した映像もなかなかのもので、目でも耳でも楽しめる秀でたエンターテイメントに仕上げられている。けれど、何かが足りない。この手の話に二時間半は長すぎるので中盤のエピソードを削ればストーリーにメリハリが効いたのかもしれない。かく言う私は途中で退屈になってしまったのである。全く映画を見て意見だけつらつら述べるのはつくづく勝手な行為だと思うのはこういう時である。 |