重本絵実 ★★
ギリアムとは肌が合わないと感じてはいたが「未来世紀ブラジル」や「12モンキーズ」といった完成度の高い作品を作り出している作家なので今作に期待はしていた。彼は精神疾患への尽きない興味がいつも感じられるが、あくまで異質なものへの好奇心でありそこには人間本質への探求は無く非情なものが漂う。それでも今までの作品はそうした興味が壮大なイマジネーションを築き上げていたが、今回は上手く行ったとはいえない。病人の妄想を覗き込む事を楽しんでいる人の作品をどう楽しく鑑賞すればいいのかどうか教えていただきたい。 |
河西春奈 ★★★★
ヤク中の母を失った10歳のジェライザ・ローズは、父に連れられて彼の故郷へと出発する。そこで間もなく父も失ってしまう。ここから先はジェライザ・ローズのイマジネーションを体感するお話になるので、物語のことは、気にする必要はありません。子どもは、孤独な現実世界を軽々と乗り越え、想像の世界へ旅立つもの。その可愛らしさと残酷さと適応能力に、今までの子ども映画が表現していたものとは違った、ありのままの子どもの姿を感じた。映画的ステレオタイプな状況に、個性を加味し、独特なものに変えていくギリアムの表現力に感動! 遊びにこそ、オリジナリティーが宿るのかもしれない。 |
三笠加奈子 ★★★★
小学生のころ、私は美術の教科書に載っていたアンドリュー・ワイエスの絵が大好きで、代表作『クリスティーナの世界』を眺めては、授業中にこっそり“向こうの世界”にトランスしていた。だから、この映画を観たときは本当にビックリしたのだ。主人公ローズが駆け巡る荒れ野は、私が夢見た“向こうの世界”そのものじゃないか!
調べてみたら、ギリアム大賢人もアンドリュー・ワイエスが大好きらしい。そうなのか、そうなのか。もうそれを知っただけで大満足の作品である。アメリカにはこういう潮流があるのだ。
ちなみに、『クリスティーナの世界』はコチラ |
中沢志乃 ★★☆
今月のサブテーマは「映画と笑い」。
映画にツッコミを…とのことでしたが、う〜ん。正直、全く笑える話ではありませんでした。
ヤク中のイッちゃってる両親に育てられ、必然的に夢の世界に生きるイッちゃったローズ。
友達は欲しいけど人の死を何とも思わないのも、状況を考えれば仕方ないのか…。
でも!両親はともかく、現れる隣人があり得ない!!
亡母をミイラにして復活を信じるデルとその弟ディケンズ。
おまけにローズの父親までミイラにして、ローズはミイラに話しかける。
「追い詰められた人間とは」を、まさに鬼才テリー・ギリアムが描いたと言えば、
そうか、という気もするけど、公式サイトによるとこれは夢見る少女の話らしい…。
いやあ、もう一度、観たいかな。ローズ役ジョデル・フェルランドの演技は素晴らしいです! |