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バックナンバー Vol.48

ローズ・イン・タイドランド
バタリアン4
カラーズ
ハイジ

「日本以外全部沈没」を楽しく観る方法 ■ ■ ■

73年に大ブーム巻き起こした『日本沈没』なんかリメイクしなくたって日本は既に沈没している。金が全ての風潮と犯罪者が渦巻き、性は乱れ、離婚は増え、子供は減り、オタクは増え、モラルは低下し、異常気象と手抜き工事と八百長試合が蔓延る汚い世界。 一体いつからこんなひどい国になっちまったんだい?
ま、しょせんは猿の島だからね。 そんな日本、テポドンで沈没しちまった方がまし。
ある日、100メートル先の近所に住む『リスペクト探Q図鑑』『女囚カオリ』で組んだ、『かにゴールキーパー』『コアラ課長』の巨匠・河崎実監督から電話。
「さそりさん、映画出て下さい」
「どんな作品ですか?」
「日本以外全部沈没」
「ギャハハハハハハ、凄いタイトル!どんな役ですか」
「金正日」
「あっはっはっはっはっは、やります!」
  という訳で、金正日そっくりのメイクと衣装で日本語堪能な外国人だらけの撮影現場で熱演すると、外国人俳優から尊敬の言葉「GOODJOB」「WONDERFUL!」と大拍手が。こんな現場、日本映画ではなかなかないわ。しかもキャストに73年版『日本沈没』の藤岡弘様、テレビ版の村野武範様、『肉弾』の寺田農様がいるではないの!感動!
  2011年、原因不明の天変地異によってアメリカ大陸が一週間で海に沈んだ。その一週間後には中国、さらにユーラシア大陸、アフリカ大陸、オーストラリア大陸が沈没し、全世界でただ一つ無事だった国は日本だけだった。
この小さな国に、世界中から難民が押し寄せ、人口が急増。物価の高騰、食糧不足、失業率の上昇など様々な問題が起きる。さらに、外国人による犯罪も急増。政府は急遽、GAT(外国人アタックチームの略)を結成し、外国人たちを次々と追放していく。しかし、外国人たちの不満はもう限界に来ていた・・・。
外国人のダンボールハウスを焼却するGATのシーンが『華氏451』みたいで好き。
巨大化ヒーロー『雷エース』出演シーンや、ビルの爆発や外国沈没シーンがCGというより手作りの東宝特撮風で、ウルトラシリーズに対する異常なまでの愛情とこだわりの河崎節がついに実を結んだという感じ。全編ラブストーリー仕立てだし、ラストは結構感動的に終わるのが新境地ね。ヤバさでは双璧な『太陽』のイッセー尾形と金正日のシーン見比べて下さい。9月2日(土)21時20分初日、舞台挨拶に金正日が劇場で待ってます。

(舵芽衣子)
『日本以外全部沈没』
監督・脚本:河崎 実
出演:小橋賢児、柏原収史、松尾政寿/村野武範、藤岡弘
配給:クロックワークス+トルネード・フィルム
9月2日よりシネセゾン渋谷にてレイトショー、ほか全国順次公開
http://www.all-chinbotsu.com/

嫌われ松子の一生 ■ ■ ■

黒澤明監督が生きていたら『生きる』をこんな感じでリメイクしたのではないだろうか?
黒澤監督は新しい技術を導入するのが好きだったし、『どですかでん』『夢』のくどいまでの過剰な色彩の氾濫がこの映画を観て思い出させられた。
  幸福な描写が1分くらいで後は全て不幸だった『西鶴一代女』以来の悲惨女の一生がスピーディに展開する。土曜サスペンス劇場の片平なぎさから入っていく導入部の見事さ!日本映画に欠けてるもの、それは乙女心だった。それをモノの見事にやられてしまった訳。こんなに乙女の内面を綺麗に映像化した映画は嘗て無いのではないの?『下妻物語』以来やんって思ったら同じ監督だった!あたしの大好きな花や人形や蝶が画面にあふれている。それだけで幸福。テレビから流れるユリ・ゲラーや巨人軍等と当時のオブジェと現代の色彩の合体は60年代、70年代映像化ブームにとどめを刺されたって感じ。役者がみんないい。劇団ひとり、柄本明、ゴリ、黒沢あすか、あき竹城、武田真治、伊勢谷友介、(荒川良々はいつも通りだけど)みんな胡散臭くてリアル。ミュージカルシーンのナンバーや振り付けが可愛くてすぐにサントラ欲しくなる。トルコ嬢のナンバーがセクシーでいいし、デパートの屋上で歌ってた60年代のアイドル歌手の衣装と振り付けがツボ。愛する事とか愛される事のつらさとか、人はちょっとした事で道を踏み外すとか、少年犯罪とか精神病とか現代の日本が抱えた問題も描かれてるから、あたしやあたしの周りの女友達、みんな共感してたよ。中谷美紀の代表作がやっと出来たね。彼女、幸薄い顔してるから役にピッタリで、ちょこっと出てくる柴咲コウが霞んで見えた。最近の元ホステスが引き起こす犯罪見るたび、松子は至る所にいるんだなって思っちゃう。

(舵芽衣子)

=1点、=0.5点。最高得点=5点
ローズ・イン・タイドランド

監督:テリー・ギリアム
出演:ジョデル・フェルランド、ジョフ・ブリッジス、ジェニファー・デイリー
配給:東北新社
http://www.rosein.jp/
 

重本絵実          ★★
 ギリアムとは肌が合わないと感じてはいたが「未来世紀ブラジル」や「12モンキーズ」といった完成度の高い作品を作り出している作家なので今作に期待はしていた。彼は精神疾患への尽きない興味がいつも感じられるが、あくまで異質なものへの好奇心でありそこには人間本質への探求は無く非情なものが漂う。それでも今までの作品はそうした興味が壮大なイマジネーションを築き上げていたが、今回は上手く行ったとはいえない。病人の妄想を覗き込む事を楽しんでいる人の作品をどう楽しく鑑賞すればいいのかどうか教えていただきたい。
河西春奈          ★★★★
 ヤク中の母を失った10歳のジェライザ・ローズは、父に連れられて彼の故郷へと出発する。そこで間もなく父も失ってしまう。ここから先はジェライザ・ローズのイマジネーションを体感するお話になるので、物語のことは、気にする必要はありません。子どもは、孤独な現実世界を軽々と乗り越え、想像の世界へ旅立つもの。その可愛らしさと残酷さと適応能力に、今までの子ども映画が表現していたものとは違った、ありのままの子どもの姿を感じた。映画的ステレオタイプな状況に、個性を加味し、独特なものに変えていくギリアムの表現力に感動! 遊びにこそ、オリジナリティーが宿るのかもしれない。
三笠加奈子        ★★★★
 小学生のころ、私は美術の教科書に載っていたアンドリュー・ワイエスの絵が大好きで、代表作『クリスティーナの世界』を眺めては、授業中にこっそり“向こうの世界”にトランスしていた。だから、この映画を観たときは本当にビックリしたのだ。主人公ローズが駆け巡る荒れ野は、私が夢見た“向こうの世界”そのものじゃないか! 調べてみたら、ギリアム大賢人もアンドリュー・ワイエスが大好きらしい。そうなのか、そうなのか。もうそれを知っただけで大満足の作品である。アメリカにはこういう潮流があるのだ。
ちなみに、『クリスティーナの世界』はコチラ
中沢志乃          ★★☆
 今月のサブテーマは「映画と笑い」。 映画にツッコミを…とのことでしたが、う〜ん。正直、全く笑える話ではありませんでした。 ヤク中のイッちゃってる両親に育てられ、必然的に夢の世界に生きるイッちゃったローズ。 友達は欲しいけど人の死を何とも思わないのも、状況を考えれば仕方ないのか…。 でも!両親はともかく、現れる隣人があり得ない!! 亡母をミイラにして復活を信じるデルとその弟ディケンズ。 おまけにローズの父親までミイラにして、ローズはミイラに話しかける。 「追い詰められた人間とは」を、まさに鬼才テリー・ギリアムが描いたと言えば、 そうか、という気もするけど、公式サイトによるとこれは夢見る少女の話らしい…。
いやあ、もう一度、観たいかな。ローズ役ジョデル・フェルランドの演技は素晴らしいです!


バタリアン4

監督:エロリー・エルカイェム
出演:ピーター・コヨーテ、エイミー・リン・チャドウィック、ジャナ・クレイマー
配給:ギャガ・コミュニケーションズ
http://www.batarian4.jp/
 

悠木なつる          ★★★★☆
 一見、正当派ゾンビ映画と思わせるも、徐々に監督の悪ノリぶりがエスカレートしていく。
ホラー映画の定説は覆され、生き残ると予想しているキャラクターが、次々とゾンビの餌食になる展開に唖然! 今回のゾンビは、頭を銃で撃てば死ぬので(もともと死んでいるが)、人間とゾンビの攻防戦は、スカッと爽快に仕上がっている。
一番の見どころは、前作『バタリアン・リターンズ』の設定を受け継いで登場する、最強の「ゾンビ兵士」だ。 しかし、その最強ぶりを見せつけるのも束の間、あっけなく出番を終えてしまう。 監督の悪ノリぶりを暖かい目で見守りつつ、ツッコミどころ満載の荒削り感を楽しみたい。 同時に撮影された次回作にも期待が高まる!?


カラーズ

監督:柿本ケンサク
出演:村上淳、光石研、松岡俊介、高野八誠 他
配給:スローラーナー
http://www.decadeinc.com/colors/
 

藤原ヒカル          ★★★
 人の数だけ人生があり、それぞれの価値観がある―個性(カラー)。生きる意味を探す者、生きることを諦めた者、ただ何となく生きている者、生きていることさえ感じない者、死を恐れながら生きている者……。しかし、彼らは「死」を実感した時、潜在意識の中にある「生」への執着に初めて気づく。絶望の中にいて、初めて希望を探そうとする。それでは「生」とは何か?「死」とは何か?対照する「生」と「死」を人生という1本の線上に並べた時、人は「生」に対して、どう向き合うのだろうか?普遍のテーマについて、哲学的な観点から大胆に迫りながらも、現代風にスタイリッシュに仕上げられた作品だ。さて、生きるとは一体、何なのだろうか?あたなの個性(カラー)は、どんな選択させるのだろうか?
伊藤洋次           ★★★
 山本浩司のユルいキャラクターが、とてもいい味を出している。 異空間の中に、さらに奇妙な空間を作って笑いを引き出す存在は、 とても貴重。映画全体を通しては、1人ずつしか映さないまま、 同じ〈箱〉という空間に2人がいて会話をする部分など、23歳の 監督とは思えない巧みな演出が光る。ただ、これだけ凝った構成 なら、もっと笑い満載のコミカルな物語にした方が良かったの では。映像表現が優れていただけに、その点が惜しまれる。
団長              ★★☆
 良くも悪くも、とても青い作品だと思います。大切な人を失った人たちが、仮想意識世界の中で自らを見つけ、悔いのない人生を歩むべく、失う以前の現実世界に戻っていく、といった感じの展開ですが、正直、非常にまどろっこしいです。伝えたいメッセージが明確にあり、しかもシンプルなだけに、展開の緩慢さがヤボったい印象を強めます。ギャグのつもりで入れたっぽい箇所もありましたが、少々キモイです(笑)思い切り笑える部分があれば、もっと楽しめたのかもしれませんね。


ハイジ

監督:ポール・マーカス
出演:エマ・ボルジャー、マックス・フォン・シドー、ジェラルディン・チャップリン
配給:ギャガ・コミュニケーションズ
http://www.heidi-movie.jp/
 

高井清子           ★★★★☆
 子供の頃、アニメの『アルプスの少女ハイジ』が大好きだ
った。 あのとろけるチーズや干し草のベッドにどれだけ憧れたことか…。 ある意味アニメの印象が強すぎると、実写版とのギャップに落胆してしまうことがあるが、 本作はアニメとはまた別の美しい自然の風景やハイジの愛らしさで十分に魅せながら、 やはり涙をこぼさずにはいられない感動作に仕上がっている。 とくに今回は、ハイジの素直さや前向きさに、知らず知らずのうちに心のこわばりが 解けていく大人たちの変化に心を打たれ、老若男女に愛され続ける不朽の名作の真髄を見る思いがした。
サブテーマの「笑い」という視点からは、ハイジなりきり写真コンテストや、ロッテンマイヤーさんの登場するメイドカフェなど、むしろ映画の宣伝活動と作品自体のギャップのおかしさくらいしか挙げられない。
団長               ★★★★★
 今年見た数十本の映画の中で、個人的に一番好きです。有名なTVアニメも原作も見ていなかったので、ストーリーを全然知らなかったのも大きいかもしれませんが、温かい愛でいっぱいの作品です。心洗われます!最後は、じわ〜っと泣かされてしまいました。ほのぼのな雰囲気の中に、笑いあり、涙ありで、ご家族連れの方にも安心してオススメできます。爆笑の連続!みたいな作品も楽しくて好きですが、当作品のように普通の映画の中に出てくるひょっこり出てくる笑い、大好きです。スイスの山々の景色にも心奪われました。DVDも買います(笑)
岡崎 圭            
 ♪口笛はなぜ〜遠くまで聞こえるの?あの雲はなぜ〜私を待ってるの?♪
アニメ「アルプスの少女ハイジ」のテーマソングをハミングしながら映画館へ。 子供の頃に夢中になって見ていたあの「ハイジ」の実写版とあってなんだか懐かしい気分で。 ところが…。上映1時間44分の間、"クスッ"とも"ホロッ"ともしないままで終わってしまった。 もし私が純真な子供だったならば必ずや感動したことだろう。 作り手が笑わそうとするところで笑い、泣かそうとするところで素直に涙を流したことだろう。 けれども、すっかり世俗の毒に侵されてしまった私の脳味噌では残念ながら空虚なおとぎ話としか感じられなかった。 最も感情が盛り上がるべきはずのクララが立ち上がる場面、涙と感動の代わりに私の頭の中には猫ひろしの♪クララが立った〜、クララが立った〜♪が響き渡った…。


2006.8.30 掲載

著者プロフィール
舵芽衣子:シャンソン歌手。山田花子原作・鳥肌実、立島夕子、綾小路翔出演カルトムービー『魂のアソコ』監督。 津田寛治主演『スコーピオン&スネーク』、松永天馬主演『天才馬鹿』監督

重本絵実 : 1981年名古屋市生まれ。この現実を生き抜くことに嫌気がさし、映画の世界に迷い込み早五年。もう抜けられません。ただ今のベスト・ワンは「天井桟敷の人々」と「浮雲」(成瀬巳喜男監督)です。

河西春奈 : 1979年東京都生まれ。編集者を経てシナリオライター、フォトグラファーとして活躍中。共同監督している西川文恵と作り、主演した映画「While you sleep」を、第59回ヴェネツィア国際映画祭に出品。他10か国でも上映される。

三笠加奈子:ライター。この仕事を始めてから体重が13キロ増えたのでジム通いを始めました。ジムで体育会系の皆さまに囲まれ、仕事で文系の皆さまに囲まれ、いや、人生って本当に面白いですね。

中沢志乃 : 1972年5月8日、スイス生まれ。5年間、字幕制作に携わった後、2002年4月、映像翻訳者として独立。夢はもちろん世界一の映像翻訳者。現在、トゥーン・ディズニー・チャンネルで吹替翻訳を手がけた『X-メン』が絶賛放映中。7月12日、字幕翻訳をしたロドリゲス監督の『シャークボーイ&マグマガール3-D』発売。

悠木なつる:1973年生まれ。安定していたOL生活をあえて手放し、現在、映画ライター見習い中。「食えるライター」を目指してジャンル問わず映画を観まくる日々。

藤原ヒカル : オーストラリアの大学でジャーナリズムを学び、現地で新聞記者に。’05年8月に帰国してからは、“来るもの拒まず、去るもはちょっとだけ追う”のノン・ジャンル派ライターとして活動中。実は戦争・紛争、軍事、宗教、民族問題などを得意としており、そんな映画について記事を書くのが夢♪

伊藤洋次 : 1977年長野県生まれ。業界紙の会社員(営業)。メジャー映画はなるべく避け、単館系しかもアジア映画を中心に鑑賞。最近気になる監督は、廣末哲万・高橋 泉、園子温、深川栄洋、女池充など。

団長 : スーパーロックスター。メジャー契約なし、金なし、コネなしながら、来秋、日本武道館でライブを行う。ラジオDJ、本のソムリエ、講演、コラムニストなどとしても活躍中。大の甘党で“スイーツプリンス”の異名をとる。バンドHP http://www.ichirizuka.com

高井清子 : 1966年生まれ。企業勤めの後、ロンドン留学を経て、フリーの翻訳者に転身。映画の脚本やプログラムなどエンタテインメント関連の翻訳をする。今は韓流にどっぷりはまり、『韓国プラチナマガジン』にもレビューを寄稿している。

岡崎 圭:“GEROP"(Grotesque-Eros-Psyche)探求者。または如何物喰い。どちらかというと邦画が好きです。



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