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バックナンバー Vol.44

リトル・イタリーの恋
ブロークバック・マウンテン
メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬

アイスランド映画祭2006 ■ ■ ■

 「アイスランド映画といえば?」と聞かれて、作品や監督の名前をスラスラと答えられる人は少ないだろう。 この3月に東京・渋谷と神戸の2ヵ所で開かれた「アイスランド映画祭2006」。かくいう私もアイスランド映画の知識が全くない状態で見に行ったのだが、その面白さと魅力に驚かされた。 『ダーク・ホース』や『ソドマ』『大鴉が飛ぶとき』などの娯楽作品はもちろんだが、『アフリカ・ユナイテッド』『フレンムル』といったドキュメンタリー、さらに実験的映画『スカーガ・フョルズル』など充実したラインアップ。映画製作の歴史は30年足らずと浅いのに、これほどの映画文化が育っているとは実に素晴らしい。 映画祭には何人かのゲストも来日したが、その一人、ダーグル・カウリ監督の「アイスランドは人口が約30万人という小さな国。だからこそ、国民一人ひとりが文化を維持する努力を惜しまないんだ」という言葉が印象的だった。

主催:アイスランド映画祭実行委員会、シネマトリックス
共催:アイスランド大使館
期間:東京=3月4日〜10日、神戸=3月18〜20日

(伊藤洋次)


今回のサブテーマは【字幕版と吹替版、どっちで見るべき?!】。最近は吹替版も劇場公開される作品が徐々に増えてきて、吹替版の良さが見直されつつある感があります。中には吹替版のみでしか公開されない!という作品まであるのが現状です。字幕/吹替、映画はどちらのほうがより楽しめるのでしょう。あなたなら、どちらを観ますか?

 

=1点、=0.5点。最高得点=5点
リトル・イタリーの恋

監督:ジャン・サルディ
出演:ジョヴァンニ・リビシ、アダム・ガルシア
配給:パンドラ、ハピネット・ピクチャーズ
http://www.pan-dora.co.jp/little-italy/
no picture

中沢志乃          ★★★☆
 あらら!なかなか良い映画でした!オーストラリアに移民したイタリア人のアンジェロが本場イタリアからお嫁さんをもらおうと思い、ルックスに自信がないから弟の写真を送ってしまう…と聞いてドタバタコメディを予想していましたが、いえいえ内容は笑えて泣けるハートウォーミングストーリー。人生ってこんなものだし、そうそう、コニー、ちょっとした一言ですごく力付けられたりするんだよね。何よりも多くを経験して一杯のコーヒーに人生を見い出した(?)おじいちゃまが最高です。配役、演出共に◎。イタリア語、ぎこちない英語、よりオーストラリアに順応した英語とかを字幕版で聞くのも良いですし、おじいちゃまの声をうまい声優さんで面白く再現!もありですね。
悠木なつる         ★★★
 いい意味で裏切られた。これは、モテない男が文通で知り合った女性に愛されようと努力する物語ではない。4人の男女が「愛って何?」という問いを突きつけられて奔走する姿を、ユーモアたっぷりに描いた作品なのだ。誠実だけれどサエない兄と、男前だけれど軟派な弟。「私だったらどちらを選ぶだろう?」と考えながら観ると、自分なりの恋愛観が再確認できるかも知れない。作品としては、やや出来すぎた感があるものの、船上のクライマックスシーンには思わずうっとり! 青白い顔をした兄役のジョヴァンニ・リビシの弱々しいかすれ声が、女性にモテないキャラクターであることを強調するのに一役買っているので、字幕版で観ることをお薦めしたい。
波多野えり子       ★★☆
 文通プロポーズがなかなか実を結ばない兄アンジェロ。誠実だけどちょっとさえない彼の今回のお相手、ロゼッタへの手紙についつい男前の弟ジーノの写真を入れてポストへ投函してしまう。彼女はジーノに一目惚れ、お嫁入り決行! でも、もちろん真実が明らかになり、そこから始まる恋愛模様はいかに? オーストラリアのイタリア人居住区が舞台なので、彼らは英語で生活しているけど、エスプレッソに目を輝かせたり、イタリア式の結婚式をしたり、祖国を愛する彼らのテンションはやっぱりイタリア人っぽい。イタリア語はその力強いアクセントと、「気分ええわ〜」的な明るいイントネーションが魅力的な元気系言語。だからやっぱり字幕版でみたい。そのイメージのごとく軽やかにストーリーは展開し、あらら、気づけば皆が幸せに……。アンジェロの働くカフェの壁面に象徴的な絵を描く旅人のおじいちゃんの作品がステキ。
にしかわたく       ★★
 タイトルからして「イタリー」と謳っているのに、イタリアのシーンで役者が英語を喋っているのはいかがなものか。ま、映画ってのは昔から言葉の問題にはおおらかとゆーか、いい加減。以前タヴィアーニ兄弟が映画化したトルストイの『復活』を見たんだけど、極寒のシベリアで「マンジャーレ!」とか叫んでるので何だか全然寒そうな感じがしなくて笑ってしまった。日本人は一般に吹替よりも字幕を好む。これは世界的に見ればずいぶんなレアケースで、識字率の問題なんかもからんでいるとは思うのだが、基本的に日本人は異国の文化に敬意をはらう国民なのだ。ま、裏返せばいつまでたっても外人コンプレックスが抜けないってことにもなるのだけれど。この映画は脚本がユルい上にキャストも地味、さらに今書いたように、メインの客層であるはずのイタリア好き日本人の気持を逆撫でするような出来になっております。無理しないでビデオスルーでよかったんじゃないの?
松本 透          ★
 割と最後の方まで「ここはどこ?イタリア?アメリカ?」って疑問が頭の中をウロウロしてました。答えはオーストラリアのリトル・イタリー(イタリア人町)なんですけどね。なもんで、「イタリア映画の英語吹き替えか!」っていうムズガユサが・・・。モテない兄が自分のお見合い写真に、イケメン弟の写真を送ると言う設定は好きなんだけど、みんなみんなハッピーエンドというのは、ねー、どうですか?で今回のサブテーマですが、どーせなら脚本にも手を入れてイタリア語調の日本語吹き替えで、コメディ映画としてこの映画を楽しみたい。


ブロークバック・マウンテン

監督:アン・リー
出演:ヒース・レジャー、ジェイク・ギレンホール
配給:ワイズポリシー
http://www.wisepolicy.com/brokebackmountain/
no picture

団長            ★★★☆
 全く予備知識のないままに見たので、まさかそんな展開になるとは思わず、かなり驚きました。ゲイの解放、が主題なのだと思いますが、頭で理解しつつも、微妙な気分の自分もいて…。一応女性と結婚して子供もいる中で逢引を重ねる二人。本当の自分を貫くことの難しさ、厳しさを全編を通じて感じました。そして、信じられない現実に直面することになった奥さんの何ともいえない悲しみが、作品に深みを増していると思います。外国映画はやはり字幕がいいですね。子供向けのものなどは、吹き替えの方がいいなぁと思う場合もありますが、やはり役者の生声を聞けるのが一番です。
くぼまどか         ★★★☆
 人と何かを語りあうときに、お互いが当然知っている背景を抜きにすることが多い。たとえば共通の歴史、習慣、生活環境etc…。そういう意味で「ブロークバック・マウンテン」は、かなり難解な作品だと思う。美しすぎる映像と、その対極にある複雑な人間関係。見終わって日にちが経つに連れ、「あの場面の意図は」「あのセリフの真意は」と気になって仕方ない。この映画の吹き替えを演る場合、出演した俳優陣同様、ある種の「ソウル」を持った人でないと太刀打ちできないだろう。
カザビー          ★★
 カウボーイ版「モーリス」のようなものを期待していたけど、これってただの暇つぶしの恋愛でしょ。羊の牧草管理の仕事、山には男二人だけで食事やテントの質はひどいし娯楽もない。二人が恋愛関係になったのは間違いなく最悪な環境のせいだ。仕事サボってイチャついて羊の数減らしてるし…。お金もらってるんだからちゃんと仕事しろっての!その後、デニスは世間体のため、ジャックは貧乏だったという理由で二人とも女性と結婚をしてW不倫に突入。しかし、家族へのうしろめたさや社会のモラルに反するという罪悪感に苛まれている様子があまり描かれておらず男達が抑制しているように見えなかった。最後まで二人の身勝手な生き方に共感できずイライラ。唯一良かったのは字幕のフォントが明朝体で見やすかったことぐらい。せっかく字幕で観てるんだから、もっと心の機微を丁寧に描いてほしかったなぁ。


メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬

監督:トミー・リー・ジョーンズ
出演:トミー・リー・ジョーンズ、バリー・ペッパー
配給:アスミック・エース
http://www.3maisou.com/
メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬

伊藤洋次         ★★★★
 例えば、メキシコへの旅の途中、連れていた馬が崖から落ちるシーン。それに加えて、目の見えない老人と出会うシーン。物語の本筋にはそれほど影響がないと思われる部分だが、実に丁寧な描き方。こうした職人的な上手さを感じる作りは、『21グラム』などを手掛けたギジェルモ・アリアガの脚本による部分が大きいだろう。さて、もし本作に字幕版と吹替版があったら、私は迷わず字幕版をお薦めする。こういう渋くて重厚な作品は、やはり俳優たちの生の声で味わいたい。
高井清子         ★★★★☆
 死体を運ぶというのは異常だとしても、この埋葬の旅と細かなエピソードの数々には今アメリカとメキシコの国境で起きている現実が凝縮されているようで本当に興味深かった。辺境の地で孤独に暮らす老人が意味も分からず「響きがいい」とメキシコのラジオを聴くように、スペイン語からはどこか素朴な温かみが伝わる。またメキシコ人が山中で言葉も分からずアメリカのドラマを羨望のまなざしで見るように、異国の言葉は独特の想いをかき立てる。言葉が意味を伝達する手段としてだけなら吹き替えでも十分だと思うが、このように言語自体もドラマの重要なファクターになっている場合は、音の響きとそれが伝える「感情」を生で味わいたい。
河西春奈         ★★★★
 男の仁義や友情を描いた映画だと思って、見にいったらびっくり! 復讐と理想郷探しの映画だった。復讐とは、相手のためではなく、自分の孤独を埋めるためのものである。なので、自分の納得がいかないとやめられない。結局は、その復讐がピート(ジョーンズ)の生きる力に繋がっている気がした。(ここから先ネタばれです)理想郷なんてあるわけないから作り上げる。そのときだけピート(ジョーンズ)とマイク(ペッパー)の気持ちが一緒になるところに、胸が痛くなった。鑑賞後も引きずる「体に残る」映画。最後の台詞が救いになったが、すごく苦しい。ところで、英語が分かる方は、この映画を字幕で見てほしいです。日本語と英語の雰囲気が、少し違う気がするので、見比べてみては。
三笠加奈子        ★★★★
 日本語吹き替え版と言えば……。木曜洋画劇場で観た『ギフト』を思い出す。火曜サスペンス劇場を思わせるドラマ展開と、大袈裟な日本語が絶妙にマッチしていて、「私はベストコンディションで『ギフト』を鑑賞したぞ!」と心の中でガッツポーズしたものだ。そこで今作、トミー・リー・ジョーンズ監督の『メルキアデス…』である。男の死体をめぐる因果応報劇。きっと、日本語吹き替えでも面白い。ただし、英語のセリフ部分だけにとどめておこう。この映画はメキシコ人の話すスペイン語がじつに心地よい。そして、彼らの言葉は語彙が豊富だ。前半、アメリカ人の警備隊が「ビッチ!」と罵倒したメキシコ女性が、じつは毒消しの技をもつ女医だったとは! アメリカ人よ、言葉は慎重に選ぼう。


2006.4.26 掲載

著者プロフィール
伊藤洋次 :  1977年、長野県生まれ。業界紙の会社員(営業)。 メジャー映画はなるべく避け、単館系しかもアジア映画を中心に鑑賞。 最近気になっている監督は、廣末哲万・高橋 泉、園子温、深川栄洋、女池充など。

中沢志乃 :  1972年5月8日、スイス生まれ。小学校時代に映画好きになり友達と劇を作る。一時は別の道を目指すもやはり映画関係の道へ。 5年間、字幕制作に携わった後、2002年4月、映像翻訳者として独立。夢はもちろん世界一の映像翻訳者です。代表作は「ユー・ガット・サーブド」(ソニー・ピクチャーズエンタテインメント)。

悠木なつる : 映画と観劇をこよなく愛する、1973年生まれの独身女。安定していたOL生活を わざわざ手放し、現在、映画ライター見習い中。人生のモットーは「楽しく大胆不敵に」。でもその割には気が小さい。

波多野えり子 :  1979年元旦の翌日に東京・永福町にて誕生。映画好きかつ毒舌な家庭で育ち、「カサブランカ」からB級ホラー作品まで手広く鑑賞する日々を過ごしながら、現在編集者を志しているところ。最近は、まんまと韓国映画とドラマにハマっています。

にしかわたく :  漫画、イラストの他、最近はフリペで映画コラムも。映画館は汚ければ汚いほど良い、が持論。5年後は印税生活で悠々自適、年の半分はアジア映画館巡りの旅をしている予定。映画イラストブログ「こんな映画に誰がした?」http://takunishi.exblog.jp/

松本透 :  1974年生まれ。ネコと戯れ、泡盛に泥酔し、映画に溺れる生活が夢。 2005年は月10万円のギャラで某フレンチ映画に没頭したが、2006年は某ビデオメーカーに勤務予定。

団長  : スーパーロックスター。メジャー契約なし、金なし、コネなしながら、来秋、日本武道館でライブを行う。ラジオDJ、本のソムリエ、講演、コラムニストなどとしても活躍中。大の甘党で“スイーツプリンス”の異名をとる。バンドHP http://www.ichirizuka.com

くぼまどか : 「人生すべてが経験値」をスローガンに、ピアニストからライターへと変身を遂げ、取材記事は元よりコラム・シナリオ、最近では創作活動にも手を染めつつあります。基本的に映画は何でも好きですが、ツボにはまると狂います。「ロード・オブ・ザ・リング王の帰還」封切りを観る目的だけでロンドンに飛んだのが自慢。

カザビー :  1978年生まれ。映画とお笑いをこよなく愛するOL。近況:先日、大好きな井筒監督にお会いできる機会に恵まれてヨコハマ映画祭のパンフにサインをしていただきました。現在「パッチギ」続編の脚本を執筆中とのこと。期待してます!!!

高井清子 :  1966年愛媛県生まれ。企業勤めの後、1年間のロンドン遊学を経て、フリーの翻訳者に転身。映画のプログラムなどエンタテインメント関連の翻訳をしています。ストレート・プレイ、ミュージカル、バレエ、歌舞伎などの観劇も大好き。今はどっぷり韓流にはまってます。

河西春奈 : 1979年東京都生まれ。編集者を経てシナリオライター、フォトグラファーとして活躍中。共同監督している西川文恵と作り、主演した映画「While you sleep」を、第59回ヴェネツィア国際映画祭に出品。他10か国でも上映される。

三笠加奈子 :  ライター。恵比寿ガーデンシネマで夏休みに公開される『ハイジ』のプレスシート&パンフレットに映画評を書いています。往年の「ハイジ」ファンの心をくすぐるハートフルな“大人向け映画”なので、ぜひご覧ください!



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