今回は【どうなる、21世紀の映画館!?】をサブテーマに、各執筆人が“この作品を映画館で鑑賞するべきか、否か?”について触れています。
リュミエール兄弟のシネマトグラフ誕生から110年。ハリウッドでは、スティーブン・ソダーバーグ監督が劇場公開とDVD販売を同時スタートさせるなど、映画と映画館の蜜月に波紋を投げかける現象が起こっています。“映画は映画館で観るもの”という不文律は崩れてしまったのでしょうか? どうなる、21世紀の映画館!?
高井清子 ★★★★
何となく哀愁漂うタイトルが気になり、フラリと映画館に入る。思いのほか、胸の奥がうずく。それは忘れられない過去にしがみつく愚かな自分? 寂しさを埋めようとして空回りするだけの自分? まばらに座っている一人客のソファからのぞく黒い肩々がそこはかとなく寂しい。でもどこか同じ痛みを共有している連帯感を感じて安堵する。スクリーンのふたりが勇気ある一歩を踏み出したのを見届けると、自分もまた新たな自分に生まれ変わった気分で映画館を出られる。誰しもが大なり小なり抱えている心の傷を優しく癒してくれる映画だ。そんな自分の心を内省する時間は、しばし日常を離れられる場末の映画館などで独りひっそり見るのがいい。 |
山内愛美 ★★★★
この映画で最も魅力的なのは、なんといっても婚約者を亡くした主人公シウワイをいつの間にか世話するようになったファイでしょう。物語の最初のうちは、どこか作品の中に「安っぽさ」が否めなかったけれども、ファイが活躍(?)するようになってからはそのことがふっとびました。ファイは、登場したときは本当にどこにでもいるような超ごくごく普通の男性だったのに、物語がすすむにつれ、どんどんカッコよく素敵にみえてきます。無愛想なのに愛があるところがいいです。すっかり物語の中のファイのファンになってしまいました。映画は映画館でみるのが一番ですが、この作品はDVDでもよいなあと思わせるものがありました。休みの日に、ひとりでどっぷりと浸りたいイメージです。 |
カザビー ★★★☆
愛する人を失った悲しみははかりしれないものだ。それがきっと主人公シウワイを死んだ彼と同じミニバスの運転手にさせたのだろう。彼の忘れ形見ロロを育てながら、慣れない運転で毎日トラブルばかり……。そんな彼女を支えているのは死んだ彼の留守電の声だけだなんて、なんとも切ない話じゃあないですか。同じく過去をひきずって寂しい生活を送る男ファイとの恋愛は3歩進んで2歩下がるようなスローペースで描かれてるのがすごく自然で微笑ましい。そんな二人が最後にどういう方法で過去の清算をするのか?気になった方は是非どうぞ!私このリセットの仕方、潔くて好きですねぇ。ところで、鑑賞中に音声が出ないという映写機トラブルが2度発生。おかげでこの映画は忘れられないものに。良くも悪くも映画館にはハプニングや発見があるから面白い。そんな事全部ひっくるめて、作品を自分の思い出として刻み込みたい。だから、今日も映画館に足を運んでしまうのです。 |
中沢志乃 ★★★
婚約者の死を経て彼と前妻との間にできた子供を抱え、強く生きようとする女性の話。…と言うと、DVDで見ても良い印象を受けますが、やはりこれは映画館で見てほしい映画です。理由は(1)冒頭のインパクトを感じてほしいから&(2)DVDだとあまりの女性の暴走ぶりに?(愛する人を失ったら当然なのかもしれませんが……)途切れ途切れに見てしまう可能性がある映画だから。映画は本来、一気に見るようにできていると思います。スケールを必要としない最初から最後まで引き付けられる恋愛ものならDVDもありですが、途中で気がそれる可能性もあり、でもでも最後まで一気に見るべき作品ならやはり映画館です!…それに、私はやはりあの空間が大好き!映画館の味方なのです☆ そうそう、女性の暴走も一緒に見た彼に言わせれば、可愛い顔を大画面で見れば(?)許せるらしいですよ。 |