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バックナンバー Vol.43

ミュンヘン
忘れえぬ想い
転がれ!たま子

『美しき野獣』記者会見レポート ■ ■ ■

『美しき野獣』記者会見去る1月26日、現在大ヒット公開中『美しき野獣』の記者会見が六本木のグランドハイアット東京で行われた。日本でも絶大なる人気を誇る主演のクォン・サンウの来日とあって、かなりの報道陣が押し寄せる。ところが、クォン・サンウは連日の過密スケジュールがたたって予定されていた始発の飛行機に乗れず、記者会見はまずユ・ジテ、キム・ソンス監督、川井憲次音楽監督の3人で始まる。キム監督は「力が支配している世の中で守るべきものは何かを問う」本作の骨太のテーマを力説し、10kgも減量をして複雑な感情変化を伝えることに挑んだユ・ジテからは「型破りなエンディングに愛情を感じる」と満足感が伝わる。  記者会見ももう締めに向かっている頃、50分遅れてクォン・サンウが登壇。「本物のアクションを見てほしい」とアピールした。今回サンウの大幅なイメージチェンジやスタントなしで挑んだ派手なアクションへの注目が集まる中、その張本人が不在であることでむしろ本作の人間ドラマの部分がクローズアップされた記者会見となった。遅刻もまたひとつの効果的な演出になったといえるかもしれない!?

(高井清子)

監督:キム・ソンス 出演:クォン・サンウ、ユ・ジテ
配給:東芝エンタテインメント http://www.beautiful-beast.com/


今回は【どうなる、21世紀の映画館!?】をサブテーマに、各執筆人が“この作品を映画館で鑑賞するべきか、否か?”について触れています。 リュミエール兄弟のシネマトグラフ誕生から110年。ハリウッドでは、スティーブン・ソダーバーグ監督が劇場公開とDVD販売を同時スタートさせるなど、映画と映画館の蜜月に波紋を投げかける現象が起こっています。“映画は映画館で観るもの”という不文律は崩れてしまったのでしょうか? どうなる、21世紀の映画館!?

 

=1点、=0.5点。最高得点=5点
ミュンヘン

監督:スティーブン・スピルバーグ
出演:エリック・バナ、ダニエル・クレイグ
配給:アスミック・エース エンタテインメント
http://munich.jp/
ミュンヘン

くぼまどか       ★★★★★
 イスラエルとパレスチナ、彼らの心の溝は今に始まったことではない。そして『ミュンヘン』はそのむなしい闘いのひとつの時間と空間を切りとったに過ぎないのだ。全編血で血を洗い釈然としないままむかえるラストシーンには、なんと9.11同時多発テロのツインタワーの遠景が!まさに「ユダヤ人として、アメリカ市民としてのスピルバーグ」渾身の作品である。たまたまお客が私一人しかいない上映回だったので、途中から「ここに突然テロリストが暗殺に来たらどうしよう」などという妄想を抱きつつ、相当ビビリながら観てしまった。
団長           ★★★★☆
 正直、人生で見た映画の中で、最も強烈なショックを受けたと思います。あまりの衝撃に、その日は寝付けない、あるいは寝てもすぐ目が覚めてしまいそう、と見終えた後に思いました。これは気軽に人にオススメできない、と思ってましたが、日が経過するにつれ、印象が変わってきました。後から後から効いてくる、深く感じるものが出てくる、そんな作品の気がします。人間として、地球人として生きる、ということの意味を改めて問われたように感じます。それだけのインパクトを受けたのも、映画館のパワーも大きいですね。多くの人が固唾を飲んで画面に釘付けになる独特の一体感、空気感は、劇場ならではのものです。やっぱりいいなぁ、と改めて感じました。
波多野えり子     ★★★☆
 先日のアカデミー賞授賞式で、アカデミー会長シド・ガニスは「ほの暗い劇場で見る映画に勝るものはない」と劇場での鑑賞を推奨していたが、『ミュンヘン』は、いつ仕掛けが爆破されるのか、いつ命を奪われるのか――というような、まさにほの暗い劇場で、肩が凝るくらいに体を緊張させて見たい作品だ。諜報機関モサドの暗殺チームによる、通常であれば“冷酷非道”という言葉で表現されるテロ行為を、実行メンバーの家族愛、不安感、焦燥感を織り交ぜて描くことで、決して正当化しているわけではないが、この事件は人間たちが引き起した史実であることをしっかりと伝えている。

 ちなみに本作鑑賞後に『ブラック・セプテンバー/五輪テロの真実』(99年アカデミー長編ドキュメンタリー賞受賞。ナレーションはマイケル・ダグラス)を見ることをおすすめ。事件関係者のインタビューや実際のニュース報道が上手にまとめられていて、こちらは感情に流されず冷静に事件と向き合える。


忘れえぬ想い

監督:イー・トンシン
出演:セシリア・チャン、ラウ・チンワン
配給:ユナイテッド・エンタテインメント
http://www.wasureenu-omoi.com/
no picture

高井清子        ★★★★
 何となく哀愁漂うタイトルが気になり、フラリと映画館に入る。思いのほか、胸の奥がうずく。それは忘れられない過去にしがみつく愚かな自分? 寂しさを埋めようとして空回りするだけの自分? まばらに座っている一人客のソファからのぞく黒い肩々がそこはかとなく寂しい。でもどこか同じ痛みを共有している連帯感を感じて安堵する。スクリーンのふたりが勇気ある一歩を踏み出したのを見届けると、自分もまた新たな自分に生まれ変わった気分で映画館を出られる。誰しもが大なり小なり抱えている心の傷を優しく癒してくれる映画だ。そんな自分の心を内省する時間は、しばし日常を離れられる場末の映画館などで独りひっそり見るのがいい。
山内愛美        ★★★★
 この映画で最も魅力的なのは、なんといっても婚約者を亡くした主人公シウワイをいつの間にか世話するようになったファイでしょう。物語の最初のうちは、どこか作品の中に「安っぽさ」が否めなかったけれども、ファイが活躍(?)するようになってからはそのことがふっとびました。ファイは、登場したときは本当にどこにでもいるような超ごくごく普通の男性だったのに、物語がすすむにつれ、どんどんカッコよく素敵にみえてきます。無愛想なのに愛があるところがいいです。すっかり物語の中のファイのファンになってしまいました。映画は映画館でみるのが一番ですが、この作品はDVDでもよいなあと思わせるものがありました。休みの日に、ひとりでどっぷりと浸りたいイメージです。
カザビー        ★★★☆
 愛する人を失った悲しみははかりしれないものだ。それがきっと主人公シウワイを死んだ彼と同じミニバスの運転手にさせたのだろう。彼の忘れ形見ロロを育てながら、慣れない運転で毎日トラブルばかり……。そんな彼女を支えているのは死んだ彼の留守電の声だけだなんて、なんとも切ない話じゃあないですか。同じく過去をひきずって寂しい生活を送る男ファイとの恋愛は3歩進んで2歩下がるようなスローペースで描かれてるのがすごく自然で微笑ましい。そんな二人が最後にどういう方法で過去の清算をするのか?気になった方は是非どうぞ!私このリセットの仕方、潔くて好きですねぇ。ところで、鑑賞中に音声が出ないという映写機トラブルが2度発生。おかげでこの映画は忘れられないものに。良くも悪くも映画館にはハプニングや発見があるから面白い。そんな事全部ひっくるめて、作品を自分の思い出として刻み込みたい。だから、今日も映画館に足を運んでしまうのです。
中沢志乃       ★★★
 婚約者の死を経て彼と前妻との間にできた子供を抱え、強く生きようとする女性の話。…と言うと、DVDで見ても良い印象を受けますが、やはりこれは映画館で見てほしい映画です。理由は(1)冒頭のインパクトを感じてほしいから&(2)DVDだとあまりの女性の暴走ぶりに?(愛する人を失ったら当然なのかもしれませんが……)途切れ途切れに見てしまう可能性がある映画だから。映画は本来、一気に見るようにできていると思います。スケールを必要としない最初から最後まで引き付けられる恋愛ものならDVDもありですが、途中で気がそれる可能性もあり、でもでも最後まで一気に見るべき作品ならやはり映画館です!…それに、私はやはりあの空間が大好き!映画館の味方なのです☆ そうそう、女性の暴走も一緒に見た彼に言わせれば、可愛い顔を大画面で見れば(?)許せるらしいですよ。


転がれ!たま子

監督:新藤風
出演:山田麻衣子、岸本加世子、竹中直人
配給:シネカノン
http://www.tamako-movie.com/
no picture

伊藤洋次         ★★★★
 ただユルイだけのストーリーかと思いきや、きっちりと要所を締めたうまい作りで十分楽しめました。この映画、DVDで見てもいいとは思いますが、たま子の母と、たま子の幼なじみのトラキチが電撃的に恋に落ちるシーンは、ぜひ映画館で味わってほしい。二人の熱い眼差し、それを寸分も逃さないカメラワークはスクリーンでこそ映えるもの。それでもやっぱり家で見ようという頑固な性格の方は(笑)、できれば数人集めての鑑賞がオススメ。ベテラン俳優たち(特に岸本加世子)のはじけっぷりを楽しんで!
松本トオル        
 きっと『アメリ』をやりたかったんですよね、この映画。カワイイけど鉄兜をかぶった風変わりなの女の子が、"甘食"という広く馴染みのありそうなお菓子がきっかけで、外の世界と関わって行く。「映画は映画館で見るもの」というストイックで狭量な考えなので、今回のサブテーマには興味がないんだけど……。この映画みたいに最初の5分でキャラ設定とその後の展開がわかってしまう映画をみると、考え直したくなる。でも高い金払って失敗したとしても、震えるような感動を求めて映画館に通うのでした。


シネ達日誌
イラスト 今回は、【どうなる、21世紀の映画館!?】をサブテーマにお送りいたしました。私自身はノートパソコンで映画を鑑賞する異端派です。しかし、コメディとSF超大作だけは映画館で観るように心がけています。この2ジャンルに関しては、“リアクション”という最後のスパイスが作品をより美味しく仕上げてくれますからね。 (三笠加奈子)

2006.3.26 掲載

著者プロフィール
高井清子 :  1966年愛媛県生まれ。企業勤めの後、1年間のロンドン遊学を経て、フリーの翻訳者に転身。映画のプログラムなどエンタテインメント関連の翻訳をしています。ストレート・プレイ、ミュージカル、バレエ、歌舞伎などの観劇も大好き。今はどっぷり韓流にはまってます。

くぼまどか : 「人生すべてが経験値」をスローガンに、ピアニストからライターへと変身を遂げ、取材記事は元よりコラム・シナリオ、最近では創作活動にも手を染めつつあります。基本的に映画は何でも好きですが、ツボにはまると狂います。「ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還」封切りを観る目的だけでロンドンに飛んだのが自慢。

団長  : スーパーロックスター。メジャー契約なし、金なし、コネなしながら、来秋、日本武道館でライブを行う。ラジオDJ、本のソムリエ、講演、コラムニストなどとしても活躍中。大の甘党で“スイーツプリンス”の異名をとる。バンドHP http://www.ichirizuka.com

波多野えり子 :  1979年元旦の翌日に東京・永福町にて誕生。映画好きかつ毒舌な家庭で育ち、「カサブランカ」からB級ホラー作品まで手広く鑑賞する日々を過ごしながら、現在編集者を志しているところ。最近は、まんまと韓国映画とドラマにハマっています。

中沢志乃 :  1972年5月8日、スイス生まれ。小学校時代に映画好きになり友達と劇を作る。一時は別の道を目指すもやはり映画関係の道へ。 5年間、字幕制作に携わった後、2002年4月、映像翻訳者として独立。夢はもちろん世界一の映像翻訳者です。代表作は「ユー・ガット・サーブド」(ソニー・ピクチャーズエンタテインメント)。

山内愛美 : 千葉県生まれ。Webでライター活動を行う。一番好きな寝具は毛布。2004年、映画『交渉人 真下正義』のエキストラに参加したのをきっかけに、映画ライターの道を考えるようになる。「映画の助監督をやっている人間」に特に興味を惹かれ、いつか助監督に関する本を作るのが夢。

カザビー :  1978年生まれ。映画とお笑いをこよなく愛するOL。近況:フランス映画祭のサイン会でなんと憧れのセドリック・クラピッシュ監督と「ロシアンドールズ」のウェンディ役ケリー・ライリーに会えました。緊張していたもののキティちゃんを手渡すことに成功しました。他にも「ルーヴルの怪人」や今年9月公開ロマン・デュリス主演「ルパン」のジャン=ポール・サロメ監督にもサインしてもらったので大興奮でした。

伊藤洋次 :  1977年、長野県生まれ。業界紙の会社員(営業)。 メジャー映画はなるべく避け、単館系しかもアジア映画を中心に鑑賞。 最近気になっている監督は、廣末哲万・高橋 泉、園子温、深川栄洋、女池充など。

松本トオル :  1974年生まれ。ネコと戯れ、泡盛に泥酔し、映画に溺れる生活が夢。 2005年は月10万円のギャラで某フレンチ映画に没頭したが、2006年は某ビデオメーカーに勤務予定。

三笠加奈子 :  金星人のライターです。細木数子の説く大殺界からようやく抜け出しました。2006年は書いて、書いて、書きまくるぞ!



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