にしかわたく ★★★★☆
文句無しに面白かったでーす。しっとりした文芸色もきちんと残しつつ、『ラブ・アクチュアリー』のワーキング・タイトルらしい誠実でテンポのいいラブコメぶりに、おじさんうっとり。この映画、とにかく主役から脇にいたるまでキャスティングが抜群。脚本のキャラの描き分けが秀逸な上に出てくる人の顔がことごとく面白い。若い役者たちがいくらかはしゃぎ過ぎてもドナルド・サザーランド、ブレンダ・ブレッシン、ジュディ・デンチの凄腕ベテラントリオが屋台骨を支えているので安心して見ていられます。ジェーン・オースティンやE・M・フォースターの映画化作品を見てるといつも思うのですが、イギリスってのはほんとにラブコメの歴史がある国なんだなぁと。漱石がもっと長生きして『それから』みたいな小説をあと20本くらい書いてくれていたら、日本ラブコメ映画事情は今とはまったく違ったものになっていただろうに・・・。早くも今年のベストワン候補です! |
中沢志乃 ★★★★
プライド…というより偏見が邪魔をして、なかなか男女が結ばれないこの映画。「品のない家族が嫌」だったり伯母さんが余計な口出しをしてきたり、身分が違うと言っても王様と乞食ほどではないし、200年ほど前の話ながら現代に十分通じるものがあります。恋のさや当て、玉の輿狙い、好きな女性へのプロポーズに悩む男性。朝もやの中、愛する人を理解しようと歩く男性もナイスです。(でも私は天真爛漫なビングリーの方が好きですが。)美しい田園風景と心地いいピアノ音楽、さすがのドナルド・サザーランドの名演も手伝って、なぜかエリザベスの父親に一番、感情移入。「MASH」以来、ドナルド・ファンの皆様、いらっしゃったら必見です。 |
三笠加奈子 ★★★★
私はキーラ・ナイトレイを“イギリスの高倉健”と呼んでいた。健さんがどんな役を演じたって高倉健でしかありえないように、スクリーンの中のキーラは、いつだって天然お譲のキーラ・ナイトレそのまんまだ。ところがどっこい、今作『プライドと偏見』のキーラは、ちゃんと役作りをしているではないか!
斜に構えた椅子の座り方一つとっても、ソフィスケイトされた貧乏女をうまく演出している(お譲専門のキーラが貧乏役かぁ…)。ストーリーが『若草物語』を彷彿とさせるが、キーラなら次女のジョー役をしっかり演じられそう! ポスト“ウィノナ・ライダー”はキーラで決まり?! |
くぼまどか ★★★☆
原作はいわゆる文芸大作だけに、予告編も何かとそういう雰囲気をかもし出していただけに、実際観てビックリな作品だった。いや、やっぱり映画館に足を運ぶまでは分からないものです。主人公エリザベス・ベネットを演じるキーラ・ナイトレイが美しすぎて、原作では「一番美しい」はずのジェーンがかすんでました。あ、綺麗でしたけどね。全体を通して「結婚に命かける妙齢女性のドタバタバトル」感は否めないけれど、イギリスの美い風景と、美しい音楽、そして原作の時代背景をよく表しているところは好感が持てたかな。出演者みんながやってた優雅なお辞儀、どこかで真似したい! |
高井清子 ★★★
プライドが邪魔して本心を言えない。自分の勝手な思い込みから相手を誤解する。この愚かな人間の煩悩があるかぎり、恋愛がままならないのは古今東西変わらないのだろう。どんなにコミュニケーション手段が発達して便利になろうと同じこと。最後にその重い障害を突き動かすのは人の想いでしかない。ふたりを客観視している観客はどうしてもふたりが想いを寄せ合っていることがわかるだけに、もっとじらしてほしかった。もっとふたりに悶々としてほしかった。そうすればその壁を突き破る愛の力に勇気がもらえるのに…。それはそんな勇気の持てないいくじなしの願望です。 |
波多野えり子 ★★★★★
昨日までの隣人、友人同士が殺し合う、路上に在る無数の遺体……すべて1994年にルワンダのある「日常」で起きた事だ。「ニュースが流れれば世界中の人が助けてくれるはずだ」と希望の光を見出そうとするポール(ドン・チードル)に、ジェノサイドの決定的映像をスクープした報道カメラマン(ホアキン・フェニックス)は「世界中の人は食卓でこの映像を見て『怖いね』と言うだけに過ぎない」という――否めなかった。そして見わってから改めて、自分の周りの「日常」に目を向けてみる。何が起きても不思議ではない「日常」がそこにはあった。これはある立派な英雄の本当にあった話、なんてひと言では終われない。怒り、恐怖、悲しみ、そしてラストに得る安堵と希望、人間のあらゆる感情を見事に撮った秀作だ。 |
悠木なつる ★★★★★
「世界の人々はあの(虐殺の)映像を見て“怖いね”と言うだけでディナーを続ける」という台詞が、1994年当時のルワンダと先進国の距離感を表していて印象深い。実話をベースにした脚本だけに説得力があるのは勿論のこと、ドン・チードルの迫真の演技が作品の完成度を高めている。一瞬先には死が待ち受けている緊迫した状況下。葛藤を抱えながらも、高級ホテルの支配人としての威厳を保ち、家族やホテルに駆け込む人々を必死守ろうとする姿に胸を打たれる。観ているうちに、大量虐殺を黙殺した先進国に対する苛立ちが込み上げてきた。そして、その苛立ちは、世界中で起きている問題を他人事で済ませてしまおうとする自分自身へと向けられる。 |
カザビー ★★★★★
「近所の人がいきなり自分達を殺しに来たらどうする?」ごくフツーの人が虐殺に加担していたというルワンダの大虐殺。人間性を失ってしまった人間達が街に溢れていて逃げ場がない。これほど残酷で恐ろしい事が他にあるだろうか。地獄絵図と化した最悪の状況の中で、主人公ポールはありとあらゆる手段を尽くして自分の家族と難民1200人を守り抜く。死の恐怖が迫っていても気丈に立ち向かっていくポールの勇気に涙が止まらなかた。それとともに我が国を含めた先進国の無関心さに対して恥ずかしくなった。私たちはこの事実を真摯に受け止め、率先して知ろうとしなければならないと感じた。今年のベスト1になりそうな作品。 |
鍵山直子 ★★★
情けない話ですが、この映画を見るまで、ルワンダでこんな恐ろしいことがあったとは知りませんでした。映画のエデュケーション・パワーはすごいですね。教科書で勉強するよりよっぽど身につきます。ルワンダがベルギー領だったっていうのも、この映画で始めて知ったし。さて肝心の映画ですが、ジェノサイドがテーマなので、きっとしんどいんだろうなぁと覚悟していました。ところがどっこい!ハラハラ・ドキドキのサバイバル・エターテイメントに仕上がってるじゃぁないですか!主人公は、明日をも知れぬ危険な情勢の中、1200人の人々をホテルに匿ったルワンダのシンドラー、ポール・ルセサバギナ。一介のホテルマンである彼が、死の恐怖と闘いながら、巧みな交渉術と的確な況判断力を武器に、暴徒化した民兵から人々を守る…。その姿は腕力頼みのヒーローよりもよっぽどクールでカッコよく、ポールを演じたドン・チードルにもう少しで惚れるところでした。もう彼の鼻の穴に指が何本入るかなぁなんて、考えません。 |
松本トオル ★★
こういう真実を扱った社会派の映画って批判しにくいんですが、鑑賞後にふつふつと不満が大きくなった。それはこの作品が持つ「正しい映画」という空気感から来るのかもしれない。確かに道路を埋めるほどの死体の上を車で移動するシーンはショッキングだし、家族愛を描きそれなりの感動作に仕上がっている。主人公のポールさんも立派な方なんだけど、この映画は「正しい」ことを「正しい」視点で描いているに過ぎない。ジェノサイがいかに非道なものであっても、この映画のように「正しい」視点で描かれる、どこか客観的過ぎる印象を受けてしまい不満を感じてしまうのである。 |