1度観たひとは、そのタイトルを聞けば、たちまち顔をほころばせる、至福の名画。製作はなんと昭和14年!この極上の明るさで映画史上に輝き続ける、伝説のサムライ・オペレッタの傑作が、67年という年月を経てデジタルリマスター版でスクリーンに蘇ります。
口ずさみたくなる、あのフレーズ。「♪さーてさてさて、この茶碗」と黒澤映画の名優・志村喬や、「僕は若い殿様ぁ〜、家来ども喜べ〜♪」と名歌手・ディック・ミネが朗らかな歌声を披露します。お話は麗しき3人娘(市川春代、深水藤子、人気歌手の服部富子)の貧乏浪人(大スターの片岡知恵蔵)をめぐる恋の鞘当て。とにかく市川春代のヘタウマなロリ甘声に男子は悩殺!めちゃくちゃカワイイんです!思い起こすと、モノクロ映画なのに脳裏には色とりどりの傘が舞う愉快な踊りの光景が鮮やかに広がるような、底抜けに明るく、今年一番の“おめでたい”映画です。
そして『鴛鴦歌合戦』は1939年という戦時下、しかも7日間という短期間で撮影されたことにも驚きです。監督は、情感とスピード感溢れる演出で《時代劇の神様》とも呼ばれるマキノ正博。唄いながら自在に動く出演者を撮るのは『羅生門』『雨月物語』『近松物語』の《カメラマンの神様》宮川一夫。この神様が奇跡のタッグを組んだ時代劇ですから、今見てもぜんぜん“新しい”娯楽映画なので、是非スクリーンでお楽しみ下さい。
山下幸洋(映画宣伝)
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