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バックナンバー Vol.41

ブレイキング・ニュース
天空の草原のナンサ
風の前奏曲

鴛鴦(おしどり)歌合戦 ■ ■ ■

1度観たひとは、そのタイトルを聞けば、たちまち顔をほころばせる、至福の名画。製作はなんと昭和14年!この極上の明るさで映画史上に輝き続ける、伝説のサムライ・オペレッタの傑作が、67年という年月を経てデジタルリマスター版でスクリーンに蘇ります。

口ずさみたくなる、あのフレーズ。「♪さーてさてさて、この茶碗」と黒澤映画の名優・志村喬や、「僕は若い殿様ぁ〜、家来ども喜べ〜♪」と名歌手・ディック・ミネが朗らかな歌声を披露します。お話は麗しき3人娘(市川春代、深水藤子、人気歌手の服部富子)の貧乏浪人(大スターの片岡知恵蔵)をめぐる恋の鞘当て。とにかく市川春代のヘタウマなロリ甘声に男子は悩殺!めちゃくちゃカワイイんです!思い起こすと、モノクロ映画なのに脳裏には色とりどりの傘が舞う愉快な踊りの光景が鮮やかに広がるような、底抜けに明るく、今年一番の“おめでたい”映画です。

そして『鴛鴦歌合戦』は1939年という戦時下、しかも7日間という短期間で撮影されたことにも驚きです。監督は、情感とスピード感溢れる演出で《時代劇の神様》とも呼ばれるマキノ正博。唄いながら自在に動く出演者を撮るのは『羅生門』『雨月物語』『近松物語』の《カメラマンの神様》宮川一夫。この神様が奇跡のタッグを組んだ時代劇ですから、今見てもぜんぜん“新しい”娯楽映画なので、是非スクリーンでお楽しみ下さい。

山下幸洋(映画宣伝)

(作品データ)
監督:マキノ正博  撮影:宮川一夫
出演:片岡千恵蔵、市川春代、志村喬、ディック・ミネ、服部富子、深水藤子
配給:日活
1939年/69分/モノクロ/スタンダード・サイズ/日活京都作品

(公開情報)
ユーロスペースにて公開中 [デジタルリマスター版ブルーレイディスク上映]
連日21:20より上映 ※21日(土)以降は土日祝のみ10:00/21:20の2回上映
http://www.nikkatsu.com/movie/history/2006_j/oshidori/index.html

=1点、=0.5点。最高得点=5点
ブレイキング・ニュース

監督 ジョニー・トー
出演 ケリー・チャン リッチー・レン ニック・チョン
配給 タキコーポレーション
http://www.breakingnews.jp/
no picture

くぼまどか      ★★★★★
 いやほんと、久々素直に楽しめるエンターテインメント作品に出会ったような気がする。全編「見せ場」でできてますよ、これ。のっけから銃撃戦、そのまま最後まで銃撃戦というノンストップアクションにワクワク、時おり挟まれる心理戦にドキドキ、映画に出て来る強盗、殺し屋、現場の警官、そしてひとつの大事件を「ショー」と位置づけ情報をあざとく操作する香港警察の広報、みんながヒーローなんです。出演者全員がこの「ショー」をおおいに盛り上げてくれた。みんなカッコいいし負けてないし、なによりしつこい。最後までジメついてないのが気に入りました。とにかくスカッとしたい人は、ぜひ観て欲しい。
波多野えり子    ★★★☆
 タイトルの如く“ニュース速報”という究極の緊迫状態を舞台に繰り広げられる自信満々キャリア美人警視(ケリー・チャン)、情に厚いクールな強盗(リッチー・レン)、動物的勘と体力が武器の警部補(ニック・チョン)による巴戦。人物設定はわりとよくあるパターンだけど、映像を駆使して攻防する彼らの物語に、観客を事件の視聴者のひとりとして自ずと引き込む演出効果は抜群。躍動感ある良質の娯楽作品だ。「この事件はショーで演出家は私よ!」と豪語する女性警視に「俺が演出家なら君がヒロインだ」なんて真顔で言えちゃう強盗さん。ちょっとクサイけど、あなたがナンバーワンでした。
団長         ★★★
 そこにほのかな人間ドラマもありましたが、イメージ的には「大銃撃戦」という印象です。とにかく最初から最後まで銃声が鳴り止むことがなかったです(笑) 一体何発弾丸が撃たれたことでしょうか。ここまで徹底的に銃撃戦中心の映画は初めてでした。警察に対するパロディというか、皮肉みたいな部分もあり、報道されていること=実際に起きていることとは限らない、といったことに気づくのにも役立つことと思います。階級社会の悲哀も感じました。香港や中国では、これを見てどんな印象を受けたのか、聞いてみたいものです。


天空の草原のナンサ

監督・脚本 ビャンバスレン・ダバー
出演 ナンサル・バットチュルーン ウルジンドルジ・バットチュルーン ツォーホル
配給 東芝エンタテインメント
http://www.tenku-nansaa.com/
天空の草原のナンサ

伊藤洋次       ★★★★★
 これほど出演者たちの一つひとつの動きを、じっと見守ってしまう映画は少ないだろう。
モンゴルの草原に住む家族を描いたこの物語は、人を引き付ける要素が満載だ。ゲル(移動式住居)の解体など、遊牧民の暮らしぶりを丁寧に盛り込んでいる点も素晴らしい。作品に登場する犬のツォーホルは、カンヌ映画祭で“パルムドッグ″という賞を受賞しただけあって、見事な演技。ただ、私はハゲワシの演技も同じくらい高く評価したい。ナンサの幼い弟に忍び寄る不気味な歩き方は、助演賞をあげたいほど傑出した名演だった。
河西春奈       ★★★★☆
 この物語はモンゴルの「黄色い犬の伝説」を下敷きにしているものの、ドキュメンタリータッチでゆったりと描いているので、きっちりとしたお話はありません。そこにある家族とその生活、鮮やかな風景をみているだけで癒されてしまいました。お年寄りから子どもへそれからまた次の世代へと語り継がれていく伝説、当たり前のようにある家族の絆、いつも手作りで温かい料理。あわただしい生活を送る現代人の忘れていたものが、ここにあります。それと対照に、現代社会のなかで伝統を貫くことに限界を感じつつある父親の表情が心に残りました。
中沢志乃       ★★★★
 これといった大事件も起きず、途中で間のびしている印象を受けましたが、最後のショットでそのゆったりとし過ぎているような“流れ”の意味が分かりました。雄大な自然と共に生きる家族に驚愕の事件がしょっちゅう起きるわけがなく、これが本当のモンゴルの遊牧民の生活だったのです。羊の皮をはいでその肉を食べる時、神様とさっきまで生きていた羊に感謝する。小学校低学年のナンサが一人で馬に乗り、羊を放牧しに行く。母親の言葉ひとつひとつに、都会育ちの私がともすれば忘れてしまう大切なことを思い出しました。エンドロールを見るとナンサ一家は実際にモンゴルの大地に住む一家だったらしく、お父さんの純朴な笑顔も最高でした!


風の前奏曲

製作・監督・脚本・編集 イッティスーントーン・ウィチャイラック
出演 アドゥン・ドゥンヤラット アヌチット・サパンポン アラティー・タンマハープラーン
配給 東宝東和
http://kaze.eigafan.com/
風の前奏曲

高井清子       ★★★☆
 タイの伝統木琴楽器、ラナートの天才奏者の生涯。生まれながらにして天賦の才能を与えられているが故の傲慢さをどのように克服するのか、その試練や苦難の劇的度を期待しながら見ていた。でも、むしろ第二次世界大戦下に西洋近代化を目指す国が始めた伝統芸能への禁止統制に静かに抵抗する姿を通して、彼のラナートへの深い愛を感じた。国家権力の圧力にも屈せず伝統を守り続けた芸術家への敬意が、タイでの爆発的ヒットに繋がったのだろう。ラナートというシンプルにして重層的な音を奏でる楽器になじみのない外国者には、美しい自然をバックに流れるすばらしい音色に驚嘆の連続だ。
山内愛美       ★★★
 ストーリーは単純であるが、タイという国は、その映像だけで見るものにぐっと来させる何かを持っていると思う。言葉の響きもそうかもしれない。
 この映画の要になっている"ラナート"というタイの楽器の演奏シーンが多く、映画を観たあともラナートの演奏がいつまでも耳の中で踊っている。"ラナート"奏者のソーンが死ぬ間際に演奏したときの音色は、それまでさんざん聴いてきたものとは全く違う深みがあり、思わず泣きそうになった。演奏は人の心を浮かび上がらせ、音楽は人の心を動かすのだ。
カザビー       ★★★
 淡々とエピソードが綴られていく作品だったんで正直眠かったです。しかし、主役のイケメンラナート奏者ソーンのライバルクンイン(日野正平似)が登場してからはスクリーンに釘付けになってしまいました。こいつのテクニックは神の域に達しているほどすごいのですが演奏してる姿が怖すぎるんですよ。瞬きひとつせずに小刻みにラナートを叩き続けるクンインはシャイニングのジャック・ニコルソン並みにインパクトあります。トラウマになりそうです。後にも先にもクンインな映画でした。


シネ達日誌
イラスト 「キネマ旬報」「映画芸術」「ヨコハマ映画祭」など各雑誌や映画祭の2005年のベストテンが続々発表になっていますが、日本映画で評判がいいのは「パッチギ!」「いつか読書する日」「リンダリンダリンダ」といったところ。私も好きな作品です。わがシネマの達人のベストテンも近々発表しますので、お楽しみに!(古東久人)

2006.1.26 掲載

著者プロフィール
山下幸洋 : 1974年生まれ、32歳。映画宣伝マン。毎日映画館に通う学生時代を経て、ぴあフィルムフェスティバル(PFF)の契約スタッフとして映画祭運営・宣伝を体で覚える。4年間お世話になったのち退社。おっかなびっくりフリーランスの道を歩んでいる。目下の野望は猫を飼うこと。

くぼまどか : 「人生すべてが経験値」をスローガンに、ピアニストからライターへと変身を遂げ、取材記事は元よりコラム・シナリオ、最近では創作活動にも手を染めつつあります。基本的に映画は何でも好きですが、ツボにはまると狂います。「ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還」封切りを観る目的だけでロンドンに飛んだのが自慢。

波多野えり子 :  1979年元旦の翌日に東京・永福町にて誕生。映画好きかつ毒舌な家庭で育ち、「カサブランカ」からB級ホラー作品まで手広く鑑賞する日々を過ごしながら、現在編集者を志しているところ。最近は、まんまと韓国映画とドラマにハマっています。

団長  : スーパーロックスター。メジャー契約なし、金なし、コネなしながら、来秋、日本武道館でライブを行う。ラジオDJ、本のソムリエ、講演、コラムニストなどとしても活躍中。大の甘党で“スイーツプリンス”の異名をとる。バンドHP http://www.ichirizuka.com

伊藤洋次 :  1977年、長野県生まれ。業界紙の会社員(営業)。 メジャー映画はなるべく避け、単館系しかもアジア映画を中心に鑑賞。 最近気になっている監督は、廣末哲万・高橋 泉、園子温、深川栄洋、女池充など。

河西春奈 : 1979年東京都生まれ。編集者を経てシナリオライター、フォトグラファーとして活躍中。共同監督している西川文恵と作り、主演した映画「While you sleep」を、第59回ヴェネツィア国際映画祭に出品。他10か国でも上映される。

中沢志乃 :  1972年5月8日、スイス生まれ。小学校時代に映画好きになり友達と劇を作る。一時は別の道を目指すもやはり映画関係の道へ。 5年間、字幕制作に携わった後、2002年4月、映像翻訳者として独立。夢はもちろん世界一の映像翻訳者です。代表作は「ユー・ガット・サーブド」(ソニー・ピクチャーズエンタテインメント)。

高井清子 :  1966年愛媛県生まれ。企業勤めの後、1年間のロンドン遊学を経て、フリーの翻訳者に転身。映画のプログラムなどエンタテインメント関連の翻訳をしています。ストレート・プレイ、ミュージカル、バレエ、歌舞伎などの観劇も大好き。今はどっぷり韓流にはまってます。

山内愛美 : 千葉県生まれ。Webでライター活動を行う。一番好きな寝具は毛布。2004年、映画『交渉人 真下正義』のエキストラに参加したのをきっかけに、映画ライターの道を考えるようになる。「映画の助監督をやっている人間」に特に興味を惹かれ、いつか助監督に関する本を作るのが夢。

カザビー :  1978年生まれ。映画とお笑いをこよなく愛するOL。近況:フランス映画祭のサイン会でなんと憧れのセドリック・クラピッシュ監督と「ロシアンドールズ」のウェンディ役ケリー・ライリーに会えました。緊張していたもののキティちゃんを手渡すことに成功しました。他にも「ルーヴルの怪人」や今年9月公開ロマン・デュリス主演「ルパン」のジャン=ポール・サロメ監督にもサインしてもらったので大興奮でした。

古東久人 :  1959年生まれ。1980年代にキネ旬常連投稿から映画ライターへ。 映画雑誌に執筆。編著「相米慎二・映画の断章」(芳賀書店)。 生涯のベストはブニュエルの「皆殺しの天使」と長谷川和彦の「太陽を盗んだ男」。

松本透 :  1974年生まれ。ネコと戯れ、泡盛に泥酔し、映画に溺れる生活が夢。 2005年は月10万円のギャラで某フレンチ映画に没頭したが、2006年は某ビデオメーカーに勤務予定。


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