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バックナンバー Vol.40

エリザベスタウン
イン・ハー・シューズ
フリークス(デジタル・リマスター版)

さそり、『女囚さそり』を語る ■ ■ ■
『女囚701号さそり』(1972)監督:伊藤俊也 出演:梶芽衣子 
『女囚さそり 第41雑居房』(1972)監督:伊藤俊也 出演:梶芽衣子 白石加代子
『女囚さそり けもの部屋』(1973)監督:伊藤俊也 出演:梶芽衣子 成田三樹夫
『女囚さそり 701号怨み節』(1973)監督:長谷部安春 出演:梶芽衣子 田村正和

 あたしが中学生の頃、同級生が子供の時、親に連れられて観た映画の話をしてくれた。
 冒頭、手錠で繋がれた女囚を刑事が地下鉄で護送している。電車に乗るとドアが閉まる直前、突然刑事は腕をドアに挟まれ、女囚に包丁で腕を切られてしまう!切られた腕をぶら下げたまま女囚が逃げ出し、墓場で腕を捨てる為、歯で噛み切った!その映画は同級生のトラウマになったと言う。 あたしは話聞いただけで気持ち悪くなった。それが『女囚さそり・けもの部屋』だったと知ったのは大分後になってからだ(それにしても、こんな強烈な成人映画を子供と一緒に観た親も相当なワルだと思う)。
 健全な映画鑑賞人生を歩んでくれば『女囚さそり』シリーズに行き当る事はまずないだろう。そう、闇に埋もれた映画。闇の中から這い上がって来た様な異様な迫力の女囚映画『女囚さそり』は暗闇のスクリーンの中こそ相応しい。 むしろ陽が当たってはいけない映画。東映の犯罪映画史の中でも一際強烈な存在の『さそり』。それはストーリーが女の復讐だからとか脇役が個性的だとかが理由ではない。これはもう、主演の梶芽衣子=さそりの魅力によるもので、これ程危険で魅力的なキャラクターは映画史に類を見ない。タランティーノが『キル・ビル』で主題歌『恨み節』を起用し、再評価されたのはむしろ遅すぎたと言ってもいい。
 何が凄いか?ひたすらさそりは無言で、自分を虐待する奴らを睨み付ける、そして刺す!この行動だけしか起さない。まるで雌豹だ!そして黒い帽子に黒いコートのあのスタイル!あまりの好評に『さそり』シリーズは4作作られたが、『さそり』のイメージが強すぎるので芽衣子さんは以後出演を拒否。 それ以降は『修羅雪姫』『大江戸捜査網』の着物路線、『寺内貫太郎一家』の綺麗な奥さんと、『さそり』のイメージを払拭するのに成功し、芸能生活40年を超えたのは見事!他の女犯罪者路線の女優がことごとく闇の彼方に消えていったのに比べると、美貌と演技力が際立っていたからだろう。
 梶芽衣子さんには共演した映画の打ち上げで目の前で『恨み節』を歌っていただいた。 歌った瞬間、彼女は『さそり』の顔になった!声は当時と全く同じだった。その場に居る事が出来た感動で涙がこぼれた。
 そして、あたしはシャンソン歌手『さそり』になった。

(さそり)

=1点、=0.5点。最高得点=5点
エリザベスタウン

no picture

山内愛美        ★★★★☆
 うやむやにした気持ち悪さのない、最後まで上質で筋の通った作品だと思う。音楽もよい。ドリューとクレアが携帯電話で長時間話すシーンの見事なテンポ良さには釘付け。クレアはドリューと出会ったときから運命を感じていたに違いない。クレアがバスタブで電話を切ろとしたときドリューに引き止められ、その後いかにも「してやったり」といううれしそうな表情をしたのが、女として共感が持てた。エリザベスタウンとはケンタッキー州にある実在する街の名前。そこで行われる葬儀がまるでお祭り騒ぎで楽しいパーティのよう。日本では考えられないが、ああいうのがうらやましい。
団長           ★★★★
 さわやかでロマンチックで、絵もキレイ。しかも主演が人気のオーランド・ブルーム!季節的にもピッタリで、女性にウケる映画だと思います。万人向けで当たりがソフトなので、心地好さが特に印象に残って、スーっと流れてしまいやすい作品かもしれませんが、実はけっこう"深い"気がします。キーワードは「埋め合わせ」。何かを失くしても、それは何かの始まりや新たなチャンスになる、ということを、主人公の失業や実父の死などを通じて表現しています。エンディングのひねり方も気に入りました。
くぼまどか       ★★★★
 すみません、私オーランド・ブルームのファンなんです。オーリが出て来た時点で星3つ。肝心のお話はとはいえば、「史上最強のノンキ映画」とでもいいましょうか。会社がつぶれるほどの損害を出したヤツが恋愛だけであんなに簡単に立ち直れるのなら、最近世間を騒がせた某証券会社の人に教えて上げてくださいな。話はメチャクチャだけど、実は登場人物ひとりひとりの魅力に引き込まれてしまった。夫のお葬式?でタップを踊る主人公ドリュー(オーリ)の母最高です。愛さえあれば失敗なんか怖くない。実に楽しい映画だった。でも話は(以下自粛)


イン・ハー・シューズ

no picture

中沢志乃       ★★★
 姉と二人姉妹の私は、正反対の姉妹の話と聞いて少し期待して見に行きました。けど…うーん、ほぼありえないシチュエーション。ここまで仲のいい姉妹は、普通、姉妹の彼を寝とりませーん!他の人なら許せないことも姉妹だから許してしまう。それは分かるけどー。と思ったらやっぱり監督は男性でした。自分を認めてくれたシニアセンターの教授が亡くなってキャメロン扮する"はちゃめちゃ"マギーが涙ぐむシーンは泣けました。うんうん、そうだよね。でも全体的にキャメロンの素敵な脚だけが目立つ映画。題材は良かったのにもったいないかなあ。キャメロンが出る必要も無いような…細かいことにはこだわらず大きな目で見るといいのかな。アメリカのシニアホームはナイスです!
高井清子       ★★★
 タイトルの英語には文字通り「彼女の靴を履いて」という意味のほかに、「彼女の立場になって」という意味がある。物語の方も、その意味を踏襲するように、単純な靴を巡る喧嘩から、お互いを思いやれるように成長していく姉妹の姿を描いている。一番近いからこそ、どこかライバルであり、でも誰よりもわかり合える姉妹関係には、姉妹を持つ者ならどこか共感できる箇所があるかもしれない。ただ突飛なシチュエーションの連発なので、むしろシャーリー・マクレーン演じる祖母を始め、お年寄りの無邪気さや包容力に癒されていく過程に心温まった。
河西春奈       ★★☆
 『イン・ハー・シューズ』というタイトルのわりには、靴と絡めたエピソードが少ないし、靴を連想させるエピソードは独立していて話に溶け込んでいないような気がしました。30歳が近い妹(キャメロン・ディアズ)は、もう外見だけでは通用しなくなるということに 焦りを感じ、賢い自分の内面を見出す素敵な話なのに、無理やり靴のエピソードをくっつけている気がしてなりません。それでも、お互いにコンプレックスを抱いているんだけど仲良しな姉妹という設定に、共感する女性は多いと思いました。そこに無理やり靴をもってくることもないと思うのですが……。


フリークス(デジタル・リマスター版)

no picture

さそり        (採点不可能)
 この映画はリトマス試験紙だと思う。人間性を試されるというか、観て面白いと言うと顰蹙をかうし、気持ち悪いと言うと 人間じゃないと思われる。あたしは好奇心で観た。しばらく友人の間でピンヘッドブラザーズの真似が流行ったりした。 ある日、夢の中にピンヘッドや上半身だけの男が現われ襲われた。恐ろしかった。潜在意識で罪の意識を感じていたのだろう。 たまたま生まれついてしまったか事故で本物の身障者になった人や、奇形の人が出てる見世物小屋が舞台の映画。最初の公開タイトルは何と『怪物団』!いくら何でも怪物扱いは酷すぎる! 出演者は本物でドキュメンタリーと、ストーリーはフィクションのミックス。本当の美とは何か醜とは何かを目の前に突きつけられる。勿論身障者こそ善人で性格の悪い美人こそ奇形だというのも偽善的な話ではあるが、彼ら出演者の熱演を見ると、そんな事どうでもよくなってくる。結局、現代でも『世界びっくり人間ショー』とか言って小人症の人や巨人症の人をテレビで見世物にしてるんだから本質的に人間の好奇心って変わってない。しかも、そういうのが無くなっちゃうとそれで生活してる人が食えなくなっちゃうし、彼らは逆に一歩引いた目で我々健常者がいかに汚い眼で彼らを見ているか見透かしているに違いない。本当に観る事を試される映画だわ。
カザビー       ★★★★
 これは悲しきガチンコ寓話です。善良な小人ハンスと遺産目当てで結婚してハンスを毒殺しようとする極悪クレオパトラ。 勧善懲悪なストーリーでとても解りやすく、本当の意味でのフリークスとは何なのかを 教えてくれます。全員本物のフリークスを出演させていることが問題になり、今まで上映禁止だったわけですがそれが本当に正しかったのかなぁと・・・。単なるカルトムービーとして扱われるのはもったいなさすぎるんで少しでも気になった方は是非ご覧になっていただきたいです。
伊藤洋次      ★★★★
 この作品を初めて見たのは大学生のとき。それまで映画と言えばテレビ映画、アクショ ン系中心に見ていた私は、薄暗いモノクロ映像と衝撃の内容に、トラウマになる寸前だった。あれから約10年ぶり、2度目の鑑賞。今度は衝撃よりも、映画としての面白さ、レベルの高さを強く感じた。1932年という時代を考えても、良く出来ている(追い詰めていくところなど)。「少し気になっているけど、ちょっと…」と尻込みしている方、ぜひとも見るべきです。
松本透       ★★★★
 クレオパトラっていう性悪美人が、ヘラクレスという筋肉男とつるんで、彼女に恋心を寄せるフリークス・サーカスの団長、金持ちの小人男ハンスと結婚して殺そうとするんですが・・・でもね、片想い男ハンスの報復劇はコワイんです。ただの報復じゃないんです。フリークス・ファミリーが団結して、雨が激しく降り雷が鳴り響く夜に襲うのです。それまでは普通のというか、フリークスの映画なんだけど、その辺からホラー映画のヒットメイカーことドット・ブラウニングの本領発揮です。だけどホラー映画の王道のような報復シーンが終わっても、安心してはいけません。ラストに映されるクレオパトラの姿のショッキングさに、「嫌な映画」を観たと思いながらも異常な満足感が僕を包むのでした。
三笠加奈子    
 これはカップル映画です。彼氏「妊婦が流産したくらいコワイ系の映画があるんだけどさー、見に行くう?」彼女「えぇー。いやだぁ」みたいな感じで2人仲良く席に並び、つまらなかった場合は、暗闇の中でいちゃつくための映画です。デヴィット・リンチの『イレイザー・ヘッド』並みの興奮を期待して見に行きましたが、キモカワイイ度でも、やはりリンチが圧勝。ただし、リンチは作り物の奇形で映画ファンの性感を刺激したのに対し、こちらフリークスは冗談ぬきの本物! 本当の小人大集合の名作『オズの魔法使い』と同系列にして語るべきなのでしょうか。でも、『オズの魔法使い』の方が衝撃的だったな。


シネ達日誌
イラスト 12月10日(土)、新宿でシネマの達人忘年会を行ないました。参加者は総勢30名。mixiから初参加してくれた人もいました。イベントとしてSASORI(舵芽衣子)さんのさそりショーもあり、「怨み節」「黒蜥蜴の唄」「ヨイトマケの唄」「愛の讃歌」「バラ色の人生」「ルパン三世」「ベルサイユのばら」…を歌ってくれました。 また、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭のディレクターを務める映画評論家の塩田時敏さんも参加してくれて、 今年のベストワン、ワーストワンなどもみんなで語り合いました。(古東久人)

2005.12.25 掲載

著者プロフィール
さそり(舵芽衣子):シャンソン歌手。山田花子原作・鳥肌実、立島夕子、綾小路翔出演カルトムービー『魂のアソコ』監督。

山内愛美 : 千葉県生まれ。Webでライター活動を行う。一番好きな寝具は毛布。2004年、映画『交渉人 真下正義』のエキストラに参加したのをきっかけに、映画ライターの道を考えるようになる。「映画の助監督をやっている人間」に特に興味を惹かれ、いつか助監督に関する本を作るのが夢。

団長  : スーパーロックスター。メジャー契約なし、金なし、コネなしながら、来秋、日本武道館でライブを行う。ラジオDJ、本のソムリエ、講演、コラムニストなどとしても活躍中。大の甘党で“スイーツプリンス”の異名をとる。バンドHP http://www.ichirizuka.com

くぼまどか : 「人生すべてが経験値」をスローガンに、ピアニストからライターへと変身を遂げ、取材記事は元よりコラム・シナリオ、最近では創作活動にも手を染めつつあります。基本的に映画は何でも好きですが、ツボにはまると狂います。「ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還」封切りを観る目的だけでロンドンに飛んだのが自慢。

中沢志乃 :  1972年5月8日、スイス生まれ。小学校時代に映画好きになり友達と劇を作る。一時は別の道を目指すもやはり映画関係の道へ。 5年間、字幕制作に携わった後、2002年4月、映像翻訳者として独立。夢はもちろん世界一の映像翻訳者です。代表作は「ユー・ガット・サーブド」(ソニー・ピクチャーズエンタテインメント)。

高井清子 :  1966年愛媛県生まれ。企業勤めの後、1年間のロンドン遊学を経て、フリーの翻訳者に転身。映画のプログラムなどエンタテインメント関連の翻訳をしています。ストレート・プレイ、ミュージカル、バレエ、歌舞伎などの観劇も大好き。今はどっぷり韓流にはまってます。

河西春奈 : 1979年東京都生まれ。編集者を経てシナリオライター、フォトグラファーとして活躍中。共同監督している西川文恵と作り、主演した映画「While you sleep」を、第59回ヴェネツィア国際映画祭に出品。他10か国でも上映される。

カザビー :  1978年生まれ。映画とお笑いをこよなく愛するOL。近況:フランス映画祭のサイン会でなんと憧れのセドリック・クラピッシュ監督と「ロシアンドールズ」のウェンディ役ケリー・ライリーに会えました。緊張していたもののキティちゃんを手渡すことに成功しました。他にも「ルーヴルの怪人」や今年9月公開ロマン・デュリス主演「ルパン」のジャン=ポール・サロメ監督にもサインしてもらったので大興奮でした。

伊藤洋次 :  1977年、長野県生まれ。専門紙の会社員(営業)。メジャー映画はなるべく避け、単館系しかもアジア映画を中心に鑑賞。映画を観て涙したことが一度しかないため、現在は泣ける映画を探索中。

松本透 :  1974年生まれ。ネコ大好き。泡盛大好き。福岡ホークス頑張れ。サッカー日本代表頑張れ。田臥勇太のNBAデビューに落涙。強烈な映画体験求む!!現在は、なんやかんやとフリーランスな僕です。

三笠加奈子 :  金星人のライターです。細木数子の説く大殺界からようやく抜け出しました。2006年は書いて、書いて、書きまくるぞ!

古東久人 :  1959年生まれ。1980年代にキネ旬常連投稿から映画ライターへ。 映画雑誌に執筆。編著「相米慎二・映画の断章」(芳賀書店)。 生涯のベストはブニュエルの「皆殺しの天使」と長谷川和彦の「太陽を盗んだ男」。

にしかわたく :  漫画、イラストの他、最近はフリペで映画コラムも。映画館は汚ければ汚いほど良い、が持論。5年後は印税生活で悠々自適、年の半分はアジア映画館巡りの旅をしている予定。映画イラストブログ「こんな映画に誰がした?」http://takunishi.exblog.jp/


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