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バックナンバー Vol.36

リンダ リンダ リンダ
亀は意外と速く泳ぐ
モディリアーニ 真実の愛

名脇役あっての韓流ラブコメ♪ 〜『恋する神父』『大変な結婚』他〜 ■ ■ ■

恋する神父日本でのTVドラマ放送で人気に火のついた韓流スターの主演映画が今夏こぞって公開されている。クォン・サンウの『マルチュク青春通り』『恋する神父』、キム・レウォンの『マイ・リトル・ブライド』、キム・ジョンウンの『大変な結婚』等々。どれもなかなか面白い。

当初はここで韓国でもトップの人気を誇る(そして私が大ファンである)クォン・サンウの魅力をとうとうと語るつもりだったのだが、方向転換することにした。あまりにも脇役がいい味を出しているからだ。

まず『恋する神父』のキム・イングォン。飄々としたおとぼけぶりで、サンウ演じる神学生の生真面目さを引き立て、物語の重要な牽引役となる。『大変な結婚』のお兄ちゃん役、ユ・ドングンは、日本の俳優でいうと高倉健がコメディをやっているようなものだとか。実はこっちが主人公?と思わせるほどの存在感で爆笑を呼び、さらには涙をも誘う。

こういうサブストーリーのおもしろさあってこそ、悲恋の切なさが際だち、凡庸に陥りがちな主人公の恋物語にも飽きることなく入っていける。意外にありそうでないオリジナルなラブストーリーを次々と輩出している韓国映画の秘密は、普通の物語を個性豊かに盛り上げる俳優陣の懐の深さもしれない。

『マルチュク青春通り』のエロ本を売る学生(パク・ヒョジュン)しかり、『マイ・リトル・ブライド』のキム先生(アン・ソニョン)しかり、韓国の実力派俳優の支える屋台骨のしっかりした韓流ラブコメを気軽に楽しんでほしい。 

(高井清子)

=1点、=0.5点。最高得点=5点
リンダ リンダ リンダ

監督:山下敦弘
出演:ペ・ドゥナ、前田亜季、香椎由宇、関根史織
配給:ビターズ・エンド
http://www.linda3.com/
リンダ リンダ リンダ

舵芽衣子     ★★★★★
 あたしはザ・ブルーハーツの曲の中で『終わらない歌』が一番好き。終わらない歌を歌おうっ♪て本当に終わらないっぽい歌で、さびの部分の「キチガイ扱いされた日々」ってのがシビレルから(もっともCDでは音が消されてるけど)。で、この映画で歌われるって聞いてその部分をどうするのかと思ったら…やってくれました山下監督! しっかり韓国人のぺ・ドゥナに「キチガイ」って歌わせてる! こういうとこが監督の反骨精神っていうか一筋縄じゃいかないとこだよね。『どんてん生活』でも主人公がいきなりキレたり、裏ビデオは認めないってAVの監督とかヤバい奴ばっか出て来て、『ばかのハコ船』でも風俗役の美人のコにオッパイ出させたり、へんな八百屋出てくるし、『汁刑事』も刑事が観覧車でいきなりキレたり山下監督がAV監督役で登場したり、普通じゃない奴が普通に出てくる。山下監督はよくアキ・カウリスマキと比べられる。あたしは全く違うと思うけど、はみ出し者たちの生活の堕ちぶりを描くという点で共通? だから韓国留学生含む女子高生がブルーハーツを学園祭で歌うという設定はもっともミスマッチな起用という声も聞かれた。でもカウリスマキはそもそも『レニングラードカウボーイズ・ゴーアメリカ』ってバンドの映画があった訳だし(やっと共通点発見)。主役バンドのつなぎを魅力的な二組に歌わせたり、ライブシーンを見せるのうまいって思ったよ。全員の家の生活がいかにも田舎の高校生って感じが出てたなあ。香椎由宇の誕生日のプレゼントがす★手★き
カザビー      ★★★★☆
 高校生の時の思い出ってどうでもいいことほど覚えていたりする。
 『リンダ リンダ リンダ』はそんなことに気づかせてくれる作品だ。
校舎の屋上でお菓子食べながらダラダラしたり、部室でくっだらないことでみんなで大笑いしてみたりとか高校時代特有の空気感が実によく出ている。その中にペ・ドゥナ扮する韓国からの留学生ソンちゃんが加わると、これがまたとてつもなくいいわけで観ているこちらまでウキウキしてしまった。もちろん青春とブルーハーツは相性抜群で言うことナシ!! きっと映画館を出る時には「リンダリンダ?♪」と口ずさんでしまいたくなるはず。
波多野えり子   ★★★☆
 文化祭前日、深夜の練習―こんなふうに、アホみたいに何かに打ち込める時期ってあった、あった。キャストも新鮮。なかなかリアルな女子高生的視点でまとめられていた。そして、韓国からやってきたペ・ドゥナちゃん。独特の存在感が光ってた! 制服もちゃんと着こなしていたし。もはや国民的な「冬のソナタ」を筆頭に、韓国映画やドラマをみていると、20代だろうが、30代だろうが、高校生役を演じるのは日常茶飯事なのかしらと思う。カラオケルームにこもり、「Can you celebrate?」を熱唱している姿が異様にパワフルで、なんか妙に笑えたなー。
山内愛美     ★★★
 この映画をみる前、最も興味を持っていたのは香椎由宇だった。映画『ローレライ』のときに初めて彼女を知ったわたしは、その整った顔立ちから自分とあまり変わらない年齢だと勝手に思い込んでいたのだ(ちなみに27歳)。だからこの映画で高校生役として出演するということ自体、あっけにとられる出来事で、注目どころであった。しかしそんなことは吹っ飛んだ! 同じく高校生で韓国人の留学生役であるペ・ドゥナは25歳だというじゃないか! なんという愛らしさ、なんという制服の似合いっぷり。それを映画をみた後に知ったわたしはとても勇気を持ち、たどたどしさ満点の日本語にもますます惚れたのであった。


亀は意外と速く泳ぐ

監督:三木聡
出演:上野樹里、蒼井 優
配給:ウィルコ
http://www.kamehaya.com/
no picture

三笠加奈子     ★★★★
 平凡な生活に飽き飽きしていた主婦が、ひょんなことから某国のスパイに採用! 正体がバレないよう、より平凡な生活に精進するという本末転倒な日常コメディ。今作の魅力は、今日本でもっとも面白い素材"女の子"に目をつけたところ。コメディエンヌ上野樹里の、世の中を斜めに見据えた冷めっぷり。そして、オリーブ系美少女というイメージを見事に破壊した蒼井優のガラの悪さ。彼女たちの放つプチギャグ1,000本ノックに、私は最期までたじたじでした。地球が滅んでも、生き残るのはゴキブリと女の子かも?!
中村勝則      ★★★☆
 平凡で退屈な毎日を送る若奥様(上野樹里)が、ひょんなことからスパイになってしまうという一見ぶっ飛んだ話…とはいえ、そこにド派手な活躍などかけらもなく、映画はひたすらゆるーいテンポで進んでいきます。しかしこのゆるさこそ本作の魅力で、それを『スウィングガールズ』の樹里っぺが実に可愛らしく体現。スパイになったも「スパイは決して目立ってはいけない」とのことで、逆に平凡な主婦を振る舞うハメになる、ちょっと天然入ったヒロイン像は彼女ならではの持ち味でしょう。「ふえっふえっふえっ」という笑う仕草もいいですねぇ。そんな彼女に一風変わったスパイ特訓を伝授するおかしな夫妻(岩松了、ふせえり)、旨いラーメンを作る腕を持ちながらもスパイであるがゆえ、ほどほどの味しか作らせてもらえないラーメン屋(松重豊)といった個性派キャラのスパイスも効き、加えて思わぬ3枚目ぶりを披露する要潤も笑わせてくれます。ただ、随所に出てくる「トリビア」ネタ(タイトルからしてそう?)など、全体的に笑いのテイストがテレビ的に走ってるのが少々鼻につきますが、まぁそれはそれで頭からっぽにして観ればいいのかな!?
伊藤洋次      ★★★
 見始めた段階では、正直「もうひとひねりぐらい、あってもいいのになァ」と物足りない印象。……が結局、スパイ活動という、いわくありげな展開についつい乗せられ、訳の分からなさに何となく最後まで見てしまった。うーむ、なんか悔しい(笑)。でも、こういうユルくてくだらないのは好きです。物語の展開に勢いやスピード感はないものの、静かに、かつ唐突にやってくる笑いのツボ、加えて全編にわたって漂うビミョーな空気。爆笑ではなく、苦笑しながら妙に納得してしまう映画だった。
松本透       
 この映画で笑えないと、「センスが悪い」と言われそうな強迫観念に怯えてたせいか、サッパリ笑えませんでした。決してユルイ映画が嫌いなわけではないんです・・・。ひょっとしたら新しい映画かもしれません。20年後にリバイバルでそれなりに評価されるかもしれません。だけどポン・ジュノ監督の『殺人の追憶』を見て以来、コネタや風変わりなキャラクターで勝負する、サブカルちっくな邦画を見ては抱いてしまう物足りなさ。この作品のコネタ満載の小品なヘンテコ感よりも、内田けんじ監督『運命じゃない人』が持つ丁寧な構成とユーモアあふれる物語を圧倒的に支持したいと思ってしまうのです。


モディリアーニ 真実の愛

監督:ミック・デイヴィス
出演:アンディ・ガルシア、エルザ・シルベルスタイン
配給:アルバトロス・フィルム
http://www.modi-movie.com/
モディリアーニ 真実の愛

古東久人    ★★★★
 破滅型の天才画家、モディリアーニの壮絶な半生を描いた作品です。ライバル、ピカソや愛するジャンヌの父親とも確執、ジャンヌとの激しくも哀しい愛といった人間関係がアクション映画でも見ているような面白さで展開します。絵のモデルにもなっているジャンヌ役のエルザ・ジルベルスタインがとても魅力的なのですが、絵に詳しい方にはおそらく不満が残るでしょう。なぜなら、モディリアーニ本来の絵を使わず、わざわざ女優・エルザに似た絵を創作しているからです。現実の<リアル>よりも映画としての<リアル>を追求した作品と言えます。
くぼまどか   ★★★☆
 はじめに言おう。この作品、ただの恋愛ものではない。全編クローズアップされるのは、まるでカーニバルの道化を思わせるほど滑稽に描かれるモディリアーニとピカソの軋轢と友情、これは劇中マエストロ・ルノワールをして言わしめた「狂犬」の表裏に過ぎない。絵画コンペに参加を名乗り出た二人をはじめ当時の画家仲間のくだりは圧巻、思わず「ロッキーかよ!」と突っ込んでしまった。プロローグに登場する彼の妻ジャンヌがどこにいるかを知った瞬間、予想だにしない事態へと急展開するオチ?にも仰天。「真実の愛」の正体は熱いやつらの狂気だった。
中沢志乃   ★★★
 破滅的な人生を歩み、若くして亡くなった天才画家、モディリアーニ。呑み続ければ年内に死ぬと宣告されても呑み続け、揚げ句の果てにお酒のせいで大事なコンテストへの出席と幸せな生活まで逃してしまうアル中だ。天才の行動のようで、おいおい、自業自得でもある。冒頭で映画と実在の人物は関係ない旨のテロップが出たことにより、終始どう受け止めれば良いのか迷ったが、でも本編終了後にふと恋人ジャンヌの気持ちを考えたら泣けてきた。神父の「子供のために強くなりなさい」という言葉、片割れを失った心には到底届かなかったのだろうか…★大好きなアルフレッド・モリーナが今回はピカソ役で周囲を圧倒!彼が『フリーダ』で演じたディエゴと絡むのが面白かったです。テレビ的(?)編集と音楽もナイス。
山本聡子    ★★☆
 モディリアーニの絵の中の、どこか寂しげな女性。モディリアーニの最後の恋人ジャンヌを演じるエルザ・ジルベルスタインは、まさにその絵から抜け出したような風貌。彼女の悲痛な語りからはじまり、悲痛な声で終わるこの映画はちょっと悲しすぎた。酒と麻薬におぼれる売れない画家と彼を献身的に支えるジャンヌ。ダメ男にここまで尽くせるのはやはり真実の愛なんだろうか。絵に関しては決して妥協しない真っすぐなモディと真っすぐな愛情を彼にそそぐジャンヌ。2人の不器用だが真摯な生き方には、胸を打つものがあったけれど。ピカソ、シャガール、ユトリロなどが熱く生を謳歌していたあの時代のパリに、タイムスリップできるならばぜひ行ってみたい。


シネ達日誌
イラスト シネマの達人の友好団体からイベントのご案内です。
楽生會スペシャルイベント<戦後60周年記念『平和への願い』>
映画監督 吉田喜重の世界《半世紀の足跡と平和について》
主催:楽生會  共催:現代映画社  後援:中野区/中野区国際交流協会

第一部
 <前半>   原田敬子スペシャルトークショーと演奏会
 (桐朋学園大学講師,作曲家) 聞き手:二井
 <後半>
  講演 監督・吉田喜重 /女優・岡田茉莉子
第二部
  映画『鏡の女たち』
監督・脚本:吉田喜重 製作:成澤章、綾部昌徳、高橋松男 音楽:原田敬子
出演:岡田茉莉子/ 田中好子/ 一色紗英/ 山本未来/ 北村有起哉/ 三條美紀/ 犬塚弘
総合司会:二井康雄(暮しの手帖副編集長、志水季里子(女優)
展示:メインフロアーにて原爆資料写真展開催

9月24日(土)
開場:14:00/開演:15:00〜19:00
場所:中野ZERO大ホール
S席指定 2,800円、A席自由 2,300円
★詳細、チケット情報は下記サイト参照
http://www.k2.dion.ne.jp/~rxj/

2005.8.25 掲載

著者プロフィール
高井清子 :  1966年愛媛県生まれ。企業勤めの後、1年間のロンドン遊学を経て、フリーの翻訳者に転身。映画のプログラムなどエンタテインメント関連の翻訳をしています。ストレート・プレイ、ミュージカル、バレエ、歌舞伎などの観劇も大好き。今はどっぷり韓流にはまってます。

舵芽衣子  : シャンソン歌手。山田花子原作・鳥肌実、立島夕子、綾小路翔出演カルトムービー『魂のアソコ』監督。

カザビー :  1978年生まれ。映画とお笑いをこよなく愛するOL。近況:フランス映画祭のサイン会でなんと憧れのセドリック・クラピッシュ監督と「ロシアンドールズ」のウェンディ役ケリー・ライリーに会えました。緊張していたもののキティちゃんを手渡すことに成功しました。他にも「ルーヴルの怪人」や今年9月公開ロマン・デュリス主演「ルパン」のジャン=ポール・サロメ監督にもサインしてもらったので大興奮でした。

波多野えり子 :  1979年元旦の翌日に東京・永福町にて誕生。映画好きかつ毒舌な家庭で育ち、「カサブランカ」からB級ホラー作品まで手広く鑑賞する日々を過ごしながら、現在編集者を志しているところ。最近は、まんまと韓国映画とドラマにハマっています。

山内愛美 : 千葉県生まれ。Webでライター活動を行う。一番好きな寝具は毛布。2004年、映画『交渉人 真下正義』のエキストラに参加したのをきっかけに、映画ライターの道を考えるようになる。「映画の助監督をやっている人間」に特に興味を惹かれ、いつか助監督に関する本を作るのが夢。

三笠加奈子 :  ライター。最近、映画を見るのが面白くて、面白くて。物を見る目を鍛える時期が、ようやくやって来ました。頑張って勉強します。

中村勝則 : 1967年、岡山県生まれ。ヨコハマ映画祭選考委員。90年「キネマ旬報」で映画ライターデビュー。日本映画を中心に、VシネマやTVドラマの批評や取材記事を執筆。この夏オススメの日本映画は『魁!!クロマティ高校 THE☆MOVIE』。原作漫画にもハマッてる今日この頃です。

伊藤洋次 :  1977年、長野県生まれ。専門紙の会社員(営業)。メジャー映画はなるべく避け、単館系しかもアジア映画を中心に鑑賞。映画を観て涙したことが一度しかないため、現在は泣ける映画を探索中。

松本透 :  1974年生まれ。ネコ大好き。泡盛大好き。福岡ホークス頑張れ。サッカー日本代表頑張れ。田臥勇太のNBAデビューに落涙。強烈な映画体験求む!!現在は、なんやかんやとフリーランスな僕です。

古東久人 :  1959年生まれ。1980年代にキネ旬常連投稿から映画ライターへ。 映画雑誌に執筆。編著「相米慎二・映画の断章」(芳賀書店)。 生涯のベストはブニュエルの「皆殺しの天使」と長谷川和彦の「太陽を盗んだ男」。mixiネームは、Dr.コトー。

くぼまどか : 「人生すべてが経験値」をスローガンに、ピアニストからライターへと変身を遂げ、取材記事は元よりコラム・シナリオ、最近では創作活動にも手を染めつつあります。基本的に映画は何でも好きですが、ツボにはまると狂います。「ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還」封切りを観る目的だけでロンドンに飛んだのが自慢。

中沢志乃 :  1972年5月8日、スイス生まれ。小学校時代に映画好きになり友達と劇を作る。一時は別の道を目指すもやはり映画関係の道へ。 5年間、字幕制作に携わった後、2002年4月、映像翻訳者として独立。夢はもちろん世界一の映像翻訳者です。代表作は「ユー・ガット・サーブド」(ソニー・ピクチャーズエンタテインメント)。

山本聡子 :  1973年生まれ。商社OL時代を経て、2000年より編集者を志す。現在は某メーカーにて、広報誌を作りながら、山雑誌のライターも兼業中。座右の銘は「歩くことは生きること」。当面の夢はスペイン、サンティアゴの巡礼道を完歩すること。ラテン人のように、明るく楽しく生きたいな〜と思う今日この頃。映画も男もラテン系が好きです。


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