カザビー ★★★★
この作品を観て、DVを描くのに薄幸顔の女優を使うことが不可欠だと確信しました。 主役の英さんは身体の線が細いし繊細な美しさがあるので暴力が激しくなればなるほど観ていて切なくなり、同時にDVの重さを感じました。
そして同じくDV被害者役のりりぃさんの演技が薄幸クイーンを授与したいぐらいに素晴らしいです! 足を引きずりながらよろよろと歩くりりぃさんは本当にリアルで胸にグサリときました。
それに脚本もしっかりしているので見応え十分。DV予防のために女子は必見です。 |
タカイキヨコ ★★☆
家庭内暴力を振るう方も振るわれる方も、それぞれが抱える心の闇へのもがき方が物足りない気がした。確かにDVの怖さはわかった。 暴力も、愛し合っていた人が命を脅かす存在に豹変する理不尽さも、周囲の無理解さも。現に劇場のどこからかは早い段階からすすり泣く声が聞こえた。
当事者(と勝手に決めつけられないが、経験のない者は腹が立つだけで、とても泣けない)の声は大いに代弁しているのかもしれない。 でも現実に一番怖いのは、加被害者共にこの不幸を認められない苦しみや、それを断ち切ることのできない複雑な人間心理ではないだろうか。
だからこのDVしかり、児童虐待しかり、いじめしかり、この手の問題の着地点を、愛され方を知らない人間が自分の存在を確認するために他人を傷つけ、 さらにそのトラウマは輪廻するという原因だけにしてしまうことに、とても不満を感じるのだ。
だって人を愛することに不器用でない人間がこの世の中にどれだけいるだろう。 むしろ人間の不完全さがもたらす悲しさとその不幸な悪循環から抜け出すことの難しさ(あるいは勇気)とを伝える方が、
この根の深い問題の実態をより理解できるような気がするのだけれど。 |
中村勝則 ★★
社会問題となっているDVに真正面から挑んだ意欲作。エンケンさんは目茶苦茶にキレまくり、 そんな彼の暴力を(本当に)受けることになるヒロイン役・英由佳の体当たり演技も確かにスゴイ! しかし何故かDVの恐怖がなかなか伝わってこない。
後半、反撃に入ったヒロインがネットを使ってその実態を公表するくだりも読めてしまうし、ヒロインのカウンセラー(小沢和義)が、 実はDV加害者だったというオチも取って付けたような感じ。
これなら、いっそホラー的要素を前面に出した方がよかったのでは…!? |
松本透 ★
暴力夫がカラオケで歌うのは、ブルーハーツの名曲中の名曲「人にやさしく」。そして、実は暴力夫の父親が暴力父親だったことが明かされるラスト。 監督はきっとDVという重いテーマを扱いながらも、暴力夫の方に共感を持っていたのではないだろうか。
その証拠に、虐待される妻を撮る時はきわめて客観的だが、反対に情緒的なのは、ガラス越しに妻を見る暴力夫、刑務所で弁護士と向かい合う暴力夫のシーン。 一見DV被害者を描いているようにみせかけ、「かしこい」男たちが情報をうまく整理し「かしこく」撮った、男たち向けの作品である。 |