バックナンバー Vol.28
血と骨
コニー&カーラ
変身
監修:タカイキヨコ
ちょっとアブナイ24時間体験!? TVドラマ「24」トゥエンティ・フォー |
■ ■ ■ |
今さら説明不要なFOX製作のリアルタイム・サスペンス「24」、ただいまサードシーズンのリリース真っ最中。個人的にこのドラマのみどころは「ビッチの饗宴」だと思っております。次から次へとむかつく女が出現しては場をかき乱し、けなげな主人公ジャック・バウアーの人生をカオスへと突き落とします。
まずは「24」といえばこの人、スタイリッシュ悪女のニーナ。可愛い顔して殺すわ殺すわ……ジャックを縛ってキスを強要するシーンなんざ、怖さのあまりテレビの前で絶叫してしまいました。次に(元)大統領夫人シェリー。「全部あなたのためにやったのよ!」という言葉を印籠のごとく振りかざし、ひたすら悪事に奔走。この人、明らかに性根が腐ってます。最後に永遠の反抗期ガール、キム。こんな娘を持ったのがジャックの不幸の最大の元凶です。今シーズンでは何と親のコネでCTUのスタッフに…ゆ、許せん!さらに歴代の彼氏がことごとく不幸に見舞われるという下げマンぶり。1時間に1回は誘拐される習性があるので始末に負えません。…とまぁこんな感じでひたすら恐ろしい女達に翻弄される24時間、体験してみませんか? Mっ気のあるあなたには特にオススメです!
(にしかわたく)
|
|
伊藤洋次 ★★★★★
これほど力のある日本映画が現代で見られるとは! 中途半端なところが全くなく、最後まで張り詰めた緊張が続く重厚な作品。 まるで頭の中に衝撃が直接響くような感じでした。怯える者と脅かす者の対峙、主人公・金俊平が見せつける暴力と、その一方で見せる繊細さや優しさ??
ビートたけしがそれを見事に演じ切っていました。その他の俳優陣の演技も鬼気迫るものがあり、「迫真」という言葉が空しく思えるほど。 個人的には「火垂」(河瀬直美監督)以来ひさびさに見た中村優子が、難しい役どころをしっかり演じていて印象的でした。 |
カザビー ★★★★★
「クイール」の次がこの作品だとは。これだけ真逆のものを撮り分ける崔監督にびっくりですよ!
たけし演じる金俊平は、見た目はひょうきん族の鬼瓦権造だが、中身は凶暴でとにかくヤバイのです。 彼のまわりにある物・人間、全てが容赦なく破壊されていく様には圧倒されっぱなしで惹きこまれました。
抜かりない描写と役者達の体当たりの演技は、観た人の心を揺さぶるはずです。
とりあえず作品を観て究極のエゴというものを確かめてみてください。 |
鍵山直子 ★★☆
歌舞伎には「仁に合う」という言葉があるが、『血と骨』の主人公・金俊平を演じたビートたけしは、背筋が寒くなるほど仁に合っていた。 デップリと突き出した酒浸りの腹、年の割りに筋骨隆々とした腕っぷし、人を射抜くような猜疑心に溢れた目…それはヤン・ソギルが描いた鬼畜男・金俊平そのもの。
自らの体躯まで変え、俊平に挑んだビートたけし。 ドス黒いマグマだまりを腹に抱え、自分に従わない者は暴力でねじ伏せる血の気の多い冷血男を、全身の血潮をたぎらせ熱演していた。
たけしって、こんなにいい役者だったのかぁぁぁ!しかし観終わった後、何か物足りなさを感じた。夫婦の物語はどこへ行った? 妻・英姫は原作ではもっとタフなヤリ手なのに。息子との闘い、そしてその果てに二人が気付く、切っても切れない骨肉の呪縛…。
そういった部分を描いてこそ、金俊平もまた人の子であったのだと、彼が抱える底無しの孤独と哀しみに共鳴できたはず。せっかくの名演が、もったいない。 |
三笠加奈子 ★★☆
タイトルにちょっと“異議あり”。在日朝鮮人1世の話と聞いたから、アボジ(血)とオモニ(骨)の苦難を描いた家族史かと思っていたけど…。 これは、北野武さん演じる金俊平(血)の子作り奮闘記です。妻(骨)たちは完璧に脇。俺の血を残すぞぉ、精をつけるぞぉ、俺の金はよそ者には渡さんぞぉ。
こういうドロドロした男の野心は、女の私には妙な後味しか残りません。「どう、この作品?」と聞かれれば、「壮絶な作品でした」と答えるけど、 「もう一度観たい?」と聞かれれば、あまり観たくない。タイトルがシンプルに『血』だったら、
「すっごい人生を目撃しました。圧巻!」と後味バツグンだったかも。あ、そうか『血と骨』の「と」は、同列の「と and」じゃなくて、脇の「と with」なのか。
『血 with 骨』。「安室奈美恵とスーパーモンキーズ」と同じ使い方の「と」。 |
伊藤洋次 ★★★★
ハチャメチャな展開ながら、主人公の2人を軸に、緩急のついた見事な物語でついつい感情移入してしまいました。 強引な展開でも、ステージで歌って踊る2人を見ているうちに、そんなことは吹っ飛びます。
同じゲイ仲間(?)との絡み、恋模様など、メリハリのあるストーリー構成が秀逸で、2人を追っているギャングがいつの間にかショーにハマってしまう様子など、古典的ながら、観ている側をハッピーにさせてくれます。
|
波多野えり子 ★★★★
「マイ・ビッグ・ファット・ウエディング」で一山当てた、ニア・ヴァルダロス主演&脚本による「お熱いのがお好き」ドラッグクイーン変装バージョン。 ミュージカルの舞台経験やディナーシアターなど、「マイ・ビッグ〜」同様に彼女自身の昔の体験がベースになっているらしい。
コニーとカーラが仕込むコスプレは手作りの学芸会っぽくて苦笑するしかないし、あのどぎついメイクにはもはや絶句! おいおい、歌舞伎も宝塚も真っ青だよ…。なのに、そんなコニー&カーラも、近所のゲイ美女軍団もだんだん愛しく思えてしまうから不思議。
ドタバタ劇に笑わされ、最後には少々ホロリとさせられる、わかっちゃいるけどいい話だよね、的な作品。ミュージカル好きならかなり楽しめるはず。 |
タカイキヨコ ★★★★
昔、周囲の反対を押し切り、女として生きていた日本人ゲイのインタビューを聞いていて、何て男らしい生き方なんだろうと感心したことがある。 この「男らしい」という発想自体、人間が勝手に決めた実態のない枠組みでしかないのだが、私たちはいかに「外からの型」と「本当の自分」との狭間でもがいているものか。
自由を勝ち得たかに見える現代においても、ゲイが堂々とカミングアウトできるアメリカにおいてもなお、自分であることの難しさを誰もが抱えているという、もしかしたら永遠の人間のテーマを笑いと歌に乗せて問いかけてくる本作。
自分とは違う「仮面」をつけることで本音を表現できたり、人気を得たり…という矛盾もまた世の常なのかもしれない。 楽しみながら心もしっとり潤う安心して見られる一作。
もう少し偽の男装を巡るドタバタがあっても…これは欲張りかな!? |
松本透 ★★★★
ユーロスペースを出て、後味の悪さを反芻せずにはいられなかった。ある日突然、降って沸いたようなアクシンデントにより普通の生活が輝かしい過去となる。 自分の存在が、家族の重荷になり彼らを苦しめていく。そして、自分の死により訪れる家族の平安。
グレゴールのように虫になることはなくても、「同じようなことは誰にでも起こり得る」のだという思いが、 後味の悪い理由。雨に始まり雨に終わるこの映画では、奇妙な程登場人物達がシュールだ。
特に変身後のグレゴールをCG等の加工をせずに生身の人間に演じさせ、その奇妙なシュールさが、この映画の後味の悪さを際立たせている。 |
山本聡子 ★★☆
変な映画だ。10代のころに読んだカフカの変身。あの気味悪い小説をどうやって映像化するのかと期待に胸を膨らませて映画館へ…。 なるほど?、こう来たか!と、期待はいい意味で裏切られた。とても悲しい話なのに、可笑しい。
その可笑しさはエヴゲーニイ・ミローノフの驚くべき観察眼に基づく演技力と、周囲のコントなみのオーバーリアクションに帰する。 不気味なBGMに超スローなテンポもまた、初めて小説を読んだときに感じた“異様さ”を再現してくれた。
それにしても、虫の視点で見るこの世はなんて住みにくいものなんでしょう! 虫男に合掌。 |
|
シネ達日誌
「ディファイルド」(シアターコクーン)を観る。図書館に立てこもった男(大沢たかお)と、それを説得しようとする(長塚京三)の二人芝居で、演技力が試される。男の動機は図書館のパソコン化により図書カードがなくなることへのレジスタンス。最近の図書館は図書検索をしやすくなった反面、意外な発見もなくなった。
アジアン・カンフー・ジェネレーション武道館公演。どうしてもいま、見ておきたかったバンドだ。「リライト」は最高のノリだったが、アンコールに持ってきたほうが盛り上がったのではないか。「ソルファ」はロックアルバムの傑作です。(古東久人) |
|
|
にしかわたく : 漫画とイラスト描いて暮らしてます。映画好きが高じて現在『季刊ロゼッターストーン』に「でんぐり映画館」連載中。 映画とコーラとポップコーンがあれば基本的に幸せ。「飲食禁止のスノッブ映画館を打倒する会」主宰(嘘)。
伊藤洋次 : 1977年、長野県生まれ。専門紙の会社員(営業)。メジャー映画はなるべく避け、単館系しかもアジア映画を中心に鑑賞。映画を観て涙したことが一度しかないため、現在は泣ける映画を探索中。
カザビー : 1978年生まれ。映画とお笑いをこよなく愛するOL。好きな監督は周防正行、矢口史靖、SABU、ペドロ・アルモドバル、セドリック・クラピッシュなど。今年、嬉しかった出来事は矢口監督からサインをもらったことと、田口トモロヲ監督「アイデン&ティティ」のエキストラに参加したことです。
鍵山直子 : テレビ&FMラジオの構成作家。現在、i-modeとauの携帯サイトで『シネマ通信』、ボーダフォンで『シネマ・エキスプレス』を担当中。
遅れてきたヒュー・グラント・ファンです。
三笠加奈子 : 1978年、食事の美味しい富岡産婦人科で生まれる。映画とタバコ厳禁の10代を送ったので、20代は反動のシネマ生活に。会いたい芸能人は『完全なる飼育』の小島聖ちゃん。そうそう、私の職業はライター。「キネマ旬報」5月下旬号で『パッション』について執筆。著書『友達より深く楽しむ外国映画の歩き方』(こう書房)。
波多野えり子 : 1979年元旦の翌日に東京・永福町にて誕生。映画好きかつ毒舌な家庭で育ち、「カサブランカ」からB級ホラー作品まで手広く鑑賞する日々を過ごしながら、現在編集者を志しているところ。最近は、まんまと韓国映画とドラマにハマっています。
タカイキヨコ : 1966年愛媛県生まれ。企業勤めの後、1年間のロンドン遊学を経て、フリーの翻訳者に転身。映画のプログラムなどエンタテインメント関連の翻訳をしています。ストレート・プレイ、ミュージカル、バレエ、歌舞伎などの観劇も大好き。
松本透 : 1974年生まれ。ネコ大好き。泡盛大好き。福岡ホークス頑張れ。サッカー日本代表頑張れ。田臥勇太のNBAデビューに落涙。強烈な映画体験求む!!現在は、なんやかんやとフリーランスな僕です。
山本聡子 : 1973年生まれ。2年前に脱OLして編集者を志す。現在は自然の中を歩く本などを製作中。都会の喧騒に疲れると、吸い込まれるように映画館に行く。
見るのはアメリカ映画よりもヨーロッパ映画が多い。映画も男もラテン系が好きです。
古東久人 : 1959年生まれ。交通新聞社勤務。キューブリックで映画に目覚め、1980年代にキネ旬常連投稿から映画ライターへ。 「キネマ旬報」「フリックス」などの映画雑誌に執筆。編著は「相米慎二・映画の断章」(芳賀書店)。
生涯のベスト1はブニュエルの「皆殺しの天使」と長谷川和彦の「太陽を盗んだ男」。
|
|