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バックナンバー Vol.26

モンスター
ヴィレッジ
父、帰る

私もスウィングしちゃいました! 「スウィングガールズ」 ■ ■ ■
 あの「ウォーターボーイズ」から早3年。今回は田舎の女子高生がジャズバンド結成ですよ。 前回同様、吹き替えなしで出演者がガチンコでやってるから感動できるし、とにかく楽しい!!  そんなガールズたちが渋谷でライブをやるというので、ミーハーな私はイベントに行って参りました。 「オーバーザレインボー」「シング・シング・シング」の2曲だけの演奏でしたがみんなでスウィングしてめちゃくちゃ盛り上がりました。 元気になれて青春ノスタルジーに浸れる一本です。ジャズ聴くべ♪
(カザビー)
=1点、=0.5点。最高得点=5点
モンスター

監督:パティ・ジェンキンス
出演:シャーリーズ・セロン、クリスティーナ・リッチ
配給:ギャガGシネマ
http://www.gaga.ne.jp/monster/

波多野えり子  ★★★★☆
 娼婦として暗い世界で生きてきたアイリーンにとって、恋人セルビーは天使だった。 しかし逃避行のストレスが重なるにつれて、彼女のアイリーンに対する依存心はより強大なものに。 そんな彼女を何とか守ろうと、アイリーンは殺人を繰り返すという悪循環にはまっていく。残酷すぎる。 13キロ増量で話題を呼んだC・セロンの作品にかける意欲にも感心したが、印象に残ったのはC・リッチ。 直接もの申したくなる位に、子猫のように純粋な危うさと寄生ともいえる依存心をあわせもつセルビーを見事に演じきっている。 アイリーン・ウォーノスは非人間的なモンスターではなく、愛を貫いたひとりの女性でもあった。 そんなメッセージを完成させたパティ・ジェンキンスの今後に期待。
タカイキヨコ   ★★★★
 次々と人を殺めた罪はけっして許されないことだが、主人公アイリーンの追い込まれた痛々しさがひしひしと伝わってきて、彼女を完全に否定することはできない。 かといって、そう生きるしかなかった社会の犠牲者として擁護することもできない。現実から目をそらし、夢に逃げていたアイリーンはあまりに弱すぎる。 そういう意味で、殺人犯と社会のどちらか一方の肩だけを持つことなく、じつに中立的にこの現代社会の縮図といえる実在の事件を深くえぐっているように思う。 これも監督の視点の確かさと、シャーリーズ・セロンの説得力ある演技と、クリスティーナ・リッチの悪魔のような眼力の賜物だろう。 ただ実際のアイリーンの容姿にこだわるならフランシス・マクドーマンでよかっただろうし(もちろん演技力もあり!)、 あんなに醜く変身して……と下手に努力点を稼ぐことなくセロンらしく「罪深き女の性」を演じてほしかった。
中沢志乃    ★★★★
 怖い!怖かった…。ふー。この映画でアカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞したシャーリーズ・セロンの変貌ぶり(その太りようと顔のシミ!) と渾身の演技にもびっくりだが、内容にも圧倒された。ストーリーは2002年に死刑になった連続殺人犯の実話を基にしているが、 これを見て「無知は罪なり」の言葉の意味を再び噛み締めた。私たちには重罪を犯す人の気持ちを全て分かるキャパもないのに、その人を死刑にするなんて…。 自殺を考えていた彼女が殺人に至った理由は、好きな子と幸せになれる希望が見えてきたから。人の物を奪って生きる、これが彼女の「戦争」だった。 昔、勤めていた人権擁護団体で話し合った死刑廃止論について、平和について、また色々と考えさせられた。
三笠加奈子   ★★★★
 本当の地獄を見た人間ほど騙されやすい。いったい、どうしてなのか? 私はその理由をずーっと考えてきたが、 地球の裏側に住む3歳年上の女の子も同じ答えを探していたらしい。父親から打たれ殴られ蔑まされた女の子、シャリーズ・セロン。 しかし一足早く、彼女は連続殺人鬼アイリーンの中に1つの答えを見つけ出したようだ。
 愛しい恋人セルビーにビーチハウスをプレゼントするため、殺人に手を染めるアイリーン。 かぶれた肌と醜い脂がアイリーンを“モンスター”のように映し出すが、本当の“化け物”が実はセルビーであることに、観客の誰もが気づきはじめる。 セルビーがいつか裏切ることも読めるし、アイリーンだけが馬鹿を見ることも読める。 でも、なぜだろう、アイリーンに扮するシャリーズ・セロンの狂気が爆発していく様を、ゾクゾクしながら見てしまった。 地獄から這い上がってきた人間が、また地獄に落ちていく様を、なんて悔しい現実!なんてファックな世の中!と、ハラハラしながら見てしまった。 アカデミー賞の壇上で、シャリーズは地球上で最も愛するママに「ありがとう」と言って泣いていた。自分を殺そうとした父親を(正当防衛で)撃ってくれたママ。 殺人鬼アイリーンは親子2人が味わった狂気のカタチである。


ヴィレッジ

監督:M.ナイト・シャラマン
出演:ホアキン・フェニックス、エイドリアン・ブロディ
配給:ブエナビスタ
http://www.movies.co.jp/village/

波多野えり子  
★★★
 ラストのどんでん返しを義務付けられた監督M・ナイト・シャマラン。 学生時代にバイト先の映画館で行う試写テストを見て大興奮だった「シックスセンス」はもはや過去。 以降の作品は“予告で期待して、裏切られた映画は?”というテーマで議論すると必ず誰かが挙げるものに。 意外な結末はもう結構と思い、あまり期待をせずに劇場へ。でも、今回はそんなに悪くなかった。 冒頭からラストのオチまで、プロットの流れは明確で、昔大学でよく読まされたアメリカ文学風。ちょっと地味。で も、やっぱりオカルトを意識した宣伝とは大違いだ。A・ブロディやS・ウィーバーなど演技派キャストも充実していたし、 意外なオチというお決まりの約束はやめて、別の視点でアピールしてもよいのでは?
伊藤洋次    ★★
 終わってみれば「なぁ〜んだ」という感じ。19世紀という時代設定には、完全に騙されましたが。 作り方はキレイで、特に前半は面白かったものの、途中から「あれ?なんでそうなるの?」「その展開はちょっと・・・」と疑問に思うことしばしば。 別にコミカルな映画ではないのですが、ここまで来るとむしろ笑いがこらえきれず。そのシリアスな展開とは裏腹に、後半はほとんど笑いながら観ていました。
山本聡子    ★☆
 平穏を絵に描いたような平和な村に不吉な事件が起こる。周囲の森には化け物が住んでいて、絶対に近寄ってはいけないのだが、恋人の命を救うため、 その森に飛び込む勇敢な少女…。まるで子供の冒険映画のような筋書きだが、実は最後に種あかしがある。でも、どうも物語が薄っぺらで、表面的。 人間の心の奥底をどろどろと描いたような映画が好きな私には、ちょっと物足りなかった。 大人が見ないほうが幸せだと思っている世界でも、子供の好奇心に蓋はできない。私だったら、どんなに悲惨な世界でも広い世界を知りたいと思うんだろうなあ。 食料は自給しても、衣服はどうしていたのか、などと取りとめもないことを考えつつ、この村の未来に思いを馳せた。 そうそう、エイドリアン・ブロディの役どころは◎。


父、帰る

監督:アンドレイ・ズビャギンツェフ
俳優:ウラジーミル・ガーリン、イヴァン・ドブロヌラヴォフ
配給:アスミックエース
http://chichi-kaeru.com/

伊藤洋次    ★★★★☆
 まるでモノクロの映画を観ているよう。細かい説明や描写がそぎ落とされ、台詞や画面の力強さがストレートに伝わってくる重厚な作品でした。 監督はロシアの新鋭監督とのこと。この映画を作ったきっかけや背景をぜひ知りたいと思いましたが、 ある雑誌のインタビューで彼は「この映画は客観的に創りあげたもの」と答えていて、その才能の豊かさに驚かされました。 次回作はどんなものになるのか、非常に楽しみです。
鍵山直子    ★★★★
 12年間、どこで何してたのか、いったい何者なのか、何で突然帰ってきたのか…。父親の謎めき具合が実にスリリングで引き込まれた。 父子物語にありがちな大団円も感動の押し売りもないが、余韻、忘れがたさが残る。兄弟を演じた二人の少年の、やけに老成した演技にも拍手。
中沢志乃    ★★★★
 ロシア映画を見たのは初めてかもしれない。ロシアのSF映画なんかも実は結構面白いと聞いてはいたが、この映画は人間ドラマとして異色で面白かった。 12年ぶりに帰ってきて息子たちを旅に誘う父の行動は謎ではあるものの、不器用な“男”である父の息子への愛情、そんな“男”に憧れる長男、 「親の心子知らず」な甘えん坊で頑固な次男、そして私が一番共感できた兄弟の関係が色濃く描かれていて、最後まで飽きることが無かった。 荒涼としたロシアの大地。一種のロードムービーのゆっくりとしたテンポの中に1本のミステリーとテーマがすっと通っていて…お薦め映画です!
シネ達日誌
イラスト  10/11〜17の一週間、世田谷美術館で行われたハロウィンをテーマにしたグループ展「モンスタードキドキ★大パニック展」に参加しました。 来場者数はのべ1000人以上、この手のイベントとしては大成功です。僕はホラー映画をテーマにしたアクリル画を5点出品しました。 「世にも怪奇な物語」「キャットピープル」「悪魔のいけにえ」「ハエ男の恐怖」「デッドゾーン」の5タイトル。 ちょっとマニアックですか? 毎日子供からお年寄りまで、たくさんの人に会えてすごく楽しかったですし、いろいろ勉強にもなりました。 HPに作品の写真をアップしましたので、興味のあるかたはこちらからどうぞ。
http://denguribb.at.infoseek.co.jp/ (にしかわたく)
著者プロフィール

カザビー :  1978年生まれ。映画とお笑いをこよなく愛するOL。好きな監督は周防正行、矢口史靖、SABU、ペドロ・アルモドバル、セドリック・クラピッシュなど。今年、嬉しかった出来事は矢口監督からサインをもらったことと、田口トモロヲ監督「アイデン&ティティ」のエキストラに参加したことです。

波多野えり子 :  1979年元旦の翌日という中途半端な日に東京・永福町にて誕生。現在はブライダル情報誌の編集部で修業中。 映画好きかつ毒舌な家庭で育ち、「カサブランカ」からB級ホラー作品まで手広く鑑賞する日々を過ごす。 最近はエモーショナルな韓国映画やドラマがお気に入り!

タカイキヨコ :  1966年愛媛県生まれ。企業勤めの後、1年間のロンドン遊学を経て、フリーの翻訳者に転身。映画のプログラムなどエンタテインメント関連の翻訳をしています。ストレート・プレイ、ミュージカル、バレエ、歌舞伎などの観劇も大好き。

中沢志乃 :  1972年5月8日、スイス生まれ。小学校時代に映画好きになり友達と劇を作る。一時は別の道を目指すもやはり映画関係の道へ。 5年間、字幕制作に携わった後、2002年4月、映像翻訳者として独立。夢はもちろん世界一の映像翻訳者です。

三笠加奈子 :  1978年、食事の美味しい富岡産婦人科で生まれる。映画とタバコ厳禁の10代を送ったので、20代は反動のシネマ生活に。会いたい芸能人は『完全なる飼育』の小島聖ちゃん。そうそう、私の職業はライター。「キネマ旬報」5月下旬号で『パッション』について執筆。著書『友達より深く楽しむ外国映画の歩き方』(こう書房)。

伊藤洋次 :  1977年、長野県生まれ。専門紙の会社員(営業)。メジャー映画はなるべく避け、単館系しかもアジア映画を中心に鑑賞。映画を観て涙したことが一度しかないため、現在は泣ける映画を探索中。

山本聡子 :  1973年生まれ。2年前に脱OLして編集者を志す。現在は自然の中を歩く本などを製作中。都会の喧騒に疲れると、吸い込まれるように映画館に行く。 見るのはアメリカ映画よりもヨーロッパ映画が多い。映画も男もラテン系が好きです。

鍵山直子 :  テレビ&FMラジオの構成作家。現在、i-modeとauの携帯サイトで『シネマ通信』、ボーダフォンで『シネマ・エキスプレス』を担当中。 遅れてきたヒュー・グラント・ファンです。

にしかわたく :  漫画とイラスト描いて暮らしてます。映画好きが高じて現在『季刊ロゼッターストーン』に「でんぐり映画館」連載中。 映画とコーラとポップコーンがあれば基本的に幸せ。「飲食禁止のスノッブ映画館を打倒する会」主宰(嘘)。

古東久人 :  1959年生まれ。交通新聞社勤務。キューブリックで映画に目覚め、1980年代にキネ旬常連投稿から映画ライターへ。 「キネマ旬報」「フリックス」などの映画雑誌に執筆。編著は「相米慎二・映画の断章」(芳賀書店)。 生涯のベスト1はブニュエルの「皆殺しの天使」と長谷川和彦の「太陽を盗んだ男」。

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