バックナンバー Vol.22
スイミング・プール
ビッグ・フィッシュ
ヴェロニカ・ゲリン
監督は行定勲さんです。絶対に小道具にトリックがあると思っていたら、やっぱり見つけちゃいました♪
今作のこだわりは主人公・朔がラジオの投稿で当てたソニー製ウォークマン。80年代に青春を送った方には、 「なつかしい」の一言かもしれませんが、実はココにスパイスが効いているんです。
私が半日かけて調べたところ、あのモデルは81年発売オレンジ色ヘッドホン同梱の『WU-2』。ところがどうして、物語の設定は1986年なんです。 5年前のモデルですよ。しかも、86年の時点でソニーは同梱イヤホンをインナーイヤー式にチェンジしていました。監督は重大なミスを犯しているんです。
と、思ったら。やっぱり確信犯だったんです。あれはフランス映画『ラ・ブーム』へのオマージュなんです。 青年マシューは恋人ソフィー・マルソーの耳にオレンジ色のヘッドホンかけ、その瞬間、劇場はヘッドホンから流れる主題歌に包まれる。
映画史に残る名シーンです。
まったく、小道具で演出するとは! 行定さんは青春映画の職人ですね。
(三笠加奈子)
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にしかわたく ★★★★☆
ヒット作を作りたい、賞が欲しいと窮屈な映画を撮る監督が多い中、フランソワ・オゾンの映画はいつも一筆書きのようにシンプルで軽やか。 スタイルは毎回変わるけど(絶対遊んでるだろお前)どこを切ってもオゾン印が出てきます。今回はオゾンの2大ミューズ、
リュディヴィーヌ・サニエとシャーロット・ランプリングが初顔合わせ。ランプリングが余裕しゃくしゃくでイヤミな初老女ジャブを放てば、 サニエの若く下品すぎる肢体がすかさずカウンター。火花散りまくってます。これはオゾン版「フレディVSジェイソン」だ。タランティ−ノ亡き今(笑)、
映画監督界のアイドルはオゾンしかいない! |
波多野えり子 ★★★★
「8人の女たち」とは全然違う超セクシーなリュディヴィーヌ・サニエと、女の生々しい感情を見事に出しきったシャーロット・ランプリング、 ふたりの女優に畏敬した。オゾンは女性の持つ「真の女性らしさ」を表現するのがうまい。「真の女性らしさ」というのは結構ドロドロしてたりする。
他人に対する“興味”と“妬み”は紙一重なのかもしれない。女性はいろ〜んな感情を己の中で整理して生きているのだ。ラストの解釈は人によって違うかも。 何が現実で何が虚構か?
何だか合わせ鏡を見ているような気分になった。 |
カザビー ★★★
とにかくピチピチギャル(死語)リュディヴィーヌ・サニエの魅力でいっぱいの映画でした。オゾン作品にしてはちょっと地味で、良く出来てるんですが、 オチまでがとても長くて疲れてしまいました。でもツッコミどころは結構あります。ジュリーが家に連れ込む男がブサイクすぎるとか、
ダンスが微妙にダサい所とか・・・。やっぱりオゾン作品はクセになります。 |
山本聡子 ★★★
南仏の太陽のもとにさらされた、ジュリーのはちきれそうな若々しい体を憎々しげな眼差しで見つめるサラ。(本当に羨ましい体してるんです、これが)。 それがいつの間にか、共犯者へと変わっていく。単純なようでいて、実はとても巧妙なミステリーでした。ぼーっと見てると、最後に痛い目に遭います。
結局、私もよく分からずじまい。あー、もう一度見たい。現実と架空の世界の間に取り残されてしまった感じ。オゾンの策略にまんまとはめられてしまいました。 |
カザビー ★★★★☆
ついにティム・バートンも「ビースト・巨大イカの大逆襲」みたいな作品を撮ったのかと思いきや全然違ってました。超感動ヒューマンファンタジーです。 泣きました。父エドワードが語る奇想天外なホラ話と現実が微妙にシンクロして真実が見え隠れします。そしてラストは涙なくしては観られません。
これから観にいかれる方はハンカチをお忘れなく! |
中沢志乃 ★★★★
お父さんは空想好き。あまりに度が過ぎて、息子はお父さんがウソばかり喋っていると思ってしまう。そのバカ話にはうんざりだ。 でも、一生話し続けるその話には大切な真実が込められていた…。何だか納得。些細な事件、兄弟ゲンカ、はたまた散々な災難だって面白おかしく話せば、
それはみんな楽しい思い出になってしまうもの。お父さんが死ぬ直前、雄大なイマジネーションの大切さに気づく息子に、思わず涙してしまった。 さっすが、バートン! 夫婦愛にも涙です。 |
Kozo ★★★★
基本的に僕はファンタジー映画が嫌いだ。現実の世界のほうが面白いからだ。しかしこの映画は現実的なファンタジー映画で、よくできている映画だと思った。 ストーリーはありがちなんだけど人間やっぱり家族愛には弱いのか?
今、僕の父親も病気がちなのでアルバート・フィニー演じる虚言癖のある父親にダブらせて見た。 もっとも僕の父親は九州男児の典型でほとんどしゃべらず虚言癖もなければ過去の事をしゃべったこともない。
男にとってやはり父親とは何か特別な存在なのだろうか。男である事を少し得した気分にさせてくれた映画だった。 |
鍵山直子 ★★★
人生にもっとユーモアとファンタジーを! この映画の親父みたいに想像力のワンダー・パワーがあれば、人生はハッピーだろうなぁ。 ほんと、映画的な素晴らしいラスト・シーンだった。途中、親父の冒険話が子供の童話みたいにつまらなくてバク睡しちゃっても、
親父がナイス・ガイすぎてムカついても、終わりよければすべて良し! |
小松玲子 ★★★★★
ビートルズみたいな顔した(あるいは髪型)した男の顔だとか、どんより曇った空と灰色の海だとか、どこかさびれた街並みだとか、 故ダイアナを彷彿とさせるK.ブランシェットのヘアスタイルですとか、全編漂うアイリッシュな雰囲気がとても素敵な映画。役者もアイリッシュだとか。
これをみてアイルランドに行きたくなるというのは、正統派な感想ではないと思いますが、世界のグローバル化が叫ばれ、 イギリス映画もフランス映画もなんだかアメリカナイズされているような気がする昨今、この“いかにもっぽい”のはとても大事。内容もとても良いです。 |
タカイキヨコ ★★★★
『ヘヴン』では麻薬の犠牲になった子供たちのために、麻薬売買組織の黒幕を殺そうと試みたケイト・ブランシェットが、 今度はその悪を暴くため果敢に戦うジャーナリストを演じる。毎回作品ごとに異なる顔を見せてくれるケイトのサプライズが楽しみな私は、
強い女にアイルランドの英雄の実話ではあまりに正統すぎてつまんないかなと、いささか心配しながら映画館に向かった。 しかし、凛とした強さに愛らしさも持ち合わせたヴェロニカ・ゲリンを説得力たっぷりに演じるケイトに加え、その勇敢さだけでなく、
家族にだけは見せる弱さや内面の苦悩もしっかり描かれていて、いつしかその世界に引きずりこまれて涙を流してしまった。 これが現実にあったことの重みもずっしり伝えながら、観客を引きつける展開の巧さは、
ハリウッドの超大作(娯楽作)を手がけてきた監督やプロデューサーの手腕のなせるわざなのか。人間の善悪の両面ですごさを見せつけられた。 |
中沢志乃 ★★★★
やっぱり、そうだよね! この映画を見て再確認した。アイルランドの新聞記者、ヴェロニカ・ゲリンはペンの力で麻薬犯罪を阻止しようとして、 犯罪組織に家を襲撃され、彼女自身が撃たれ、殴られる。それでもなお、なんとか自分を奮い立たせて悪に立ち向かう。
「怖い」気持ちを夫以外には決して見せず、「大丈夫、自分は負けない」と己に言い聞かせて…。 人生誰でも怖いことはあるけど、何かを成し遂げる人とはそういう人。実在した彼女の強さと苦悩を感じるにつけ、
音楽を邪魔に感じてしまうくらいの作品だった。 |
伊藤洋次 ★★★★
麻薬犯罪を追う実在の女性ジャーナリストを描いた作品ですが、エンターテイメントとしても完成度が高く見応えあり。 危険と隣り合わせの取材現場と家庭の団らんとの対比や、ラストの襲撃シーンの緊迫感(ただ映画の冒頭の場面はあまり意味がないのでは?)
など定番ながらも巧みな演出が光っていました。脇を固めるアイルランド出身の俳優たちも渋い演技で◎。テーマやストーリーに注目しがちですが、 ぜひその「作り」にもこだわって観てほしい一本です。 |
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シネ達日誌
フランス映画祭横浜(パシフィコ横浜)で、「スターは俺だ!」を鑑賞。初めて参加したこの映画祭は東京国際映画祭よりもアットホームな雰囲気がありました。 映画は物真似歌手を主人公にしたもので、懐かしいM・ポルナレフのそっくりさんも。
来日したベルナール役の主演俳優ブノワ・ポールヴールドのキャラが明るいというのもあったのですが、上映後の質疑応答も和気藹々とした楽しいものでした。 最後に質問というか発言したのがシャンソンを歌っているという日本人で、ブノワから歌えと言われ、舞台に上がって歌うというハプニングもあり。(古東久人) |
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三笠加奈子 : 1978年、食事の美味しい富岡産婦人科で生まれる。映画とタバコ厳禁の10代を送ったので、20代は反動のシネマ生活に。会いたい芸能人は『完全なる飼育』の小島聖ちゃん。そうそう、私の職業はライター。「キネマ旬報」5月下旬号で『パッション』について執筆。著書『友達より深く楽しむ外国映画の歩き方』(こう書房)。
にしかわたく : 漫画とイラスト描いて暮らしてます。映画好きが高じて現在『季刊ロゼッターストーン』に「でんぐり映画館」連載中。 映画とコーラとポップコーンがあれば基本的に幸せ。「飲食禁止のスノッブ映画館を打倒する会」主宰(嘘)。
波多野えり子 : 1979年元旦の翌日という中途半端な日に東京・永福町にて誕生。現在はブライダル情報誌の編集部で修業中。 映画好きかつ毒舌な家庭で育ち、「カサブランカ」からB級ホラー作品まで手広く鑑賞する日々を過ごす。
最近はエモーショナルな韓国映画やドラマがお気に入り!
カザビー : 1978年生まれ。映画とお笑いをこよなく愛するOL。好きな監督は周防正行、矢口史靖、SABU、ペドロ・アルモドバル、セドリック・クラピッシュなど。今年、嬉しかった出来事は矢口監督からサインをもらったことと、田口トモロヲ監督「アイデン&ティティ」のエキストラに参加したことです。
山本聡子 : 1973年生まれ。2年前に脱OLして編集者を志す。現在は自然の中を歩く本などを製作中。都会の喧騒に疲れると、吸い込まれるように映画館に行く。
見るのはアメリカ映画よりもヨーロッパ映画が多い。映画も男もラテン系が好きです。
中沢志乃 : 1972年5月8日、スイス生まれ。小学校時代に映画好きになり友達と劇を作る。一時は別の道を目指すもやはり映画関係の道へ。 5年間、字幕制作に携わった後、2002年4月、映像翻訳者として独立。夢はもちろん世界一の映像翻訳者です。
Kozo : 1970年、鹿児島生まれ。故·我王銀次主宰の劇団「大阪バトルロイヤル」で俳優として映画、TVに出演。 L.A.C.C.映画科卒業後C.S.U.L.B.に編入しスピルバーグと一緒に卒業。現在は林海象監督と”Cinema
Showcase”を主宰し毎月、短編映画を上映中。
鍵山直子 : テレビ&FMラジオの構成作家。現在、i-modeとauの携帯サイトで『シネマ通信』、ボーダフォンで『シネマ・エキスプレス』を担当中。
遅れてきたヒュー・グラント・ファンです。
小松玲子 : 1970年生まれ。雑誌・新聞を中心にフリーライターとして活動中。わが心のベストシネマは『さらば我が愛〜覇王別姫』。作家になったら、ああゆう愛憎ものが書けるようになりたい。売れっ子ライター目指して、現在まだ夢の途中。
タカイキヨコ : 1966年愛媛県生まれ。企業勤めの後、1年間のロンドン遊学を経て、フリーの翻訳者に転身。映画のプログラムなどエンタテインメント関連の翻訳をしています。ストレート・プレイ、ミュージカル、バレエ、歌舞伎などの観劇も大好き。
伊藤洋次 : 1977年、長野県生まれ。専門紙の会社員(営業)。メジャー映画はなるべく避け、単館系しかもアジア映画を中心に鑑賞。映画を観て涙したことが一度しかないため、現在は泣ける映画を探索中。
古東久人 : 1959年生まれ。交通新聞社勤務。キューブリックで映画に目覚め、1980年代にキネ旬常連投稿から映画ライターへ。 「キネマ旬報」「フリックス」などの映画雑誌に執筆。編著は「相米慎二・映画の断章」(芳賀書店)。
生涯のベスト1はブニュエルの「皆殺しの天使」と長谷川和彦の「太陽を盗んだ男」。
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