バックナンバー Vol.21
ロスト・イン・トランスレーション
イン・ザ・カット
コールド・マウンテン
プリナップをめぐり、男と女が騙しあう痛快ラブ・コメディー。笑いと皮肉のピリリ加減が、コーエン兄弟の名駄作『未来は今』を彷彿とさせます。
が、感想よりもプリナップについて一言。これは結婚前の男女が交わす離婚後の財産分与契約です。いい例が目の前にありますね。 そう、主演のキャサリン・ゼタ・ジョーンズも、夫との間にプリナップを結んでいます。
それは‥≪280万ドル×結婚した年数=ゼタ嬢への慰謝料≫‥結婚記念日を迎えるたびに、ほくそ笑むゼタ嬢の顔が浮かびますが。 まあ、この契約を金持ちの“えげつなさ”ととるか、はたまた“愛の証”ととるか、それは個人の恋愛観にかかるわけです。
皆さんはどう思いますか? キーワードはプリナップです。
(三笠加奈子)
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カザビー ★★★★
ビル・マーレイかっこ良すぎ!くたびれた映画スター役はまさにハマリ役で、表情や台詞のひとつひとつが味わい深く物寂しい。 そんな渋さを持ちつつ、カラオケを歌ってみたり、「Matthew's
BestHitTV」でマシュー南(藤井隆)と日米トップコメディアン夢の競演を果たす等、 ビル好きにとってはレア映像満載なわけで彼の魅力をたっぷりと堪能できる。
そして日本人出演者としてHIROMIX,ダイヤモンド☆ユカイ、藤原ヒロシが出てたりするのでどのシーンで登場するか探してみるのも面白いかも。 心の隙間を埋めてくれる、そんな映画だった。 |
タカイキヨコ ★★★★
旅に出ると、何気ない景色の中に思わず自分を振り返ることがある。自分と無関係の空間、自分を束縛しない時間に身を置くことで、 自分の素が浮き彫りにされる、そんな感じだ。そんな孤独な素が引き寄せる魂の交わり。
他人と心を通わせることのできる救いと、その心のふれあいがつかの間しか続かない切なさを、東京で暮らす私も、 ソフィアの生み出すトーキョーという独特の異空間を体験しながら追随していた。
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にしかわたく ★★★★
ビル・マーレイとスカーレット・ヨハンソンという組み合わせは見るまでかなり謎だったのですが、いや、よかったですねー。 特にビル・マーレイは「彼が出演しなければこの映画は撮らなかった」という監督の言葉も納得の名演。
中年の情けなさと魅力の両方を繊細に表現していて、非常に説得力がありました。 海外の監督が撮った日本が、こんなに自然に見えたのも初めての経験。 スカーレット・ヨハンソンがホテルの部屋から窓の向こうを一人眺めているシーンが好きです。東京の風景ってなんか悲しいですね。 |
中沢志乃 ★★★
混沌としたトーキョー。歌舞伎町の喧騒。最初は、いわゆる“白人”が日本を小ばかにした映画では…と不安になった。 途中までは笑う反面ムッとしてしまうような場面もあり、「私もやっぱり日本人ねー」なんて実感していたりした。
でも後半になって「子供が生まれた時は、今後の人生どうなるんだと怖かった」という言葉に共感しちゃったり何やら納得することが増えてきて、 最後は「なるほどー!」。人生に迷う男が混迷のトーキョーを抜け出す時、東京の空に1人ではない自分の心を見つける感じ。 |
タカイキヨコ ★★★
肉体が解放されていくにつれて、むき出しになっていく欲望、過敏になる感覚。愛しさが増していく中で、その人への疑いもさらに膨らんでいく恐怖。 自分の中から突き上げてくる欲望や、振り払うことのできない取り憑かれた疑念ほど、人を狂わせ、人をおびえさせるものはないと痛感しながら、
スクリーンに釘付けになっていた。 |
山本聡子 ★★★
怖くて、エロくて、ずーっとドキドキしてしまった。とにかく映画全体の空気が、いかにも“危険な香り”なんですよね。 テーマは“女性のサガ”だそうですが、確かに女性による、女性のための映画かも。
一緒に行った友人(♂)は「一体、何がいいたいんじゃ?」と思ったようです。でも女性ならふむふむと、共感できる部分があるはず。 普段は人に見せない、カーテンで閉ざされた女心の一角を、ちらちらとカーテンをあけて見せていく、そんな感じがいいですね。
ピアノレッスンよりもさらにどろどろとした感じで。 でもラストのメグはかっこよくて、「セーラー服と機関銃」の薬師丸ひろ子が「か・い・か・ん」って呟くシーンを思い出してしまいました。 |
鍵山直子 ★
あ〜眠かった! スイート・パイ、メグ・ライアンの初めての大胆Hシーンを観ても、血みどろの猟奇殺人が起こっても、全然コーフンしない! 低血圧な映像、マッタリした演出。サスペンスなのにまるで緩急がないのだ。さらにオチもいただけない。最初から最後まで眠いの一言に尽きた。
そんなわけで、眠気覚ましには断然「スクール・オブ・ロック」!ジャック・ブラック、最高! |
小松玲子 ★★★★★
誰にでも忘れられない人がいる……。そんな忘れられない人にいつか再会できるという、 まるでファンタジーのような映画かと思っていたらラストで裏切られました。
仮に裏切られなくてもいい映画だったと思う。脱走兵として郷里までの道のりを切々と旅する男と、いつか帰る日をあてもなく待ち続ける女。 南北戦争を舞台にしているのだが、実はとても現代的な作品。
戦争はいま中東で現実に行われているわけだし、義勇兵ティーグの一方的な正義はそのままブッシュのそれを思わせ、 “男手なくしてどうやって生きていったらいーの?!”という女性たちの苦悩は、そのまま現代の独身女性の悩みを彷彿とさせる。
壮大なるメロドラマは、現代的なテーマを逡巡しながら、いつかきっと忘れられないひとに再会できるというファンタジー性で綴られていく。 なんだかとても面白かった作品。音楽の美しさにも注目!
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にしかわたく ★★★☆
ゆるいです。だらだらしてます。話にリアリティないです。欠点だらけだと思うんですが、どーも嫌いになれない映画でした。 「イングリッシュ・ペイシェント」もそうでしたが、この監督の映画って基本的に語り物なんですよね。彼女訪ねて三千里。
ジュード・ロウとニコ−ル・キッドマンの純愛は美男美女すぎて全然感情移入できませんでしたが、 道中いろんなキャラクター(結構豪華キャストだったりする)と出会って別れて、という素朴な作りが「銀河鉄道999」みたいでほんわかしちゃいました。
この作品でオスカー取ったレニー・ゼルヴェガーはまぁ普通かな。おいしい役なのでちょっと辛口で。 南部訛りでの演技だったので、英語わかる人ならもっと良さがわかるのかも。
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波多野えり子 ★★★☆
21世紀の「風と共に去りぬ」というのは少々大袈裟だけど、今回この作品のポスターに何だか心惹かれていた。 雪山を背景に口づけを交わすふたりが中心となったシンプルなものなんだけど、ナチュラルな統一感があって、淡く美しい出来栄え。
ちょっと「冬ソナ」系(=昔風で懐かしい感じ)だ。南北戦争、親子愛、友情、そして運命的な恋。 いかにも映画にしやすい材料がすべて揃っていて、それが丹念に創り上げられたということがよくわかる。
久しぶりに映画らしい映画をみた。出身はバラバラだが、今売れっ子のニコール、ジュード、レニーの3人組。 彼らを見ていたら、「演じる」仕事って面白そうだなとちょっと思ってしまった。 |
鍵山直子 ★★★
戦争によって離れ離れになりながらも、純愛を貫くジュードとニコール。 日本人的には正直ピンと来ない南北戦争を題材に、ベタなメロドラマが繰り広げられる。 ストーリーは予定調和だけど、予測に反していたのはジュード・ロウの美しさ!
ジュードのマジカル・ビューティー効果で、最後にはベタなドラマが輝きを持って、胸に迫って来るから不思議。 俳優たちのプレゼンスと技量で魅せるスター映画。 |
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シネ達日誌
東京・下北沢のシネマアートン下北沢の「はじめのいっぽ〜PFFライブラリー傑作選」に行ってきました! 「PFF(=ぴあフィルムフェスティバル)」は1977年(私が生まれた年!)から始まった自主製作映画中心の映画祭で、
今年で26回目。現在公開中の「バーバー吉野」(荻上直子監督)は、01年にPFFアワードを受賞し、その第13回スカラシップ作品でもあります。 過去に入選し、今も活躍中の監督さんもたくさんいて、どの作品もなかなかのレベル。
観た中では「ユキがロックを棄てた夏」(長崎俊一監督・78年)、一般公開もされた「鬼畜大宴会」(熊切和嘉監督・98年)が面白かったです。 その才能や完成度の高さに「うーん、うまいなぁ」と、ひとり唸りながら観ていました。(伊藤洋次)
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三笠加奈子 : 1978年、食事の美味しい富岡産婦人科で生まれる。映画とタバコ厳禁の10代を送ったので、20代は反動のシネマ生活に。会いたい芸能人は『完全なる飼育』の小島聖ちゃん。そうそう、私の職業はライター。「キネマ旬報」5月下旬号で『パッション』について執筆。著書『友達より深く楽しむ外国映画の歩き方』(こう書房)。
カザビー : 1978年生まれ。映画とお笑いをこよなく愛するOL。好きな監督は周防正行、矢口史靖、SABU、ペドロ・アルモドバル、セドリック・クラピッシュなど。今年、嬉しかった出来事は矢口監督からサインをもらったことと、田口トモロヲ監督「アイデン&ティティ」のエキストラに参加したことです。
タカイキヨコ : 1966年、愛媛生まれ。6年前に脱サラし、映画を中心としたエンタテインメント関連のフリーの翻訳者に。泣けて語れる映画が大好き。
にしかわたく : 漫画とイラスト描いて暮らしてます。映画好きが高じて現在『季刊ロゼッターストーン』に「でんぐり映画館」連載中。 映画とコーラとポップコーンがあれば基本的に幸せ。「飲食禁止のスノッブ映画館を打倒する会」主宰(嘘)。
中沢志乃 : 1972年5月8日、スイス生まれ。小学校時代に映画好きになり友達と劇を作る。一時は別の道を目指すもやはり映画関係の道へ。 5年間、字幕制作に携わった後、2002年4月、映像翻訳者として独立。夢はもちろん世界一の映像翻訳者です。
山本聡子 : 1973年生まれ。2年前に脱OLして編集者を志す。現在は自然の中を歩く本などを製作中。都会の喧騒に疲れると、吸い込まれるように映画館に行く。
見るのはアメリカ映画よりもヨーロッパ映画が多い。映画も男もラテン系が好きです。
鍵山直子 : テレビ&FMラジオの構成作家。現在、i-modeとauの携帯サイトで『シネマ通信』、ボーダフォンで『シネマ・エキスプレス』を担当中。
小松玲子 : 1970年生まれ。雑誌・新聞を中心にフリーライターとして活動中。わが心のベストシネマは『さらば我が愛〜覇王別姫』。作家になったら、ああゆう愛憎ものが書けるようになりたい。売れっ子ライター目指して、現在まだ夢の途中。
波多野えり子 : 1979年元旦の翌日という中途半端な日に東京・永福町にて誕生。現在はブライダル情報誌の編集部で修業中。 映画好きかつ毒舌な家庭で育ち、「カサブランカ」からB級ホラー作品まで手広く鑑賞する日々を過ごす。
最近はエモーショナルな韓国映画やドラマがお気に入り!
伊藤洋次 : 1977年、長野県生まれ。専門紙の会社員(営業)。メジャー映画はなるべく避け、単館系しかもアジア映画を中心に鑑賞。映画を観て涙したことが一度しかないため、現在は泣ける映画を探索中。
古東久人 : 1959年生まれ。交通新聞社勤務。キューブリックで映画に目覚め、1980年代にキネ旬常連投稿から映画ライターへ。 「キネマ旬報」「フリックス」などの映画雑誌に執筆。編著は「相米慎二・映画の断章」(芳賀書店)。
生涯のベスト1はブニュエルの「皆殺しの天使」と長谷川和彦の「太陽を盗んだ男」。
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