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バックナンバー Vol.17

アイデン&ティティ
ミッションクレオパトラ
パリ・ルーブル美術館の秘密

「HAZAN」〜陶芸家・板谷波山の物語〜 ■ ■ ■
 陶芸家というと、窯焼けした顔で「これじゃなーい!」と叫びながら不出来の壺とか茶碗とかを地面に両手で叩きつけるような、そんなイメージを持つあなた。 しかし、波山は違う。カナヅチで、庭のすみっこにしゃがんで、コツコツと静かに失敗作を壊します。
 一流の芸術家とはこうあるべきだ!という、確信犯的な彼の行動が美しくもあり、ひねくれ者の私にはすこーしだけ嫌味でもあり、しかしこれは、彼のその後の成功を知る後世の人間だから思うことなのだろうか。
 「HAZAN」は、あまり欲張らずに、生涯の中の取り上げる年数も、そしてテーマも絞ったところがよかった。 そして、制作者の意図がそこにあるのかどうかわかりませんが、貧乏にもめげずにがんばったから報われた、うう、 美しい…なんていう因果応報みたいな話じゃあなくて、波山は貧乏なんかどうでもよくて、焼き物が作りたくて、面白くて、その波山の純粋な魂が、 あの美しい作品を生んだのであって、 夫婦愛も清貧も美しいけれども、彼を駆り立てていたのは、芸術に対する一途な思いだったのだ。
 しかし奥さんはたまらない…。そう、奥さんと子供が文句を言わずに信じてついて来てくれる、この環境こそが素晴らしいですね。 波山の妻まるのようにはなれない、と思う私であった。
(岸本まい)
=1点、=0.5点。最高得点=5点
アイデン&ティティ

監督:田口トモロヲ
出演:峯田和伸、麻生久美子、中村獅童
アイデン&ティティ

カザビー    
★★★★★
劇中「大人の悩みに子どもの涙」という曲を主人公中島がライブで歌うシーンがある。 この曲は原作者みうらじゅん氏が大人になってもまだ青春というものを諦めきれない自分の心情を書いたものだそうだ。 この映画を観ると、どうしてみうら氏が青春ノイローゼになってしまったかが痛いぐらい分かってしまう。 理想と現実の間で悩み苦しみながらもマイロックを捜し求める中島の姿がとてもリアルに感じられてせつなかった。
にしかわたく  ★★★★★
ちょー傑作ぅー!こんな熱い青春音楽映画、今まで日本にあったでしょうか。まさにロック版「ドラえもん」。みうじゅんファンもこれなら納得です。 クドカンの相変わらずそつのない脚色と、初監督・トモロヲのストレートすぎる演出が奇跡のベストマッチ。 キャストも音楽も完璧だ!ラストのボブ・ディラン「Like A Rolling Stone」が心にしみる。映画館を出てからじわじわ来ます。久々に感動した。 クリエイターの人は必見。
カオリ     ★★★★
少々クサい青春映画だが、感情移入出来る作品だった。 理想と現実のギャップ、 周囲の目に悩まされながらも、どこまでもピュアにロックを追求する主人公に心 を打たされずにはいられない。 妥協や打算のないその姿は、社会に出て熱い気持ちを忘れかけた大人達に大切な何かを訴えかけている。 今ある自分を見つめ直す機会に恵まれた、貴重な一本だった。
古東久人   ★★★★
田口トモロヲが普通にイイ映画を撮った。盟友みうらじゅんの原作だけど、仲間うちといったノリでなく、客観的な視点で描いているのがとてもいい。 ケラの 『1980』よりよほど80年代の雰囲気は出ている。狂言回し的役割のボブ・ディランの存在も大きい(原作にあるキャラだけど)。 バンドの実態はかなりリアルに描かれている。イカ天に出たバンドの話はいろいろ聞いているが、メジャーデビュー直前で空中分解したバンドもある。 現実はさまざまに厳しいのだ。


ミッションクレオパトラ

監督:アラン・シャバ
出演:モニカ・ベルッチ、ジェラール・ドパルデュー
ミッションクレオパトラ

カザビー    
★★★☆
このおバカ映画に60億円かけたらしい。こうゆう無駄遣いすごく大好き。 まず第一に紅白の小林幸子に負けないぐらいのモニカ・ベルッチ扮するクレオパトラの衣装がすごいしデカイ! そして「アメリ」で八百屋の店員をやっていたフランスのジミー大西ことジャメル・ドゥブーズが大活躍している。 VFXあり、映画のパ ロディあり、歴史ギャグありでゆるい感じで楽しめる。
増田統     ★★
兼監督の仏人アラン・シャバがお調子者のシーザーならぬセザールを演じ、伊人モニカ・ベルッチがクレオパトラ役でその愛人を扱き下ろす。 そんな内輪受けの 映画だ。日本人が笑う必然性はまったくない。主演スターはもちろん傍役までタイプキャストの可笑しさだからだ。 敏腕デザイナー役のジャメルが不自由な右手 をギャグのネタにするのも、エマ・デュ・コーヌがシーザーの秘書役で愛人然と華を添えるのも、 《レ・ニュル》のシャンタル・ロビーがカルタパス役で気丈夫ぶりを発揮するのも、 労働争議の先頭に立つイザベル・ナンティが例によって機関銃のごとく台詞をまくし立てるのも、判る人だけ、特権意識に浸って笑えばいい。 セ・ル・シネマ・フランセ!パロディでありながら、かくもゴージャスなクレオパトラを演れるのは今、モニカだけ、それさえ実感できれば充分なのだ。


パリ・ルーブル美術館の秘密

監督:ニコラ・フィリベール
ドキュメンタリー
パリ・ルーブル美術館の秘密

高野麻結子  
★★★☆
学芸員の一人が言う。「ルーブルは、何度でも参照する大きな書物のようなものだと思う」。 35万点の作品を擁する(見学だけで一週間はかかるという)、この場所に訪れた人は百科事典の中に潜り込んだように、 ゴヤの前で立ち止まり、サモトラケのニケを仰ぎ、未見の作家を発見する。 つまらないものも興味深いものも含めて、開くたびに思いもかけない言葉が飛び込んでくる書物のように。 本来主役の美術作品がこの映画では脇役となり、舞台裏の人々が表に立つ。 淡々としてしかありえない、その舞台裏を見て改めてルーブルに足を運びたくなる、そんな作品だと思う。
中沢志乃   ★★
私は美術館に割りと行くほうだと思う。旅先では、必ず1つか多ければ3つ程の美術館に行く。 ルーヴル美術館は久しく行っていないが、この映画では滅多に見 られない美術館の裏が見られた。 思えば当然だが大きな絵画が「巻かれて」運ばれるのに驚いたし、絵画を陳列する際の配置で絵の印象も変わるのだと改めて納得した。 絵を修復してしまったら、それは果たして元の絵と見て良いのかも考えてしまったし…。 欲を言えば、誇り高い美術館スタッフがまるで生きているような彫刻や絵画を人々により良く見せようとするその動機を、やはり聞いて欲しかったが、 そこで私も、人は何故美術館に行くのか考えた。突き詰めると、やは り「自分探し」の行為なのかしら…? 美術館の楽しみ方が少し変わるかもしれない作品。
イラストコトー日誌
1月10日。恒例、沢田研二・正月コンサート(渋谷公会堂)。「サムライ」「あなたに今夜はワインをふりかけ」「素肌に星を散りばめて」などで盛り上がる。 今年は映画『eiko』にも出演。カラオケでジュリーになり切る。1月14日。第6回東西落語研鑽会(よみうりホール)。出演は桂文珍、林家こぶ平、春風亭小朝、柳家喜多八、桂雀々。今年はもっと落語を観たい。
(古東久人)
著者プロフィール

岸本まい : 1974年生まれ。出版社勤務。父が陶芸家である影響もあり、美術鑑賞は好き。だが造詣は深くない。数年前、旅先の美術館で波山展を見て、その美しさに感動する。好きなゲイジュツカはフェルメール、有元利夫、そして赤瀬川源平。

カザビー :  1978年生まれ。映画とお笑いをこよなく愛するOL。好きな監督は周防正行、矢口史靖、SABU、ペドロ・アルモドバル、セドリック・クラピッシュなど。今年、嬉しかった出来事は矢口監督からサインをもらったことと、田口トモロヲ監督「アイデン&ティティ」のエキストラに参加したことです。

にしかわたく :  漫画とイラスト描いて暮らしてます。映画好きが高じて現在『季刊ロゼッターストーン』に「でんぐり映画館」連載中。 映画とコーラとポップコーンがあれば基本的に幸せ。「飲食禁止のスノッブ映画館を打倒する会」主宰(嘘)。

カオリ :  1978生まれ。映画と音楽鑑賞が趣味の帰国子女(でも日本人学校だったのでしゃべれません、笑)。掘り出し映画発掘の喜びを感じるミニシアター系の映画が好きです。

古東久人 :  1959年生まれ。某出版社勤務。キューブリックで映画に目覚め、1980年代にキネ旬常連投稿から映画ライターへ。 「キネマ旬報」「フリックス」などの映画雑誌に執筆。編著は「相米慎二・映画の断章」(芳賀書店)。 生涯のベスト1はブニュエルの「皆殺しの天使」と長谷川和彦の「太陽を盗んだ男」。「皆殺しの天使」のDVDをぜひ出して欲しい!

増田統 : 1967年、大阪市生まれ。高校時から映画に嵌り、大学入学と同時に上京。卒業後は、 映画雑誌「FLIX」編集部を経て、’97年よりフリーに。 フランス映画をこよなく愛するが、最近はアジア映画に浮気心を刺激されている。

高野麻結子 :  1976年横浜生まれ。編集者(助走中)。 専門書店のガイドブック製作中です。本も映画も横丁の飲み屋も、引き返そうかな、と思ったら、もう一歩入るとキラリと輝くモノに出会えるみたいですよ。喜びもときめきも幾歳月。

中沢志乃 :  1972年5月8日、スイス生まれ。小学校時代に映画好きになり友達と劇を作る。一時は別の道を目指すもやはり映画関係の道へ。 5年間、字幕制作に携わった後、2002年4月、映像翻訳者として独立。夢はもちろん世界一の映像翻訳者です。

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