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バックナンバー Vol.12

マイ・ビッグ・ファット・ウェディング
セクレタリー
永遠のマリア・カラス

「蒸発旅日記」 ■ ■ ■
こういう映画は苦手だなぁと思いながらも、この映画独自の世界に入り込まされた。
ギトギトした色彩の中に浮き出る主人公の存在がモノクロで監督と美術監督によって完璧に創られた空間との接点を見いだせないのが面白く、 それが湿り気をもってストーリーとうまくマッチしていた所がすばらしいのだが、その完璧さが逆に窮屈に感じる場面があったので、 どこか雰囲気を崩すというかテンポを変えてもらえるとよかった。
世界は日本映画にマニアックさしか求めていない現在、この映画は大事にしなれればいけない。(Kozo)
=1点、=0.5点。最高得点=5点
マイ・ビッグ・ファット・ウェディング

監督:ジョエル・ズウィック
出演:ニア・ヴァルダロス、ジョン・コーベット

中嶋美智   
★★★★
ギリシャ系の大家族で暮らすちょっといけてない30歳独身娘が幸せな結婚に至るまでのどたばたコメディー。 この作品のテーマは「家族」。家族を大切に思う心はどこの国の人々も同じこと。 しかし、核家族化がすすむ現代の日本やアメリでは「大家族」で生活する人は少なく、このような暮らしをうらやましいと思う人々の気持ちが、 この映画のアメリカでの大ヒットにつながったのではないでしょうか。 子供が生まれて繰り返される「家族」の繁栄ぶりをほくそ笑む作者の顔がみえるよう。
にしかわたく ★★★☆
原題は「MY BIG FAT GREEK WEDDING」。邦題でカットされた「GREEK」がこの映画の肝。
ラブコメとしてはどこを取っても中の上の出来だけど、ギリシャ系アメリカ人を描いたことがこの映画の一番の個性になっている。 見る前は「こんなアントニオ猪木顔の女優の映画見る気せんなー」と思っていたが、そこが映画の魔法っちゅうやつで、だんだん可愛く見えてくるから不思議。 アメリカ人って保守的なように見えて、こういうマイノリティーのお話大好きなんですね。面白い国だぁ。
波多野えり子 ★★★
日本では、当人たちが中心となって準備し、レストランやゲストハウスでこじんまりとしたパーティを行うのが最近の人気スタイル。 これらのパーティには“アットホーム”という表現がツキモノだが、家族みんなが精一杯関わってくれる彼らの結婚式こそ、真の“アットホームウエディング”では? ギリシャ人の結婚観という、私たちにはあまり縁のないテーマでも、ストーリー自体は典型的なラブコメディなので誰でも見やすいはず。 ノーと言わないダンナ様を演じるジョン・コーベットのキャスティングが◎。ドラマ「SEX AND THE CITY」でも包み込むような笑顔を振りまいていてカッコイイ。 だから、続編ドラマの配役が彼だけ変わってしまってかなり残念。
山本聡子   ★★★
これを見ると結婚したくなると評判の映画だが、私の場合、結婚って面倒くさいのねーと再確認。 古風な家庭で育ったギリシャ人とそうでない人との結婚には障害がたくさん。なかなかわかり合えない異文化の家庭だが、やはり最後は「愛は人種を超える」。 よく聞くテーマだが、テンポの良さと、お祭り好きでいつも食べて飲んでいればハッピーなラテン系家族の様子がなかなか笑えた。 そして、主人公のニア・ヴァロウが本当に魅力的。一昔前の日本のように、父親がどかんと腰を据えた家から自立し、自らの手で幸福を掴んだ、 彼女のパワーが溢れる映画だ。


セクレタリー

監督:ステーブン・シャインバーグ
出演:マギー・ギレンホール、ジェームズ・スペイダー

中沢志乃   
★★★★
SMの人というのは基本的には単なる変態…だと今まで思っていたが、この映画を見て「なるほどー」と思えた。 物理的に傷付け傷付けられることに愛情を感じるポイントは、必要以上は傷付けない、ある一線を守っていることにあるのだろうか。 本当のSMの人に「ちっがーう!」と言われそうなので性癖についての分析は避けるが、この映画はそれよりも自分を認め、 認められて生きることの喜びを描いたなかなか素敵な映画。最後のリーの「何よー。いけない?」と言っているような目が印象的だった。
にしかわたく ★★★
一言で言うと「変態だってラブコメしたいのだ!」映画。好きですよ、こういうの。塔に幽閉された変態お姫様。そこへ白い馬に乗った変態王子登場。 2人は一目見てお互いに恋に落ちるのであった・・・てね。しかし逆に言うとこの映画、変態行為以外はすんごい平凡。 主演の2人も「地か?」って感じで楽しそうに演技してるんだけど、ぴったりはまり過ぎてて新鮮さに欠けるように感じました。 サンダンス発ということで期待してたんですが、ちょっと若さがないかな。
波多野えり子 ★★★
社会になじめないイケテない女の子が徐々に変わって、自分らしい生き方と理想の男性を見つける。基本「マイ・ビッグ・ファット・ウエディング」系。 とはいえ、主人公のふたりは「マイ・ビッグ・ファット…」とはタイプの異なるマニアック系。 鎖で体の自由を奪われたまま、黙々と仕事する秘書が現れるファーストシーンは珍しいモノを観賞する目で見ていた。 しかし、偏屈弁護士とマゾ秘書の主従関係が、物語の後半で徐々に変わっていく様子は意外にもデリケート。 変態エピソードはさておき、男女それぞれの視点にあわせた目で見て楽しむのもよいかもしれない。 公式サイトが可愛いので、一度チェックしてみたらどうでしょう。


永遠のマリア・カラス

監督:フランコ・ゼフィレッリ
出演:ファニー・アルダン、ジェレミー・アイアンズ

中沢志乃   
★★★
劇場がシャンテシネから座席数の多いみゆき座に変わり、「これはきっとオペラファンのおば様方にはこたえられない作品なのね」と思い、楽しみに見た。 往年のオペラ歌手、カラスのスランプからの脱出を描いた真実の物語だと思って…。ところが、ところが! 最後のカラスの決断とクレジット後の(帰る人もいるクレジット後ですよ!)のひと言にはビックリ仰天!「マジで!?」それまでの感動がふっとんだ。 本当のカラスの歌声とファニー・アルダンの美しさ、演技には感極まるものがあるが、いやー、心して挑もう。 (見終わってからカラスと監督のエピソードを聞き、映画のエンディングに納得しました!)
増田統    ★★☆
伝説的オペラ歌手マリア・カラスの最晩年を描きながらもこの映画は、芸術家として決して非凡とはいえなかった監督フランコ・ゼフィレッリの青春の名惜を物語っている。 彼自身、自伝でカラスに振り回された日々を生々しく綴っているが、本作で彼自身を思わせる美青年好みの男を音楽プロモーターと設定したのは、 さながら裏方として孤高のカリスマ的アーティストと同時代を生きた心理が影響しているからだろう。 現在の肉体と過去の美声を重ねあわせる手法に、さほど映画的興趣は抱かないが、当時カラス主演で撮りたかったであろう映画『カルメン』を、 ファニー・アルダンの肉体という二重のフィルターを通すことで、永年の夢を叶えた老ゼフィレッリの執念。 そこには、イタリア映画の黄金時代に身を浸しながら、ハリウッドの商業監督として生きた彼の恨みが見え隠れする。
イラスト編集雑記
上半期といってももう9月が目前ですが、私が見たベスト作品を順不同で披露。外国映画は「トーク・トゥ・ハー」「過去のない男」 「ボウリング・フォー・コロンバイン」「シティ・オブ・ゴッド」「戦場のピアニスト」「猟奇的な彼女」「24アワー・パーティ・ピープル」「藍色夏恋」、 日本映画は「ぼくんち」「青の炎」「蒸発旅日記」といったところ。見逃している作品も多々ありますが、今年は結構、充実している作品がそろっていると思います。(古東久人)
著者プロフィール

Kozo :  1970年、鹿児島生まれ。故・我王銀次主宰の劇団「大阪バトルロイヤル」で俳優として映画、TVに出演。 L.A.C.C.映画科卒業後C.S.U.L.B.に編入しスピルバーグと一緒に卒業。現在は林海象監督と”Cinema Showcase”を主宰し毎月、短編映画を上映中。

中嶋美智 :  映画字幕に関わって約3年。悲しいかな、映画館でもついつい字幕にばかり目がいってしまう。 好きな映画は「フォレスト・ガンプ」「ブレードランナー」。

にしかわたく :  漫画とイラスト描いて暮らしてます。映画好きが高じて現在『季刊ロゼッターストーン』に「でんぐり映画館」連載中。 映画とコーラとポップコーンがあれば基本的に幸せ。「飲食禁止のスノッブ映画館を打倒する会」主宰(嘘)。

波多野えり子 :  1979年元旦の翌日という中途半端な日に東京・永福町にて誕生。現在はブライダル情報誌の編集部で修業中。 映画好きかつ毒舌な家庭で育ち、「カサブランカ」からB級ホラー作品まで手広く鑑賞する日々を過ごす。 最近はエモーショナルな韓国映画やドラマがお気に入り!

山本聡子 :  1973年生まれ。2年前に脱OLして編集者を志す。現在は自然の中を歩く本などを製作中。都会の喧騒に疲れると、吸い込まれるように映画館に行く。 見るのはアメリカ映画よりもヨーロッパ映画が多い。映画も男もラテン系が好きです。

中沢志乃 :  1972年5月8日、スイス生まれ。小学校時代に映画好きになり友達と劇を作る。一時は別の道を目指すもやはり映画関係の道へ。 5年間、字幕制作に携わった後、2002年4月、映像翻訳者として独立。夢はもちろん世界一の映像翻訳者です。

増田統 : 1967年、大阪市生まれ。高校時から映画に嵌り、大学入学と同時に上京。卒業後は、 映画雑誌「FLIX」編集部を経て、’97年よりフリーに。 フランス映画をこよなく愛するが、最近はアジア映画に浮気心を刺激されている。

古東久人 :  1959年生まれ。某出版社勤務。キューブリックで映画に目覚め、1980年代にキネ旬常連投稿から映画ライターへ。 「キネマ旬報」「フリックス」などの映画雑誌に執筆。編著は「相米慎二・映画の断章」(芳賀書店)。 生涯のベスト1はブニュエルの「皆殺しの天使」と長谷川和彦の「太陽を盗んだ男」。「皆殺しの天使」のDVDをぜひ出して欲しい!

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