にしかわたく ★★★★★
待ちに待ったアルモドバルの新作。この映画、とにかく画面全体に漂う色気がただものではない。エロを通り越して・・・もうまさに官能の極み、脳みそとろとろです。 植物状態の踊り子アリシア、神経衰弱ぎりぎりのリディア、2人の女優がそれぞれ圧倒的な存在感を示し、引きこもりデブのベニグノとハゲで泣き虫のマルコ、
2人の男の魂の交流が涙を誘う。あんたらすごいよ!最高だー!結末を観客にゆだねるようなラストも余韻があって良し。 映画館出てから、自分の中でゆっくりとストーリーが完結していく感じ。もう1回見たい!
カエターノ(本編にも出演)とビセンテ・アミーゴが参加したサントラ、これまた買いです。 |
山本聡子 ★★★★☆
同性愛者や犯罪者など、普通でない人に温かい目線を投げてきたアルモドバルの最新作は、切なくて温かい人間への賛歌だった。ベニグノのしていることは、 ほとんどっていうか完全にストーカー。介護士の名のもとに体の動かないアリシアに触りまくる。でも、言い方によっては、究極の愛。その愛が奇跡を起すこともある。
女性の脳は神秘的だ、語りかけろ、とベニグノが言うように、結局、人間にはありえないことはない。正常と異常、可能と不可能の境界なんて線引きできないし、 だから人間って計り知れなくて面白い。孤独な現代人の愛の姿と皮肉な運命の物語に、カエターノの歌声、ピナ・バウシュのバレエ、サイレントの斬新な映像、
すべてが効果的で、映画を多重に彩る。終わり方がまたいいんだな、これが。 |
中沢志乃 ★★★★
昏睡状態の恋人が愛の奇跡で目覚める…感動的〜!! なんて話を想像していたが、これがそんなに単純な映画ではなかった。愛情とは何か、深ーいところの愛とは何か、
愛は双方向でなければいけないのか、一方的な愛は正しくないのか、愛は人を生かすのか殺すのか…そんな愛に関する様々な要素が詰まった、 しかも女性と命への愛情が詰まった作品だった。常にノー天気な私が「とても共感できる」ということは無かったが、でもひどくジンとする映画。
もっとアルモドバル監督の作品を見てみたいと思わせてくれた。映画を見た数日後には、なんと19年の昏睡状態から目覚めた男性のニュースが報道された。 |
波多野えり子 ★★★☆
センチメンタルでちょっとイイ男風の編集者マルコ、「あの人ヤバいよ〜」といかにも言われそうなマザコン看護士ベニグノ、 そしてふたりの眠り姫アリシア(イギリスとスペインのハーフらしい、すごくキレイ!)とリディア。
それぞれの魅力を持つ4人の男女が織りなす愛の物語の結末は、残酷なのになぜか穏やかな気持ちにさせてくれる。 このまえアメリカで19年昏睡状態だった患者が目覚めたという実際のニュースを聞いた。目覚めることを待つ人が側にいてくれること自体がひとつの奇跡かもしれない。
日常生活に疲れたそこのアナタ、芸術家アルモドバルの創る繊細な世界に触れ、自分の感情と向き合ってみてはいかが。 |