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Vol.10
バックナンバー Vol.10
ロスト・イン・ラ・マンチャ
レセ・パセ 自由への通行許可証
神に選ばれし無敵の男
さようなら「渋谷パンテオン」
■ ■ ■
東急文化会館(東京・渋谷)が6月30日をもって閉館する。1Fの「渋谷パンテオン」は、座席数1119席。渋谷地区で最大、都内でもトップクラスの規模を誇る劇場だった。 映画は映画館で観ることが当たり前だった70年代に青春を過ごした者にとって名画座とともに忘れられないロードショー館の代表だった。 学生時代、映画のミニコミを作るためパンテオンの支配人を取材させてもらったことがある。確か伏見さんというお名前だった。 ちょうど劇場ではウディ・アレンの「アニー・ホール」を公開中。新作「コンボイ」についても話を伺った。 今でこそパンテオン以外は渋谷東急の館名で統一されているが、東急レックス、東急名画座という名称もあった。いつかまた劇場が復活するとき、名称はやっぱり「パンテオン」がいい。思い出をありがとう。(古東久人)
★
=1点、
☆
=0.5点。最高得点=5点
ロスト・イン・ラ・マンチャ
監督:キース・フルトン、ルイス・ペペ
出演:ジョニー・デップ、ヴァネッサ・パラディ
波多野えり子
★★☆
私の中で『ドン・キホーテ』のストーリーはちょっと頭のおかしな老人が何か冒険の旅に出るらしい、という程度の認識。 何でもビジュアル化は難しいということらしいが、今回テリー・ギリアム氏が挑戦。見事なまでにツイてない撮影現場はもちろん、スポンサーが現場を視察しに来る様子など、いろいろな事情を垣間見られるので、ウラ話好きの自分としては楽しめたが、万人ウケはしないのかも。 何かと大変でしょうが、早いとこ私に真の『ドン・キホーテ』を見せてほしい。くれぐれも時間とお金をかけすぎてアイディアをダメにしないでね。
中沢志乃
★★
やられた! 薄々そうじゃないかとは思っていたが、一度は中断され再び製作開始となった映画の大予告編を、お金を払って見てしまった…。 大物監督テリー・ギリアムの映画製作舞台裏を見られたのは良いが、次々と起こるハプニング発生時のスタッフやキャストの心の揺れには迫リ切らず、どういうわけか臨場感もない。 もう少し掘り下げて欲しかったというのが、残念ながら率直な感想。 このメイキング映画の監督は…、もちろんテリー・ギリアムでもありません。
山本聡子
★☆
いやはや、ご愁傷様です。テリー・ギリアム監督。10年の準備期間と4000万ドルの資金をかけて取り組んだ映画が、ことごとく災難に見舞われて撮影中止となってしまう。準備が手ぬるいのか、本当に不幸なだけなのかはさて置き、映画作りってのは忍耐がいるものだ。 でも、ドン・キホーテへのこだわりや思い入れはよく伝わってきた。髪結いの亭主のジャン・ロシュフォールはまさにキホーテのイメージに本当にぴったり! あー、完成版を早く見たい! でも、これって映画にするほどのことか? なんだか1800円払ってわざわざ予告編を見に行ったような感じは否めない。
レセ・パセ 自由への通行許可証
監督:ベルトラン・タヴェルニエ
出演:ジャック・ガンブラン、ドゥニ・ポダリデス
増田統
★★★★
交錯しつつすれ違うふたりの男たち、ジャン=ドヴェーヴルは持ち前の正義感からレジスタンスに身を投じるが、一方のジャン・オーランシュは彼のように勇敢ではない。 むしろ、自らの才能のなさ、その無力感を紛らわせるように、女たちの間を渡り歩くだけの男だが、芸術家としての誇りは人一倍強い。 だからこそ、ナチスに占領された映画製作の現場で、彼は親独映画を執筆しない、脚本家の意地として。 そんな複雑な内面を抱えた人間に注ぐベルトラン・タヴェルニエの眼差しが好きだ。誰もが英雄のはずはない。 むしろ激動の時代、自分のできることだけにその身を尽くし、他者を告発せず、じっと息を潜めつつ、時をやり過した果敢なき人間が大方だったろう。 壮大な歴史ドラマの裡に、あえてタヴェルニエが見つめるのは、誰の身にも降り注ぐささやかな個人の幸福である。
にしかわたく
★★★☆
べルトラン・タヴェルニエ。僕と同じ世代の映画ファンにはなじみの深い名前だと思います。『田舎の日曜日』『ラウンド・ミッドナイト』など、 こじんまりしてるけど、じんとくる作品を撮るフランスの名監督。 この10年くらいあんまりぱっとしなかったんですが、前作の『今日から始まる』を見たらすごくエネルギーがあって、今回も楽しみにして映画館に行きました。 この映画はドイツ占領下のフランス映画人たちの苦労を描いています。テーマはかためですが、そこはさすがタヴェルニエ監督。 とても人間くさい仕上がりになっています。まだまだ期待していいですね、このじいさん。
山本聡子
★★
さすが自転車王国、フランス。自転車で旅に出たくなった。美しい田園風景、古い小さな町を巡って助監督のジャンは妻のもとへ走る走る。 ドイツ統治下のフランスを舞台にした2人の映画人の物語。 レジスタンスを行いながらも一方ではドイツ人の上司にも使え、葛藤に苦しむ助監督と対独協力を頑として拒み、原稿を持って女の間を行ったり来たりする脚本家。対照的なようで、そうでもない2人。 それぞれの映画、戦争、ドイツが淡々と描かれ、また新しい角度で戦争を考えた。・・・んだけども、なんとなくインパクトに欠けた映画で、見終わった後に心に残ったのは、美しい田園風景だけだった。
神に選ばれし無敵の男
監督:ヴェルナー・ヘルツォーク
出演:ティム・ロス、ヨウコ・アホラ
中沢志乃
★★★★
オープニングから「これはなかなか…!」と思わされた。1932年、ポーランドの 田舎のユダヤ人町。庭でとれたような野菜を市場で売買し、人々は裕福ではなくてもシンプルで幸せな生活を送っている。この町一番の力持ち、ジシェは、やがてベルリンへと旅立つが…。 貧しいから、弱いから吠えてしまう者、裕福だから、強いから他人に優しくなれる者、聞く耳と見る目を持つ者と持たざる者。 兄弟愛、友情。様々な要素がふんだんに詰まった実話に基づくストーリーは、必要以上に盛り上がりすぎず、派手な演出もなく、 しかし確実に見終えた後に「丁寧に心を込めて作られた正に良い映画を見た」という静かで満ち足りた時を与えてくれる。 素朴な俳優人のキャスティングも絶品だ。
波多野えり子
★★★☆
ユダヤ人排斥運動本格化の直前、という時代背景が何とも痛ましい。物語の後半、主人公ジシェが迫るナチスの脅威について警告しても仲間たちは本気にしない。 今を生きる我々にだって想像を絶する未来が待っているかもしれないわけで、彼らの反応は至って自然なこと。何だか切ない。しかしながら、ラストでアンナ・ゴウラリが奏でるベートーヴェンの“ピアノ協奏曲第3番”はpeacefulなパワーを持っていた。芸術的に優れた作品だ。 そしてティム・ロスの眼光の強さはすごい!本当に催眠術にかかりそう…。私の眼力王ランキングにめでたくランクイン。
にしかわたく
★★★☆
テーマはヒトラーの台頭を予言したと言われるオカルティスト、ハヌッセン。監督は自他共に認める天下一のひねくれ者、ヴェルナー・ヘルツォーク。 これは見ないわけにはいきません。ハヌッセン役のティム・ロスがいいですねー。この人は大好きな役者です。 (ちなみに私は阪神ファンなのですが、1番セカンド今岡のことを‘浪速のティム・ロス’と呼んでます)相変わらず史実と妄想が絶妙の割合でブレンドされた、 この監督らしーい映画でした。面白かったんですが、やはりヘルツォ−クの映画にクラウス・キンスキーがいないというのは寂しいですね。(91年に他界)
編集雑記
『交通新聞』という交通専門紙に「映画にみる駅の風景」というコラムがある。リュミエールの『列車の到着』から『ハリー・ポッター』『アメリ』 まで新旧の外国映画のなかから駅の風景が印象的な映画をエッセイふうに紹介。書いているのはJR北海道常務の臼井幸彦氏。 臼井氏は工学博士でもあるので建築にも造詣が深く、その点が映画雑誌などではなかなかお目にかかれない魅力的な文章になっている。 残念なことに交通専門紙なので映画ファンの目に触れる機会もあまりないかもしれないが、興味のある方はご一読を。毎月、第4金曜日の掲載です。交通新聞社発行。 (古東久人)
増田統
: 1967年、大阪市生まれ。高校時から映画に嵌り、大学入学と同時に上京。卒業後は、 映画雑誌「FLIX」編集部を経て、’97年よりフリーに。 フランス映画をこよなく愛するが、最近はアジア映画に浮気心を刺激されている。
にしかわたく
: 漫画とイラスト描いて暮らしてます。映画好きが高じて現在『季刊ロゼッターストーン』に「でんぐり映画館」連載中。 映画とコーラとポップコーンがあれば基本的に幸せ。「飲食禁止のスノッブ映画館を打倒する会」主宰(嘘)。
山本聡子
: 1973年生まれ。2年前に脱OLして編集者を志す。現在は自然の中を歩く本などを製作中。都会の喧騒に疲れると、吸い込まれるように映画館に行く。 見るのはアメリカ映画よりもヨーロッパ映画が多い。映画も男もラテン系が好きです。
中沢志乃
: 1972年5月8日、スイス生まれ。小学校時代に映画好きになり友達と劇を作る。一時は別の道を目指すもやはり映画関係の道へ。 5年間、字幕制作に携わった後、2002年4月、映像翻訳者として独立。夢はもちろん世界一の映像翻訳者です。
波多野えり子
: 1979年元旦の翌日という中途半端な日に東京・永福町にて誕生。現在はブライダル情報誌の編集部で修業中。 映画好きかつ毒舌な家庭で育ち、「カサブランカ」からB級ホラー作品まで手広く鑑賞する日々を過ごす。 最近はエモーショナルな韓国映画やドラマがお気に入り!
古東久人
: 1959年生まれ。某出版社勤務。キューブリックで映画に目覚め、1980年代にキネ旬常連投稿から映画ライターへ。 「キネマ旬報」「フリックス」などの映画雑誌に執筆。編著は「相米慎二・映画の断章」(芳賀書店)。 生涯のベスト1はブニュエルの「皆殺しの天使」と長谷川和彦の「太陽を盗んだ男」。「皆殺しの天使」のDVDをぜひ出して欲しい!
シネマの達人
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