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第3回 常に危険と隣り合わせ?


つい先日、友達の家で昼食をごちそうになった。しばらく会っていなかった友人だったので、とても会うのをお互い楽しみにしていた。 彼女の家にお邪魔するのは初めてだったし、場所がDCのど真ん中ってこともあって、楽しみは二重三重に膨らんでいた。 心持の広い彼女に「友達も連れてきて」と事前に言われていたので、遠慮なく大学の友達を二人ほど引き連れて、DCの北東部に位置する彼女の家へ。

ワシントンDCは大きく4つの地域に分けられている。Northwest(北西部), Northeast(北東部), Southwest(南西部), Southeast(南東部)。 私の大学は北西部に位置する。一般的に北西部は白人地区、特に富裕層。南西部は国の行政機関がひしめく地区。北東部と南東部はマイノリティが多く住む地区。 いわゆる治安の悪いとされる地区だ。私は実際それぞれの地区に訪れるまでそんな違いを信じなかったが、違いは相当明らかだった。

大学の授業でDCの4地区のうちの2地区の街を訪ねるというプロジェクトがあったときに、違いを実感した。 教授はクラスの中でグループをつくり、グループ内に少なくとも一人男の子が入るように組んだ。集団行動でも女の子だけは危ないから、という理由だ。 そんなに心配ならやめればいいのにとか密かに思いながら、グループのメンバーと話し合い、北西部と北東部からそれぞれ街を選んだ。 私たちのグループは土曜日の朝に「探検」することになった。

Brookland(北東部の街)

車で私の大学のある北西部から最初の目的地の北東部にある街までは30分とかからない。 そんな距離で違いなんて見られるの?という浅はかな考えはすぐにかき消された。東に進むにつれてどんどん景色は変わっていった。 小さくてこぎれいなおうちの並ぶ街並みが壁に落書きのあるような店の並びに変わり、そういう店さえもランダムになってきた頃に目的地に到着していた。

爽やかな土曜日の朝にもかかわらず、メインの通りには数人のアフリカ系アメリカ人のみ。彼らも何をするわけでもなく、店先のベンチに腰掛けていたり、 ぼうっと立っているだけ。近くを通ると、「アジア人がこんな所で何してるんだ」と言わんばかりの目で見られる。 ようやく教授がグループを組んだ意味を理解した。なるほど、確かに安心はできない場所だ。私たちはリサーチを終えて、そそくさとその場を去った。

Adams Morgan(北西部にある街)

その後に訪れた北西部にある街はとても活気があり、気持ちのいい土曜日の朝という感じを受けた。 新鮮な果物や花を売る週末だけのお店には沢山の人が群がり、楽しそうにおしゃべりをしている。 もちろん危険なんて感じないし、とても居心地のいいところだった。

話は元に戻って、私たちはあまり治安の良くないとされるあの北東部にある友達の家へ向かっていた。はっきり言って不安だった。 私の変な先入観が私を緊張させていた。道中、いつどのあたりで景色が変わるのか、どのくらい危険でないのか、あらゆる不安が私を襲った。

私の不安とは裏腹に、まったく景色は変化しない。とてもきれいな公園や、かわいいおうちがいつまでも続く。 あれ、いつ変わるのかしら?と不安が裏返ったときにはもう彼女の家に到着していた。

家の前にはとてもきれいな公園があり、遊んでいる子供たちや、犬を散歩させているおじいさんなど、とてもほのぼのとしている。危険なんてほど遠い。 でも住所では北東部になっているはず。疑問を率直に友人にぶつけてみた。

彼女いわく、以前はそこも相当治安が悪かったらしい。しかし地域の努力でここまでこの街をのし上げたと彼女は言う。 どのような努力をしたのかは詳しく知らないが、並々ならぬ努力であったことは間違いない。

打って変わって、私がグループで訪れた北西部にある活気のあった街は、最近治安が悪くなっていると聞いた。強盗などが多発しているらしい。 大学の友達も最近はそこに行きたがらない。もちろん、危ないからという理由だ。

DCはそう大きい街ではない。1、2時間あれば車で一周できるくらいの大きさだ。そんな中でも治安は様々で、「安全性」は良くも悪くも日々変化している。 そしてそれがその街を「生かす」か「殺すか」を決めている。アメリカ人の異常なまでの治安レーダーに驚くばかりだ。

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