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第1回 大統領戦争


7月の末日にアメリカはワシントンDCに降り立ち、しばらくメリーランド(DCのすぐ隣の州)に住む叔母のところにしばらくお世話になっていた私は、 DCの中心に足を運ぶ機会は8月の半ばまでなかった。緑の豊かな、いかにも「平和」という言葉がぴったりな美しい場所で数週間を過ごした。

 今のアパートに引っ越したのは天気の良い8月某日。新たなスタートを迎えた次の日、出歩いてみることにした。 バスと地下鉄を乗りついでデュポンサークルという街に行った。そこは質のいい本屋やカフェなどが多く、またシンクタンクなども並び立つ、インテリが集う街だ。 私は早速お気に入りの本屋を見つけ、上機嫌で闊歩していた。

 鼻歌交じりで歩いているとなにやらアンケート用紙のようなものを持った人に話しかけられた。 何のことやらよく分からなかったので笑ってごまかし、遠くから何だったのか観察してみることにした。

 どうやら彼らのTシャツにはDemocratic(民主党)の文字。立ち止まって彼らと熱心に話す人もいれば、首を横に振ってそそくさと去る人もいる。 なるほど、民主党のキャンペーンか何かだろう。私はどっちみち、留学生の身なのでキャンペーンに参加は出来ないが、話くらい聞けばよかったと後悔した。

 そういえば、気をつけて道行く人を見るとたまに、胸に民主党Kerry、または共和党Bushのバッジをしている人を見かける。 誰に向かって示しているのかはわからないが、自己顕示の一環だろうか。

 外は暑くて汗が出てきたので、近くの面白そうな店に入った。そこは人権保護団体の経営している店でマグカップやらトレーナーやら、 お土産になりそうなものが棚に並べられていた。もっと私の興味を引いたのは店の中のポスター。ブッシュ大統領にむけての言葉が、 人権保護団体らしからぬもので驚いた。

 いよいよ学校が始まり、DCの街の中に行く機会も減った。 もう少し見てみたかったな、と思っていたらキャンパスでも同じ類のものを見ることができた。いや、もしかしたらより面白いかも知れない。

 トイレに入るとドアの内側に「ブッシュを負かすための仕事」のビラ。中庭には共和党支持者のテント。 教室移動のときも共和党支持者と民主党支持者がより味方を増やそうとビラを持ってウロウロしている。この国は18歳から選挙権を持つことが出来る。 場所柄か、政治に敏感な生徒がとても多い。つい数日前も共和党の党大会があり、色々なところで党大会について語り合っている学生を目にした。

 大統領選まであと約2カ月。11月までの間、この戦争はヒートアップしていくだろう。選挙権がないのが本当に惜しい。 まぁでも、アメリカの代表者を選ぶ大変重要な時期にアメリカにいることができるだけ、間近でそれを見ることができるだけでよしとしよう。

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