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第20回 揚げまんじゅうの怪


ある日の出来事。その日は久々の帰省だというのに、両親も実家近くに住む妹家族も外出。残されたのは私と甥っ子(妹の長男)Yの二人だけだった。

この顔触れでは食事を作るのはやはり私だろうと、メニューをいろいろ考えた末、ボリュームと栄養を考えて「ポークと野菜のソテー」にした。

Yは中学生で育ち盛り。食べる量は半端じゃない。以前、妹が夕食にハンバーグを作り大皿に4個乗せてテーブルに出した時、みんなでシェアするのかと思ったら、それはY一人分だったことにたまげたものだ。

そのことを思い出し、5人分ぐらいの量を用意した。もう料理とは言えないほどの力仕事だった。

なんとか出来上がり、Yを呼んで食事タイム。しかし予想に反して、1人分を食べたか食べないくらいで「ご馳走様」になった。具合でも悪いのかと心配になったが、本人に尋ねても「大丈夫」との返事。その後も何となく気になってはいたが、あまりしつこく聞くと「ウザい」と思われるかと、そこで止めておいた。

そうこうしているうちに妹たちが帰宅。大事な息子さんをお預かりした義務もあるので、食事のときのことを一応報告しておいた。

そして次の日。妹が笑いながら私に駆け寄って来て何かと思ったら、「お姉ちゃん、昨日の食事のことだけど、Yに聞いたら料理の味が薄すぎて不味かったらしいよ(笑)。」と、衝撃告白。

・・・。彼は具合が悪かったのではなかったのだ。不味かったから食べなかったのだ。育ち盛りの男の子の味覚が40半ばの私とは違うことは、ちょっと考えれば分かりそうなこと。私は多いに反省した。

しかし・・・私が帰省土産に買ってきた御門屋の揚げ饅頭が、誰もいないのに急激に減っていて不可解だったのだが、それが餓えをしのぐためにY食べていたからだったとは・・・。私を傷つけまいと「あまりお腹が空いていない」と言いながら、密かに揚げまんじゅうを食べていたYの姿を想像すると不憫でならなかった…。

イラスト

2006.2.13 掲載

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