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第18回 「有馬記念」(1956年〜 JRA)


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創設から第50回の節目を迎えた日本中央競馬会(Japan Racing Association)が開催するこの有馬記念という競争は、時の理事長であった有馬頼寧の提唱により、世界的にも他に類を見ないファン投票を中心に据えた選抜方法で、1956年12月23日に「第1回中山グランプリ」として行われました。それから17日後の翌年1月9日、提唱者であった有馬氏が急逝したことを機にそれまでの氏の功績を称え、以降「有馬記念」と名前を変え、年末にその年の最強馬決定戦としての意味合いを持つレースとして執り行われてきました。また昔より「世相を象徴するレース」と云われ、その年にあった大きな出来事に関わる馬名のついた馬が激走すると言われています。さて実際はどんなことになっているのでしょうか。その例として、21世紀になってからの四年間における社会の印象的な出来事と、その年に行われた有馬記念の結果を挙げてみました。

2001年 同時多発テロ → 1着マンハッタンカフェ 2着アメリカンボス
あの忌まわしいテロ事件がアメリカで起こった年。今でも旅客機が突き刺さった高層ビルの異様な光景や、悲しみに立ち尽くすニューヨークの人々の姿は忘れられません。そんなことをさらに強く印象づけるかのように、アメリカにちなんだ馬名を持った馬が1、2着を占めました。

2002年 日韓ワールドカップ → 3着コイントス
ワールドカップで日本国中が盛り上がったこの年、景気の悪化により、売り上げの落ち込みが深刻な状況を生みつつあった日本中央競馬会では、大改革の一環としてその切り札とも云うべき「三連複馬券」の発売を開始。結果は話題の三連複が405.7倍という高配当となり、人々の興味を大いに駆り立てました。

2003年 フセイン元大統領拘束 → 2着リンカーン 3着ゼンノロブロイ(2004年参照)
当時、形の上では旧フセイン勢力の制圧を成し遂げていたように見えたアメリカでしたが、実質的にその後も多くのイラク国民の精神を縛り続けていたフセイン元大統領の拘束は、イラクの民主化を推し進めるアメリカにとって、必ずやなさねばならないことでした。「奴隷解放宣言」や『人民の人民による人民のための政治』というスローガンを掲げたゲティスバーグにおける演説で有名な大統領の名前を付けた馬が2着に。

2004年 自衛隊イラク派遣 → 1着ゼンノロブロイ
長引くイラクの民主化への道。ついに日本の自衛隊も海外派兵に応じることになりました。この年優勝を飾った大本命馬シンボリクリスエスに次いで2着に入ったゼンノロブロイは、前年も3着と好走していました。馬名は馬主の持つ冠名「ゼンノ」に13世紀末、スコットランド独立の為にイギリスと戦った英雄ロブ・ロイ(アメリカ映画『ブレイブ・ハート』でメル・ギブソンが扮していた)の名前が付けられたものでした。

image こうした結果をどう捉えるかは個人の感性ということでしょうが、世間の馬券購入者の多くは、こうしたことを好んで語っているのは事実のようです。さて2005年の有馬記念はどんな馬名を持つ馬が注目を集め、活躍するのでしょうか。このエッセイが掲載されて間もなくに、結果は判明していることでしょうね。

今年の話題は何といっても無敗の三冠馬ディープインパクト(深い印象)が、デビュー以来8戦無敗で四冠を達成するのか否かということです。全世界的に、大規模な自然災害がこれほどまでに多かった年は無かったのではないかと思われる今年、映画『ディープ・インパクト』の強烈な印象をそのままに凄まじい成績を残したこの馬の名前は、この一年を象徴するイメージとして真っ先に脳裏に浮かんできます。目を国内に向けると、2005年は女性の活躍が何かと話題になった年でした。郵政解散と云われた衆議院総選挙における女性立候補者の活躍。皇室典範有職者会議での議案より発した女性天皇容認論。さらに皇室においては清子内親王殿下のご結婚もありました。年が押し迫ってきてからのスポーツ界でも、フィギュアスケートやゴルフでの女性の活躍が中心となって盛り上がっているように感じます。そんな事柄からイメージされるのは、この秋9年ぶりに天皇賞を勝った牝馬ヘヴンリーロマンス(神々しい恋愛)でしょうか。はたまた悲惨な事件が続くこの時世を悲しみ、ハーツクライ(心の叫び)の激走があるのでしょうか。競馬ファンは過去の名場面、名勝負を語り、それぞれにこの一年への思いを込めてこのレースの勝馬投票券を買い、見守り、時に絶叫し、結果が出てしまえば『そうだと思ったんだよな』などと云いつつ能書きを並べ、数々の思い出のレースを胸にゆく年と消えていったお金を惜しみ、語り合うわけです。ファンにとって「有馬記念」とは競馬の世界の除夜の鐘のようなもの。とは言え終わってしまえば『来年こそは・・・・』と、年明け早々の開催日に向けて気持ちが引き締まる(?)・・・。毎年欠かさずファンファーレを聞いたからといって、人は煩悩からなかなか抜け出せないものなのでございます。

image 来るべき2006年はどんな年になるのでしょうか。何事も劇的に良くなってゆくということはないのかもしれませんが、せめて自分のこと、そして自分の周りのことについては、情熱と創意工夫でより良いものにしてゆきたいものです。やがてそこから幸せや平和の輪が、少しずつであっても確実に広がってゆくことを願いながら。Merry Christmas and Happy New Year!

2005.12.25 掲載

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