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第27回 育児休業の対象から漏れてしまう子どもたち


介護休業・育児休業の対象となる子の範囲が平成29年1月1日より広がります。

具体的には、

  • <改正前>
    育児休業などが取得できる対象は、法律上の親子関係がある実子・養子

  • <改正後>
    育児休業などが取得できる対象は、法律上の親子関係がある実子・養子、特別養子縁組の監護期間中の子、養子縁組里親に委託されている子等

つまり、「特別養子縁組の監護期間中の子、養子縁組里親に委託されている子等」が新たに対象となりました。

問題点です。法律が求める改正点より、実態として問題になるのは、養子縁組をする予定のない子です。養子縁組をする予定のない子についての介護や育児について、法律は全く触れておらず、厚生労働省令でも触れない見込みです。

法律が求めるいわゆる養子縁組準備期間中の子より養子縁組をする予定のない子の方が、圧倒的に人数が多いのが社会の実態です。

特別養子縁組の年間件数は513件(平成26年)です。この件数から推計して養子縁組準備期間中の子の人数はもっと少なくなります。養子縁組をする予定のない子の統計はありませんが、特別養子縁組の件数より圧倒的に多いと思われます。

養子縁組をする予定の無い子の具体例としては、連れ子がいる男性と再婚した女性が夫の姓を名乗る場合に、夫と妻の間では婚姻届を提出しますが、夫と子の間では養子縁組をしなくとも同じ姓になりますので養子縁組をしない場合があります。

同様に、連れ子がいる女性がたまたま同じ姓の男性と結婚した場合なども婚姻届を提出しますが、養子縁組をしない場合が多々あります。

もちろん、連れ子がいる妻が再婚し夫の姓を名乗る場合に、子供は元の姓のままの場合等もあります。当然ですが事実婚関係にある配偶者の子もいます。たとえ親が結婚しても、親の結婚相手と養子縁組をしない限りは、法律上は親の結婚相手の子(養子)にならないのが日本の法律です。

この子達は養子縁組の予定のない子です。健康保険法ではこの子達は収入等他の要件を満たせば扶養家族として認定できますが、介護休業法や育児休業法の「子」に該当しません。

狸事務所の顧問先様の従業員さんでも、姓の違うお子さんを健康保険の扶養家族にいれている方が多数います。

この養子縁組をする予定のない子を育児休業や介護休業の対象となる子から法律通り外す事が、社会通念上妥当と考えるか否かという問題です。

狸は養子縁組をする予定のない子を介護休業や育児休業の対象の子から外す事は妥当ではないと考え、狸事務所に相談にこられる顧問先様等には養子縁組をする予定のない子も介護休業や育児休業の対象に含めるように説明しています。


2016.12.10 掲載

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