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第18回 「人工関節が入ってます」


公務員38年、公務員を早期退職してその後民間企業で2年間厚生年金保険に加入していた女性(昭和30年5月生まれ)が相談に来た。60歳で会社も退職して今は専業主婦だそうだ。

昭和30年5月生まれの女性の方の支給開始年齢は、厚生年金保険60歳、共済年金62歳だ。
  60歳になったので厚生年金保険の手続きの相談に来たという事だ。

老齢厚生年金の手続きの時には必ず「お身体どこか悪いところはないですか?」と確認する。
  すると、「股関節に人工関節が入っています。」という答えが返ってきた。
  一般に人工関節は障害年金3級に該当する。

——何時、人工関節をいれられました?

「かなり前です。かれこれ15年くらい経つと思います」

——今も、人工関節の手術を受けた病院に通っていますか?

「定期的に通っています。それがなにか?」

——人工関節を埋設していると、一般に障害年金3級に該当します。過去に遡って障害年金を請求する事ができるのですが、過去に遡る為には人工関節を埋設した日の診断書が必要なんです。

「でも、私の障害者手帳は4級ですよ」

——障害者手帳の級と障害年金の級は違いますので、障害者手帳で4級でも障害年金3級になる事もあります。ところで、人工関節をいれる前に他の病院に行った事はありますか?

「いいえ、始めて行った病院で診断して貰って、人工関節をいれました。今もその病院にお世話になっています」

——(……障害年金に必要な病院関係の診断書は揃いそうだ。)

「それで、私の年金はどうなるのですか?」

——人工関節をいれた時に遡って、障害年金を請求する事ができます。但し、共済組合の期間中は障害年金が支給停止になります。

「じゃあ、過去に遡っても意味がないじゃないですか?」

——奥様は2年前に公務員を退職されたので、2年前から障害共済年金が支給されます。奥様は今年60歳になりますので、今年から老齢厚生年金ですが、老齢厚生年金に障がい者の方の特例があります。つまり、障がい者の方は年金額が増えます。
ところで、少し話がややこしいのですが、平成27年10月1日付けで共済組合と厚生年金保険は合併(*)します。

「それが何か?」

——障害厚生年金と老齢厚生年金は併給されないのですが、障害共済年金と老齢厚生年金は併給されます。つまり、共済組合を退職した時から、障害共済年金、60歳になった時点から、障害共済年金と老齢厚生年金(特別支給の老齢厚生年金の障害者特例)が併給されます。
ところが、平成27年10月に共済年金と厚生年金保険が合併すると、障害厚生年金と老齢厚生年金となりますので、併給されなくなります。

「それで、どうなるのですか?」

——障害厚生年金と老齢厚生年金のどちらか高い方を受給して頂く事になります。一般的には障害厚生年金の方が高くなります。62歳になった時点で、現在の退職共済年金が支給開始になります。名称は老齢厚生年金です。

すると、62歳時点で
(1)障害厚生年金
(2)老齢厚生年金(障害者特例)・・・民間企業分
(3)老齢厚生年金(障害者特例)・・・公務員分

(2)(3)は合併していますので、(1)と(2)+(3)を比べて高い方を受給となります。今度は老齢厚生年金の方が高くなると思います。

* * * * *

共済組合の期間中は、障害共済年金3級は在職支給停止になる。この関係で障害共済年金3級に該当しても障害共済年金を請求していない人は多いようだ。

平成27年10月1日以降は、障害共済年金も障害厚生年金となるので、在職支給停止がなくなる。公務員で人工関節、人工肛門、ペースメーカー、人工弁等を埋設している人はなるべく早く共済組合に相談して下さい。

▼これまでの話
人工関節埋設日 障害共済年金3級(在職支給停止)
公務員退職 障害共済年金3級(支給開始)
60歳(本稿の相談時) 障害共済年金3級
老齢厚生年金(特別支給の老齢厚生年金の障害者特例)
【併給】
▼これから先の話
平成27年10月1日
(共済年金と厚生年金の合併)
障害厚生年金3級
老齢厚生年金(特別支給の老齢厚生年金の障害者特例)
【併給】
62歳 障害共済年金3級
老齢厚生年金(特別支給の老齢厚生年金の障害者特例)
【選択】


(*)平成27年10月1日付けで合併する共済組合の年金と厚生年金保険の話は、次回のコラムで取り上げます。

2015.9.10 掲載

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