第17回 新幹線焼身自殺の男性の年金。マスコミ報道は間違っている。
ぇぐっぐ????? これも年金が悪いの?????
乗り鉄の狸は新幹線が大好きだ。 乗り心地、速度(東北新幹線)、 本数、定員、定時運行性等々、日本の新幹線はあらゆる面で世界最高だと思いマーーース。
中でも世界に一番誇れるのが安全性でしょう。 その世界一安全な新幹線で焼身自殺という悲しい事件が起こりました。自殺の原因は生活苦だったとか。残念な事です。
ところで、その生活苦の原因が「年金が19万円という通知が来たのに12万円しかない」らしい。。。。。。。って、狸も報道でしか知らないから自信がないんです。
「仕事をしている時は、給料の関係で年金が一部止まるのは納得できる」
「仕事を辞めた後も年金が、12万円のままだった」
「仕事は1年前に辞めた。」
なになに?????
仕事を辞めたのに、年金が一部支給停止になったまま?
アホなマスコミが年金事務所に取材に行った(・・・・・らしい)
マスコミの質問「仕事を辞めた後も、在職支給停止となる事がありますか?」
年金事務所の答え「仕事を辞めた後に、在職支給停止になる事は考えられない」
あたりまえやろーーーーーーーー 。
在職支給停止は、仕事をしているから「在職」やんか!!!
退職後は「在職」じゃないから在職支給停止にならんやろ!
この質問は、支給停止にならない年金が一部支給停止になり、年金額が少なくなったから生活苦になったという論理で報道したいらしい。コメンテーターも、「そうだ。そうだ。年金が悪い」と同調している。
おひおひ(−−¥ 。
もうちょっと、まじめに考えろよ。そんなわけねーだろ。
自殺者は71歳だから当然65歳以上だ。
65歳以上の在職老齢年金の支給停止は、65歳以上の年金の内、国民年金(老齢基礎年金)は満額支給され、厚生年金の報酬比例部分が支給停止の対象となる。
具体的には、
(1)お給料
(2)前年の賞与の12分の1(1年間の賞与を1カ月に直した金額)
(3)厚生年金の報酬比例部分の12分の1(報酬比例部分の年金の1カ月分)
この合計が47万円を超える時に、超えた額の2分の1が支給停止となる。
そこで、試算してみる。
自殺者の年金は190,000円(通知された額)
190,000円のうち、支給停止になるのは厚生年金の報酬比例部分だけだから、ここから、国民年金や厚生年金の報酬比例部分以外の部分(経過的加算)を引かないと計算できない。
しかーーーーし、面倒くさいので190,000円全額が報酬比例部分だったとして計算してみる。
一般的に65歳以上の方には賞与がないので賞与は0円で計算する。
前述した(1)〜(3)の合計が47万円を超えた場合に超えた額の半額が支給停止になるのだから、47万円を超えた額は
190,000円−120,000円=70,000円(支給停止額)
70,000円×2=140,000円
※47万円を超えた額の2分の1が「支給停止額」なので、(1)給料を求めるために、これを2倍にして元の「47万円を超えた額」に戻します。
140,000円が、470,000円を超えた額なので、
(1)〜(3)までの合計は470,000円+140,000円=610,000円。
これで前の給料がわかる。
(1)(給料)+(2)(賞与)+(3)(年金月額)=610,000円
(1)(給料)=610,000円−(2)賞与(0円)−(3)年金月額(190,000円)=420,000円
※この場合の(3)にあたる19万円という数字は通知された年金額1カ月分になります。
おーーーひ????
70歳で420,000円の給料ってか???
ありえんやろ。そんなええ会社があったら狸も就職したい。
因みに国民年金が満額支給されていたと仮定して計算してみる。国民年金の満額は月額65,000円だから上記の計算で給料を逆算すると、給料は525,000円となる。
つまり、自殺者の年金が支給停止になっていたのは、在職支給停止ではなかったという事です。
では、年金が減額されていた原因は何だったのでしょうか?
考えられる事は、年金担保融資でしょう。
年金を担保に融資を受ける事は原則としてできないのですが、例外として独立行政法人福祉医療機構が行う年金担保融資だけは年金を担保にできます。この場合は、融資の返済は年金からの天引きとなります。
月額190,000円の年金から年金担保融資の返済70,000円を引いて120,000円が預金口座に振り込まれていたのでしょう。
実際には、年金担保融資は年金の3分の1以上を控除できないので、端数処理の関係で誤差が出ているか、金額について少し自殺者の勘違いがあったのでしょう。控除額がほぼ3分の1ですから間違いないと思います。
つまり、年金が少なくなったのは、「在職」のためではなく、自分で借金したからです。
借金が原因で年金が減額されていたので、会社を辞めた後も、年金が満額に戻らず、引き続き減額されていたのでしょう。
自殺者は、「在職」中だから年金が減らされていると勘違いしていたようです。そこで、会社を辞めても年金が満額に戻らないので途方に暮れてしまったのでしょう。 逆に言えば、身近な誰かが「融資の返済が終われば、年金は満額に戻るよ」ってアドバイスをすることができたら、こんな事件を引き起こす事もなかったかもしれませんね。
ちまたで年金の話をする時は、往々にして年金の悪口を言いがちですが、年金の悪口や勘違いは時として大きな事件を引き起こす事がありますので気をつけましょう。
2015.7.6 掲載
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