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第14回 診断書の提出で年金が増えることもある!(2)


ねんきん定期便に年金の見込額が記載されている。

「私の年金こんな少ないのですか?」

厚生年金に21年かかっていても、お給料が安かったのだろう、年金額は年額15万円程度だ。

——そうですね。このままではだいたいこれくらいですね。

「これなら生活できません。何とか増やせないのですか?」

——わかりました。診断書を提出していただければ年金が増える事もあります。 増えるかどうかは診断書を出してみないとわからないですが、やってみますか?

「診断書ですか?何科の診断書ですか?」

——神経内科か精神科の診断書です。

「それで増えるならやってみます」

本人は診断書の提出に納得したようだ。同行の女性がほっとした顔をしている。 どうやら、障害年金の請求を勧めていたのに本人の同意が得られなくて困っていたようだ。

ところで、障害年金には、国民年金の障害年金(障害基礎年金)と厚生年金の障害年金(障害厚生年金)がある。 障害基礎年金は、重い方から1級、2級の2等級だ。障害厚生年金は、重い方から1級、2級、3級の3等級だ。

障害基礎年金になるか、障害厚生年金になるかは、初診日に厚生年金に加入していたかどうかで決まる。初診日に厚生年金に加入していれば、障害厚生年金だ。初診日に国民年金の第1号被保険者又は第3号被保険者であった場合や、初診日が20歳前の年金に加入する前の時は障害基礎年金だ。

また、厚生年金に加入している時は国民年金の第2号被保険者だから、初診日に厚生年金に加入していれば、障害厚生年金と障害基礎年金の両方が受給できる事になる。彼女の場合は、素人判断で障害年金3級程度だ。 また、どうも先天性の病気のようだ。

——小学校は普通の学校でした?

「普通でしたよ。でも、中学はバスで1時間かけて通っていました」

当時の中学校でバスで1時間掛けて通学していたという事は、多分養護学校だろう。
  しかし、本人は養護学校であったという事を理解していないようだ。

同行の女性に目配せしてみる。かすかに同行の女性が頷いた。
  だが、先天性となれば、障害基礎年金となり、2級以上でないと障害年金の対象とならない。

ところで、特別支給の老齢厚生年金(60歳から65歳未満の老齢厚生年金)の特例に、障がい者の方の特例がある。 障がい者の方が、厚生年金の被保険者でなく、つまり、仕事をしていない状態で、特別支給の老齢厚生年金の受給できるようになれば、通常の報酬比例部分に加えて定額部分も支給される。

彼女の場合は、年間40万円程年金額が増える。また、厚生年金期間が20年以上ある場合は配偶者加給年金も支給される。配偶者加給年金は配偶者が65歳まで支給だが、彼女のご主人は既に65歳を超えている。配偶者加給年金の権利が発生した時点で配偶者が65歳以上の場合は、配偶者の国民年金に振替加算が加算される。

障がい者の特例に該当すれば、彼女の年金も増えるし、年金が少ない事を悔やんでいたご主人の年金も増える。金額はともかくとして、彼女や彼女のご主人の心に少しの安らぎが芽生えるだろう。

彼女の表情に明るさが出てきた事を確認して、障がい者の特例に必要な書類を手渡した。


2015.5.18 掲載

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