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第4回 年金事務所の収納率は98%以上。
徴収能力は税務署よりも上!


平成26年4月から、国民年金の前払い制度に従来からの「6カ月前納」「1年前納」に加えて、「2年前納」が追加されます。もちろん、割引率も大きくなります。おとくーーーーですね!!

ところで、日本の広範な社会保障制度の中で、このような前払い割引があるのは国民年金だけなんです。国民年金って優遇されていますよね。国民年金だけ優遇されてずるいって思いません?

実は、厚生年金保険はもっと優遇されています。厚生年金保険には、滞納による給付制限がありません。 厚生年金保険の納付義務者は被保険者(従業員)ではなく、事業所(会社)ですから、滞納しても、被保険者には責任がないという考え方です。

会社が全く社会保険料を支払わなくても、健康保険が使えなくなったり、将来の年金額が下がる事はありません。厚生年金保険に加入している普通のビジネスパーソンの皆さんはそれだけ守られているという事です。

一昔前に、この考え方を悪用して、社長の給料を高額、例えば100万円ぐらいにしておいて、社会保険料を滞納する会社がありました。
  ほんで、そのまま倒産しちゃうんですが、社会保険料を滞納しても、将来社長に対して高額の給料に対する厚生年金が支給されます。
  それは、おかしい、滞納しているのに、厚生年金が支給されるのは不公平だ。ということで、滞納中に年金事務所(当時は社会保険事務所)が事業所に出向いて、社長の給料を遡って低額に改定する手続きを指導しました。

その結果、滞納額が減ります。反面、将来社長が受給できる厚生年金が減ります。
  厚生年金が減るなんて聞いてなかった。勝手に減らされたのは不当だ!
  アホな社長が厚顔無恥にも訴えました。マスコミも社長擁護の報道を繰り返しました。まぁ社長擁護と言うより年金事務所叩きの報道ですね。

ということで、あら不思議、滞納した社長に高額の年金が支給されるようになりました。
  困った話です。


ここまで読むと、年金事務所ってだらしないなぁって感じですが、年金事務所の収納率はなんと98%以上です。98%を下回るようなら一大事です。

因みに田舎の年金事務所は軒並み99%前後です。それに対して都市部の年金事務所は若干下がります。都市部の年金事務所が田舎の年金事務所の足をひっぱってる形ですね。それにしても、ほとんど100%に近い収納率です。

参考までに全国で税務署は524、年金事務所は312あります。
  納付率は国税が平成23年度95.9%、厚生年金は平成23年度98.0%

たかが2%の差ですが、受験勉強を経験した人は良く分かると思いますが、例えば50点から52点に2点あげるのと、96点から98点に2点上げるなら同じ2点でも2点の重みが全く違います。

同様にこの2%の差はたかが2%ではなく、年金事務所の方が数が少ないにもかかわらず、2%上回っているということは、如何に年金事務所の徴収能力が高いかわかると思います。

さて、その年金事務所が本気で国民年金の滞納者に対して強制徴収すればどうなるでしょうか?
  国民年金の納付率は簡単に上がるでしょう。しかし、国民年金の本来の目的は、老齢、障害、死亡時の収入低下に対して、年金給付を行う事により生活の安定を図る事にあります。徴収を強化して、ばんばん強制徴収をすれば、国民年金の納付率は上がりますが、年金自己破産が続出するかもしれませんね。社会保障制度が個人の人生を破壊するとは、本末転倒となります。

そんな事にならないように、厚生年金保険や健康保険では滞納者に対して「督促状を発する」と法律で定めています。これに対して国民年金は「督促状を発する事ができる」となっています。誰が考えたか知りませんが、国民の生活実態を考えて、よく考えた賢い文言ですね。

国民年金は保険料を納付した人には、将来年金給付をしますが、保険料を納付しない人には、支払わなかった分については将来給付しません。従って、国民年金の納付率が上がろうが下がろうが、国民年金財政とはあまり関係がありません。

しかし、かといって、国民年金を納付しない人が沢山増えれば、将来年金が受給できない人が沢山増えます。その結果、将来生活保護を受ける人が増えてしまいます。つまり、皆さんの税金が沢山使われる事になるわけです。そういう事態にならないように、国民年金保険料を納付しやすいように、免除や納付猶予や全納制度等があるわけです。

今回の改正で2年前納ができました。これにより、自営業等でご夫婦とも国民年金第1号被保険者の場合、今まで、一番有利な納付方法は、毎年4月に2人分前納する事でした。

2年前納は、2年に1回、2人分を前納するという納付の仕方もありますが、ご夫婦のうち毎年一人ずつ2年前納する納付の仕方が便利です。例えば、偶数年に奥様の年金を2年前納し、奇数年にご主人の年金を2年前納するという納付の仕方ができます。

毎年2人分を1年分支払うか、毎年1人分を2年分支払うかということです。支払い方を少し工夫するだけで割引率が高くなるので、同じ保険料を支払うなら2年前納を利用するとお得ですよね。

今回いろいろと改正があったのですが、そのうちの1つに所得が400万円以上の方で国民年金を滞納している方については、督促状を発行し、それでも、納付しない方に対しては強制徴収をする事になりました。

一般的には「税務署に比べて年金事務所なんてたいしたことないや」と思いがちですが、年金事務所は物腰は穏やかですが徴収は容赦がないので、痛い目に遭う前に、前納制度等を利用して、有利に納付するようにしてください。


2014.2.3 掲載

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