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第2回 年金は、働けば、働くほど損をするのか?


テレビや雑誌で、 「働けば働くほど損する仕組みは、なんとか変えてほしいものです」という報道を目にする事があります。

一生懸命働いて、折角収入が増えたのに、今までご主人の扶養家族だったのが、収入が増えたため、扶養家族から外れて、自分で国民年金と国民健康保険の保険 料を支払わなければならない。
  だから、「年金は働けば働くほど損をする仕組みになっている」
  だいたいこんな 内容です。

本当に年金は働けば働くほど損をするのでしょうか?

国民年金第3号被保険者の制度や健康保険の被扶養者について保険料がかからない制度は、国際的にずば抜けていい制度です。
  しかし、これらの制度には、どこかに扶養に入れるか入れないかを分ける線引きとしてのラインを引く必要が有ります。
  現在は130万円でラインを引いているわけです。
  そのため、130万円前後で働く人から不満が出たり、不公平感が出たりするわけです。

もし、このラインを70万円に変更したら、130万円前後で働く人からの不満はなくなると思います。
  だって、現在でも200万円前後で働く人から、扶養に入れるとか入れないとかで不満が出る事はないでしょう。

つまり、ラインに関係のない人にとっては、この類の不満は出てこないのです。
  ですから、このラインを70万円に変更したら、70万円前後で働く人から不満が出るでしょうね。

従って、130万円前後で働く人からの不満は、制度上仕方がない不満です。
  問題は、どの程度の年収でラインを引くかであって、ラインを変更する事により不満がなくなる事はありません。

日本人の生活実態に合わせて年収130万円(月額約11万円)未満というのは良くできていると思います。

パートさんで一生懸命働いて、1カ月の収入が11万円前後になると思います。2、日休んだり、勤務時間が1日5時間程度なら11万円に届かないでしょう。

社会保険の資格取得のラインを現在は「他の労働者に比して概ね4分の3以上」と定めています。このラインと扶養に入る年収130万円がほぼ同じ額になります。

ところで、社会保険の資格取得のラインを週20時間以上に変更する方向です。週20時間以上が完全実施されれば、扶養のラインも変更されると思います。
  多分70万円となるでしょう。

扶養に関しての不満は130万円前後から70万円前後に替わるだけですが、この事により、週20時間の人の厚生年金の保険料だけでは基礎年金拠出金をまかなえず、他の方の厚生年金の保険料で負担する必要が出てきます。

また、スーパーや飲食店で働くパートさんが社会保険資格取得となります。つまり、スーパー(イオンやダイエー等)や飲食店(マクドナルドや吉野屋等)のコストが上がり、物価上昇の要因となるでしょう。

これに対して、資格取得する事により、パートさんも将来老齢厚生年金を受給できるようになります。また、病気欠勤等の場合に、健康保険の傷病手当金を受給できるようになります。

週20時間以上にするのが良いのか悪いのかは、良い点や悪い点があり、いろいろな考え方があると思います。

個人的には、負担が重くなりますが、保障が手厚くなる20時間以上で資格取得する事に賛成です。

いずれにしても、マスコミが折りに付け報じる
「働けば働くほど損する仕組みは、なんとか変えてほしいものです」
  ではありません。マスコミ関係者が安易な発言をすると、影響力が大きいのでじっくりと考えて発言するように心がけて欲しいものです。

今月は、第3号被保険者からみた「年金は働けば働くほど損をするのか?」ですが、来月は在職老齢年金受給者から見た「年金は働けば働くほど損をするのか?」の予定です。

2013.12.2 掲載

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