━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2003年3月3日発行 ━
●━━ 若手国会議員メルマガ『未来総理』 第26号 ━━━━━━━━●
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イラク情勢も、北朝鮮情勢も、悪化するばかりでなかなか解決の糸口が見
えません。日本も、平和と防衛について、真剣に考えなければいけない時期
に来たように思います。今回は、前回の石破防衛庁長官の意見を受けて、自
民党の大村議員と、社民党の植田議員から、価値観がかなり違う意見が届き
ました。じっくり読みくらべて、あなたなりの「防衛論」を考えてみてくだ
さい。
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目次
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◎「防衛論」
▼植田至徳(社民党・衆議院議員・比例近畿・37歳・当選1回)
▼大村秀章(自民党・衆議院議員・愛知・42歳・当選2回)
◎編集後記
◎次号予告
◎未来総理メンバーの紹介
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■「軍事力の均衡が戦争の抑止力になるという考え方は時代遅れ」
植田至徳(うえだむねのり・衆議院議員・社民党・比例近畿)
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石破防衛庁長官の「防衛論」には、その基本姿勢においてもまた具体策の
面においても同意することはできません。
イラクの大量破壊兵器や北朝鮮の核問題に対して我が国自身の問題として
取り組むべきことは当然のことですが、それは、石破さんがおっしゃる国際
テロの脅威に直面しているという観点のまえに、核兵器や大量破壊兵器を廃
絶するという国際潮流のなかで、平和憲法を持つ日本が積極的な役割を果た
すことが、我が国の責務だと言って過言ではないからです。
石破さんは「各種事態に適切に対応できる自衛隊の構築」と「日米安全保
障条約の実効性をさらに高める」ことで、「抑止力を最大限に発揮しうる体
制を実現」し、「我が国の平和と独立を守る」とされ、そのために有事法制
も必要とおっしゃっていますから、この論旨に沿って、検証したいと思いま
す。
まず指摘しておきたいのは、石破さんの考え方の前提には防衛の本質は抑
止力だということがあるのですが、その抑止力を軍事力に頼ることがいかに
脆いものであるかということこそが問題だということです。
抑止力とは双方の理性と信頼関係を基礎とするものですから、相手が理性
的判断をするとは限らない場合や相手が国ではない場合はまったく意味があ
りません。さらには軍事力の均衡が戦争の抑止力になるという考え方は、例
えば核抑止論が有効性を持たないことが国際常識になっていることでも明ら
かなように、国際社会における平和秩序の構築にとってもはや時代遅れなの
です。国際潮流を踏まえるならば、憲法の基本精神に沿って我が国が平和外
交を展開することが抑止力を最大限に発揮するための最も現実的選択肢では
ないでしょうか。
つぎに「日米安全保障条約の実効性をさらに高める」という点については、
二国間の同盟を基本にした発想ですから、時代にそぐわないことを指摘せざ
るを得ません。
いま必要な安全保障政策は、多国間による、軍事力によらない、経済や環
境、人権などを柱にしたいわゆる「人間の安全保障」に他なりません。そし
てそれを通して核廃絶はもちろん、軍縮を各国間で進めていくのです。
社民党はすでに「北東アジア総合安全保障機構」を設立するとともに「北
東アジア非核地帯」の創設を提唱していますが、これが国際潮流に沿ったも
のであることはいうまでもありません。
有事法制については、これまでの国会審議のなかでその問題がかなり明ら
かになっていますが、そもそも有事とは何かという点について、法案によれ
ば武力攻撃事態と呼んでいますが、その定義は、(1)武力攻撃が発生した
場合、(2)武力攻撃のおそれがある場合、(3)武力攻撃が予測される場
合となっています。
しかし「おそれ」や「予測」の基準はまったく明らかでなく、いくらでも
恣意的な判断が可能となってしまうという、まずそもそもから間違っている
のです。
それともう一つ、日本国憲法は有事そのものを想定していないということ
に言及しておきたいと思います。というのは、憲法は、その理念の実現とし
て描く理想像が、いかなる軍事的対応も必要としない社会をつくることにあ
るのですから、緊急事態は想定されず国家緊急権を予定していません。
喫緊の課題ですから、イラク問題について最後に触れておきます。まずア
メリカ、イギリスが主張する武力行使は、あらゆる武力行使を原則禁止して
いる国連憲章2条に反しますし、自衛のためであっても武力攻撃がありかつ
国連が必要な措置をとるまでの間に限っている同憲章51条にも抵触するこ
とは明らかです。
アメリカ、イギリス等が新たな国連決議を提案していますが、アメリカの
主張を追認するものである限り平和的手段による解決の追求を義務づけた国
連憲章33条に反します。
イラクに対する査察を終えなければならない理由はなく、国連決議1441
に則って十分な時間をかけ徹底した査察を続けることが国連の枠組みにおけ
る解決策の基本であることは自明の理です。国際世論も大勢は平和的解決を
求めており、我が国はアメリカに対して国際世論に従うよう説得すべきです。
また政府がイラクに特使を派遣し武装解除を求めましたが、イラク側が応
じなければ武力行使だという短絡的な姿勢ではなく、あくまでも平和的解決
を前提とした粘り強い外交交渉を求めます。
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■「日本の平和と安全を守るために」
大村秀章(おおむらひであき・衆議院議員・自民党・愛知)
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日本が国際社会の中で果たすべき役割を考えると、「平和国家」、「世界
経済の安定」、「貧困の撲滅,南北問題解消への貢献」が中心的な課題であ
ると考えます。その中でも、「平和国家」は憲法前文にもうたわれている最
もプライオリティの高い価値であり、軍事面以外での積極的な世界への貢献
と我が国自身の平和と安全を守ることが最も重要な課題です。
こうした観点から、必要最小限の防衛力を整備し、これを必要な時に十分
かつ機動的に運用できる体制を法制面も含めて整備していかなければなりま
せん。そのための準備が有事法制の整備であり、日本が外部から武力攻撃を
受け、自衛隊法76条による防衛出動が命ぜられた場合の法整備はもとより、
テロ・不審船、大規模災害などを念頭に置いた防衛出動に至らぬ事態をも含
む緊急事態法制も早急に整備していく必要があると考えます。
あわせて、国民の避難・救援に関する措置や被害を最小化するための措置、
ライフラインや物資の確保、経済・産業の安定といった国民の保護のための
法制についても関係者の調整を進め、早急に整備しなければなりません。
また、我が国自身の防衛努力を補完しつつ、これと有機的に連携していく
ものが日米安保体制であり、その実効性を高めていくことが抑止力を高め、
我が国の平和と安全を確保することにつながるものと考えます。
戦後50年以上にわたる我が国とアメリカとの信頼関係、同盟関係は、我が
国及び北東アジア地域に平和と安定をもたらしただけでなく、アジア太平洋
における平和と安定にも大きく寄与してきました。
また、両国のGDPをあわせれば、全世界の約半分を占めるという経済力
があり、この両国が文化や歴史の違いを乗り越えて、自由と民主主義といっ
た人類普遍の価値を共有し、互いに協力関係を構築してきたことが世界経済
の安定はもとより、世界の平和と繁栄にも寄与してきたとも言えると思いま
す。
引き続き、緊密な連携を図っていくとともに、友人として是は是、非は非
として、率直な意見をぶつけあう真のパートナーシップを確立していくこと
が重要と考えます。
さらに、我が国の平和と安全を守るための外交努力を続けていかなければ
なりません。日米関係を基軸としながら、韓国、中国、ロシア等の北東アジ
ア地域の各国と協力連携を図りながら、核兵器開発の放棄、ミサイル発射の
凍結といった日朝平壌宣言を守るよう北朝鮮に対して毅然とした対応をして
いく必要があります。
また、東アジア地域の一層の安定を図るために、自由貿易圏及び東アジア
共通の基軸通貨の創設を目指すなど経済貿易関係のより一層の緊密化・一体
化を進めていく必要があると考えます。
イラク問題については、疑惑となっている大量破壊兵器を完全に廃棄し、
そのことを検証、証明するための国連の査察に全面かつ無条件に応じるよう、
国際社会が一致協力してイラクに対して最大の圧力をかけ続けるとともに、
アメリカにもあくまでも国連を中心に国際社会の理解と協力が得られるよう
粘り強く対処することを強く求め、平和的な解決を導くことができるよう、
引き続き、国連などを通じて外交努力を続けていく必要があります。
こうした幾層もの外交努力を重ね、国際社会における我が国の確固とした
基盤をつくることにより、我が国の平和と安全を確保していかなければなら
ないと考えます。
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編集後記 弘中百合子(ロゼッタストーン)
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文字のメディアというのは地味ですが、物事をじっくり考えたいときには、
もっとも適していると思います。 メルマガは文字だけの世界なので、声の
大きさも、容貌の良し悪しも、口のうまさも、まったく関係ありません。み
んな同じ土俵で、自分なりの考えを述べることができます。
防衛は、安易に結論が出せないデリケートな問題です。今後しばらくは「未
来総理」たちの「防衛論」を順番にご紹介していきます。議論を続けるなか
で、日本が抱えている問題が、浮き彫りになってくると思います。日本の平
和を守るために、日本はどんな道を歩むべきなのか、読者のみなさまも、ご
意見をお寄せください。また、文中にわかりにくい言葉などがあったら、遠
慮なくご質問ください。
ご意見、ご質問は
souri@rosetta.jp までお気軽にどうぞ。
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次号予告
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次号のテーマも「防衛論」。発行は3月10日です。
上田 勇議員(公明党)・細野豪志議員(民主党)・
春名直章議員(共産党)が登場します。
※登場する議員の顔ぶれは、変更する場合もあります。ご了承ください。
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未来総理メンバーの紹介
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「未来総理」に参加してくださったのは、次の19名(敬称略)の方々です。
◇衆議院
石破 茂(自民党・鳥取) 上田 勇(公明党・比例南関東)
植田至紀(社民党・比例近畿) 大村秀章(自民党・愛知)
近藤昭一(民主党・愛知) 鈴木康友(民主党・静岡)
達増拓也(自由党・岩手) 樽床伸二(民主党・大阪)
野田佳彦(民主党・千葉) 春名直章(共産党・比例四国)
細野豪志(民主党・静岡) 丸谷佳織(公明党・比例北海道)
山井和則(民主党・比例近畿) 山村 健(無所属・比例東海)
◇参議院
荒木清寛(公明党・比例) 有村治子(自民党・比例)
小池 晃(共産党・比例) 福島瑞穂(社民党・比例)
宮本岳志(共産党・大阪)
詳しいプロフィールを知りたい方、顔写真を見たい方は、ロゼッタストーン
WEBページで公開しています。⇒ http://www.rosetta.jp/
各議員のホームページにもリンクしています。
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発行人・編集人:弘中百合子
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