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第141回  僕が自殺をしない理由

長期にわたる頸椎ヘルニアの痛みにもようやく慣れ、なんとかパソコンを叩けるようになりました。ゆっくりではありますが、また再開致します。どうかよろしくお願いいたします。

それにしても不景気のせいか、ブレまくる政治のせいなのか、はたまた人間の業のせいなのかわかりませんが、世の中の空気は淀んでいます。苛ついた感じを持った人たちが町を出歩き、ちょっとしたことで揉め事になり駅前で大声をあげる、そんな場面によく遭遇します。

こういうときこそ、静かにのんびりと笑って過ごしたいのですが、この数ヶ月間、頸椎ヘルニアの痛みにイライラした日々を過ごしていました。ただジッとしているだけなのに、激痛が走る右半身。気分転換しようにも、本もDVDも散歩も一切ダメとなると、なかなか気分は晴れない。ただただ布団の上に身を投げ出しウンウンと唸るだけ。

どこにも発散できないストレスを溜め込み、あーあ、いっそのこと死んでしまいたいなぁ、と久しぶりに投げやりな気持ちにもなりました。だったらこのさい「死んでしまいたい」という思いが、どうなったら「自殺」という行為に移行するのか探ってみようと、そのままその感情に身を預けてみたのですが、結局というかやはりというか、奥底に居座っている楽天的な部分がムクムクと眼を覚まし、「自殺」とは間逆の「まっ、どうにかなるわいなぁ」という心持ちに傾いてしまい、「自殺」という特殊な行動までには至ることなく、いつのまにか「死んでしまいたい」という心持ちは隅の方に追いやられてしまったのです。
  だから、「自殺」する人の気持ちはまたしても分からずじまい。長年考えてきた「どうして人は自殺をしようとするのか」という疑問は解明されませんでした。

これはあくまでも想像でしかありませんが、「自殺」をする人というのはきっと、「自殺」をした方が「生きる」ことよりも、いくらかは楽であるという考えが頭を支配し、結果、自殺という行動に走るのだと思うのですが、自殺した方が楽という考えに辿り着く前に、なんとかなるさという横道に入ってしまう自分は、やはり自殺とは縁遠い人間なのかもしれない。

「この国にはなんでもある。手に入らないものなんてほとんどない。ただ、希望だけがない」、そう言ったのは誰であったか。しかし、希望がなくても生きてはいける。みんな大きな希望ばかりを持ちたがるからいけない。大きな希望とは言わず、小さな希望を考えればいい。明日明日、明日まで生きていよう。そういう小さな希望の積み重ねが、生きることに繋がっていくと思う。
  自殺は痛い、自殺は苦しい、自殺は見た目が汚い、この三つだけ考えても自殺は嫌なものだ。それに加え、自殺は遺された者に大きな精神的なダメージを与える。これは本当に迷惑だ。

僕なんか、死んでから30年も経った自殺した両親のことをいまだに考える。死ぬとき彼等は何を考え、何を思いながら死んでいったのか。特に父親は、母の首に手をかけるとき、どんな気持ちでそこに力を入れたのか。考えても答えが出ないことを延々と考えてしまう。その度に自分もいつかは、同じことをしてしまうのではないか、という思いにしばらくの間囚われ、気が狂いそうになるのだ。
  「子は親の言うことはきかないが、真似はするものなんだ」、これも誰かの言葉だ。なるほどと思うが、自殺だけは真似たくはない。自分のような思いを、自分の子供や周りの人間に味わわせたくはない。

今の日本、自殺者の数は年間約33000人と言われる。これはあくまで自殺と認められた数であって、遺書がなかったりした人は事故死と数えられるため、年間自殺者はおおよそ100000人とも言われている。これは凄い数だ。一日だいたい274人が自殺で亡くなっていることになる。遺された家族や友人知人の数はこれの何十倍にもなる。それに加え、未遂に終わっている方も入れると、もの凄い人数の方が苦しんでいることになる。

さて、たいへんだ。でもすぐにはどうにもならない。希望を持つのが困難なら、絶望に足を引っぱられないようにするしかない。どこにいても自分が少しでも充実できる小さななにかを見つけるしかない。どんな事でもいい。見つかったら、それに向けて最大限の努力をすればいい。もし見つけられないなら考えよう。死ぬまで考え続けよう。それだけでも自殺は避けられると思う。

ふー、ここまで打つにも何日も要してしまうこの身体。でも死にはしない。息はしているし、ゆっくりだけどご飯も食べれるし、笑ったりもできる。まだまだ大丈夫。
  梅雨真っ盛りの今日この頃、なんだか嫌な感じの日々は続くけれど、しのぐしかない。



2009.6.24 掲載

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