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第144回 『オリンピックは「祝祭」でなく「災害」』
No Olympic Group が記者会見

2020オリンピック開幕まで1年を迎えた東京で、反オリンピック運動グループの活動が顕著になってきている。

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反五輪記者会見。
左より、いちむらみさこ氏、J.ボイコフ教授、アン・オーシエー氏。(撮影:アルバート・シーゲル)

7月23日、「Celebration Capitalism and the Olympic Games」の著者ジュールズ・ボイコフ氏、ノーオリンピックLAメンバーのアン・オーシエー氏、反五輪の会「No Olympics 2020」メンバーのいそむらみさこ氏の3人が会見した。

ボイコフ氏は元オリンピックのサッカー選手で、現在オレゴン州にあるPacific University 大学政治学部教授。政治学、オリンピックに関する著書も多く、リオ、ロンドンなどオリンピックの開催地に居住し実地調査もした。

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質問に答えるJ.ボイコフ教授。(撮影:アルバート・シーゲル)

「オリンピックの問題点は社会科学者がじっくり問題点を調査してこなかったこと。主催国と年次は違っても問題は同じ。警察と軍隊による監視、腐敗、環境破壊、住民の大移動、個人の人権の侵害」。ボイコフ教授は「安倍首相が復興五輪を唱えながら福島原発災害者に背を向けている」と話す。

アン・オーシエー氏は「ロサンゼルスの労働者クラスにはオリンピック開催による利点はなく、セキュリティーのためにカリフォルニア州が集めたデータに警察や軍部がアクセス出来るようにするなど、住民の人権が冒されている」と非難する。

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アン・オーシエー氏(撮影:アルバート・シーゲル)

日本の活動家いちむらみさこ氏は、「東京2020オリンピック1年前の7月24日にリオ、ピョンチャン、ロスなどでの反五輪活動家を迎えての新宿デモを開催する」と報告。「オリンピックは災害です!開催費3兆円、貧困層は立ち退き、資金は大企業に流れる」「オリンピックは私たちにとって恐ろしいエンターテインメントです!」

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いちむらみさこ氏(撮影:アルバート・シーゲル)

いちむら氏は「新競技場建設のため230世帯が移住させられ、建設労働者3名が死亡。真夏の東京でのオリンピックは動員のボランティアにも警官にも健康被害が予想されるが、安倍首相は復興五輪として盛り上げ福島の災害問題を終わりにしようとしている」と述べ、オリンピック廃止の松明がバンクーバーから届いたと手製の松明を取り出した。

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反五輪松明(撮影:アルバート・シーゲル)

記者会出席者31人のうちプレスクラブの正会員は筆者を入れて7名のみ。アソシエート会員10名、外部記者14名、テレビカメラはたった4台の低調さ。
「東京オリンピックをボイコットするには記者会見に来るのが遅すぎたのではないか?」という筆者の質問に、ボイコフ教授は「今回はグローバルな反対運動家たちが初めて集まった会合だ。東京オリンピックだけでなく今後のオリンピックに反対する動きなので遅すぎることはない」。

「安倍は何故オリンピックを欲しがるのか?」という会場からの質問に、ボイコフ教授は「政治的経済的権力が欲しがるから」と答え、いちむら氏は「今まで民主的に決めていたこともデッド・ラインが来ているとブルドーザーのように決められる。安倍首相はハッピー、ピースフル、アスリートは感動と栄光を与える、として問題点すべてを終了させる」。

カナダ・カルガリーの住民投票では「Thank you but no thank you」と拒否し、2004年アテネ夏季オリンピックには11都市が立候補したものの、2024年には 立候補2都市のみ。住民たちが開催の誇りや栄誉と比較した現実のコストの査定を始めてからは、国際オリンピック委員会は不利になっている。

しかし日本ではどうだろうか? 政府とメディアが盛り上がり「祝い事にケチをつけるな」「日本の国際的イメージを更に向上」などという国民的ムードがある限り、この運動の広がりは難しいだろう。

反五輪の会は7月24日新宿デモ、26日千駄ヶ谷区民会館、27日上智大学などでパネルディスカッションの会を開く。

2019.7.29 掲載


著者プロフィール
渡辺 晴子(わたなべ はるこ) : HKW、シカゴ・サン・タイムズ、アジア新聞財団(東京支局長)を経て、現在HKW代表メディア・リポート特派員。30年来の(社)日本外国特派員協会会員で、副会長、理事、監事、選挙管理委員長を歴任し、現在は特別企画委員長、永世会員。同協会の取材活動、文化事業を企画している。また上智大学講師、ユネスコ「女性とメディア」開発コンサルタントとして内外のジャーナリストを育成。
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