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第145回 2人の女性と103人の女性国会議員 -2020年に向けて-


◆吉田晴乃さん

江戸紫の文字が華やかな小振りの名刺が、この半年筆者の机上に鎮座してきた。
「W20 Japan 2019 運営委員会 共同代表 吉田晴乃」とある。

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吉田晴乃さん(経団連提供)

初めて吉田晴乃さんに出会ったのは、3月12日。近年縮小されたForeign Press Centerの狭苦しい会見室だった。モスグリーンにピンク柄の縁取りを効かせ、胸元までの深い切り込みのあるレナードのドレスで颯爽と現れた。職員が音声のボリュームを上げたので改めて気が付いた時、彼女のプレゼンテーションは英語で始まっていた。

ウイメン20(W20)の目的は、北京世界女性会議(1995)の25周年にあたる2020年に向けて、2019年大阪G7サミットへの「ジェンダー・ギャップを埋める新しい繁栄のための提言」をまとめること。

提言の骨子は、2014年ブリスベーン・サミットで提言された「2025年までに男女の参画比を25%以内とすること」を日本国が議長国である間にいかにして各国のAction Planとさせるのか。吉田さんは「ジェンダーの先進国北欧から、女性に運転免許を解放したばかりのアラブ首長国まで20か国を時差をのりこえて“Good Morning,” “Good Afternoon,” “Good Evening”と呼びかけて電話会議を続けた」と、声色を再現して会場を笑わせた。

W20は、23億人の女性を代表してあらゆる分野での差別撤廃を求めるG20の正規の組織である。「Me too movementは昔のウーマン・リブ。我々に自信をつけてくれるのか?(それより)女性の新しいmovementで経済的な効果を見たい。爆発的な数字が社会を変える」と吉田さんは強調した。

吉田晴乃さんは1964年東京生まれ。慶応大学卒業後、米国、カナダなどでキャリアを積み、日本に戻ってイギリスの大手電気通信会社BTジャパン代表となり、女性として初めて経団連審議員会副議長に抜擢された。経済界の女性リーダーとして男女平等推進に邁進し、シングルマザーとして働きながら一女を育てた。

ワーク・バランスに苦労した彼女の夢は孫との公園デビューだった、と聞くが、それを実現する前に、G20サミットでウイメン20(W20)がまとめたジェンダー平等に関する提言書を安倍首相に手渡した翌日(6月30日)、心不全のために55歳の若さでこの世を去った。

1975年世界婦人年、1980年デンマーク世界会議、1985年ナイロビ世界会議、1995年北京世界会議、2000年国連女性会議と一連の世界会議に際してメディアとして参画してきた筆者としては、海外の先進国、途上国でのジェンダー平等は実現しつつあるといえる。しかし、残念ながら彼女が希望していた娘さんが仕事をする頃までに日本では女性差別が消えているとは想像しがたい。

母親として娘の将来が心配なのは当然だが、日本国内に拘らずカナダ人の父と日本人の母を持つダブルとして海外に大きく羽ばたく道も拓けているし、現在でも国際機関や外資系の企業では、日本女性の方が男性より活躍している例が多い。優秀な女性の海外進出がそこまで進んで初めて日本政府が足元に火が付いたと騒ぐのはジョークではなかろうか。

* * * * *

閑話休題。試しにこの原稿を長女に読ませてみた。感動するかと思ったら怒りだした。「娘を公園デビューに連れていけなかった母親がおばあちゃまになってから孫を連れて行こうと思うのは間違っている。母親が男並みに働くのではなく、男が母親のように子供の世話をするべきだ。一部の優秀な女性が男性に交じって男性並みに働くのは今や時代遅れで他の女性には迷惑だ。まして提言を出し終わったら死ぬなんて娘として許せない」

娘を持つ母親の「家庭とキャリア」の両立には、息子に背中を見せて働ける父親とは異なる認識が必要なようだ。


◆ムランボ・ヌクカ国連女性機関(UN Women)事務局長

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ムランボ・ヌクカさん(写真・日本記者クラブ提供)

ムランボ・ヌクカUN Women事務局長は女性、政治指導者(WPL)サミット出席のため、6月末来日した。UN Womenは2010年に、男女平等と女性の地位向上を目指して設立されたものである。

ムランボ・ヌクカさんは1955年生まれ、64歳。南アフリカDurban出身でレソート大学卒業前後から政治活動に入り、1994年のアパルトヘイト撤廃後は、国会議員や閣僚を経て2005年から2008年まで副大統領を務めた。2013年にUN Women事務局長に就任し、現在2期目になる。

「女性のDecision making(重要事項の意思決定)への参画は低すぎて、このままでは世界が男女平等を実現するまでに200年かかる」と明言した。「女性の閣僚は全世界で8%。国家元首は7%。閣僚比率が50%なのは13か国。日本では女性の国会議員が少なすぎる。女性への平等を実現するためにもっと男性パワーの動員を!」(ムランボ・ヌクカさん)

1995年「北京会議」で190ヶ国と地域の政府が採択した「北京行動計画」では、貧困、教育と訓練、健康、暴力、武装闘争、経済、権限と意思決定、組織的メカニズム、人権、メディア、環境と少女の12の重要領域について定めながら、組織的妨害のために実現されている分野は多くない。「日本は豊かで教育の機会にも恵まれており、もっと世界に貢献できる。チャンスをつかめ!」と進言。

ムランボ・ヌクカさんは来日を機にユニクロの親会社であるファーストリテイリング会長兼社長の柳井正さんと面会し、2019年から2年間160万ドルの拠出を受け、アジアの縫製工場における女性の開発プログラムをパートナーシップとして推進する共同プロジェクトを立ち上げた。

*2019年最新衆議院・参議院会派並びに所属議員数(衆議院・参議院ホームページより)

参議院議員に女性が増えました。

2019.9.9 掲載


著者プロフィール
渡辺 晴子(わたなべ はるこ) : HKW、シカゴ・サン・タイムズ、アジア新聞財団(東京支局長)を経て、現在HKW代表メディア・リポート特派員。30年来の(社)日本外国特派員協会会員で、副会長、理事、監事、選挙管理委員長を歴任し、現在は特別企画委員長、永世会員。同協会の取材活動、文化事業を企画している。また上智大学講師、ユネスコ「女性とメディア」開発コンサルタントとして内外のジャーナリストを育成。
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