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第9回 「一休さん」
「一休さん 新・講談社の絵本」(講談社)
宮尾しげを・画
定価:1,575円(税込)
私的おすすめ年齢 4歳〜
カンタンな「しりとり」や「なぞなぞ」が
わかるようになったら
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「僕も、おかあさんとおとうさん、
どっちも好きだよ」
一休さんといえば、「とんち」を効かせて、
殿様やら和尚さまに、
「これは一本取られた!」
と思わせる、超有名なお話です。
学習マンガや未就学児向けのおはなしテキストなどにも、
よく取り上げられています。
「このはし渡るべからず」
も、
「びょうぶの虎」
も、ちゃんとこの本に、出ています。
いただきものの絵本だったんですが、
すごく気に入ったんです。息子が。
何度も何度も、
読んで、と持ってくる。
内心、
同じお話を何度も読むのは面倒だなあ
などと思っていたのですが、
あるとき、謎が解けました!
この一休さんの本、
けっこうページが多く、お話もたくさん詰まっているのですが、
その中で、一休さんがまんじゅうやさんに、
「おとうさんとおかあさんの、どちらがお好きですか?」
と、ちょっと意地悪な質問をされるのです。
すると一休さんは、まんじゅうをふたつに割って、
こういいます。
「このまんじゅうの、どちらがおいしいでしょうか。
同じですよね。おとうさん、おかあさんも同じ親です。
わたしはどちらも、大好きですよ」
と言うのです。
まあ、なんておできになる小僧さんだこと!
とんちで、切り返すのが好きなのかと思ったら、
そのうちに、一休さんのせりふのあとに、
息子が言うのです。
「ぼくも、おかあさんとおとうさん、
どっちも大好きだよ」
――。これが聞きたくて、そして言いたくて、
何度も読んで、ときていたのだね。
そもそも、
子育てしていて気づいたのですが、
「どっちが好き?」
という概念は、かなり大きくなって、
「大人に聞かれて」覚えるようなのです。
もともと、素直な気持ちが、
「どっちも好き」
なのかもしれません。
おとうさんやおかあさん、同じように好きなのは当たり前。
しかし、子どもが大きくなるに連れて、
プレゼントやお菓子など、
選ぶ機会が増えるほど、「じゃあこっち」
という言葉を選ぶのでしょう。
黒白つけろという世の中ですが、
息子のひとことで、
「どっちも好き」
という感情を再認識しました。
そんなに普通のせりふを、
絵本で代弁させるようなことになってて、
ごめんねーー。
訳あって、現在シングル家庭。
でも息子よ、
おとうさんもおかあさんも、大好きだからね! |
2006.6.12 掲載
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