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第4回 「やまんばと3にんのこども」
『やまんばと3にんのこども』(フレーベル館刊)
樋口淳・文 ささやすゆき・絵
定価:1200円(税別)
私的おすすめ年齢 2歳〜
怖い雰囲気や絵を「怖い!」と思えるようになったら
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「ヘンな人に気をつけろ」ってこういう人のこと?
「ううん、見た目じゃないの。本当に怖い人は、おばさんだったり、
おじいさんだったり、おねえさんだったりするんだよ」
有名なお話のパロディを、もうひとつ。
息子は2歳くらいからテレビヒーローに夢中だ。
戦いや強いものが好きらしい。
だから絵本は、オニとかやまんばとかが
出てくるものが好きだ。
いや、そうじゃないのも好きなんだけど。
ということで、3歳くらいのとき、
やまんばやオニの出てくる絵本ばかり
図書館で借りていた時期がある。
そのとき、ろくに中も確認せず、
たまたま借りたのが、この絵本だ。
普通は、やまんばといっても、
けっこう間抜けだったり、最後はこらしめられたり、
小さく変身したところを、
もちにくっつけられて食べられちゃったりする。
しかし、この絵本のやまんばは、本当に怖い。
絵がかわいらしいのだが、この絵本を包み込む空気が、オソロシイ。
文章を現代風に、表現をやわらかくしたりなんぞ、いっさいございません!
きっと昔話って、元はみんなこう残酷だったんだろう。
しょっぱなからして怖い。
3人の子をおいて野良仕事に出た
母親が、やまんばに会う。で、あっというまに食べられてしまう。
そして、やまんばがこどもたちの家にやってくる。
「一郎、二郎はかあさんじゃないからあけない」
というが、
末っ子・三郎はあけてしまう。
幼さ、無知ゆえの悲劇!!
子どもが被害に遭う事件が多い今こそ、
小さいうちから読ませておくべき絵本かもしれません。
家に入ってしまったやまんば。
寝るときに、
「おまえはいい子だ、一緒に寝よう」
と言われる三郎。
無知、または無垢なために、一緒に寝てしまうのです。
夜中、一郎と二郎がぽりぽり音がするのを聞く。
何の音?と聞くと、
おまえも食べるかい、と、
ほおってきたのは…三郎の小指だった!!
こどもに読んでやりながら、
子どもになんて言っていいのか、困り果てました。
しかし、こうした現実から目をそらさせてもいかん、
とも思い、読み続けてゆきました。
危険に気づいた一郎、二郎。
「しっこがしたい」
と外にあるトイレにいく一郎、二郎。
ひもをつけられていくと、ねずみが身代わりになるから
逃げろという。
ねずみは、きっと食われたかあさんなんだろな。
逃げるこどもたち、追うやまんば。
木の上に逃げるも、見つかってしまう。
登り方を聞かれると、一郎はうそっぱちで応酬するが、
こんどは二郎の幼さが、本当のことを教えてしまう。
ああ!! 助けて!!
結果は読んでのお楽しみ(?)だが、
やまんばは死に、ふたりは食べられることはない、
とだけ書いておきます。
しかし!!!
結末は、けっしてめでたしめでたし、と私は思えないのだ。
かあさんは頭からがりがり食われた。
三郎もぽりぽり食べられてしまった。
ふたりは食べられなかったけどーー。
最後にすっきりさせてよと思う。
でも、現実って実際は、こんなもんかもしれない。
今だって、
変質者や執念深い人、やばいヤツに狙われたら、
殺されはしなくても、一家崩壊の可能性はある。
元通りの幸せにはならないことって、多いのだ。
なんでもかんでもハッピーエンドになる、
マンガやアニメ、ドラマや映画がはびこる中、
ちゃんと読んでおきたい絵本だと思う。
お話について、私がいろいろ考えすぎているのかもしれない。
しかし、怖い。
こころにずずんと残る絵本なのでありました。 |
2006.1.13 掲載
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