|
第1回 「3びきのかわいいオオカミ」
「3びきのかわいいオオカミ」(冨山房刊)
文・ユージーン・トリビサス
絵・ヘレン・オクセンバリー
定価・1,470円 (税込)
むかしむかしあるところに、さんびきのかわいいオオカミがいました
……あれ、なんだか逆だね
3びきの…とくれば、フツーはコブタだ。
きょうだいコブタたちと悪いオオカミが繰り広げる、
食うか食われるかの闘争!そう、「3びきのコブタ」だ。
3歳にもなれば、どの子どもも1度は読んだことのある有名なお話。
しかし、この本は「3びきの」「オオカミ」なんである。
しかも、あいだに「かわいい」とある。
この手のパロディは大好きだ。
でもって、息子も大喜びであった。
1ページめは、おかあさんと3びきのオオカミの絵から始まる。
「3びきの かわいいオオカミが おかあさんといっしょにくらしていました」
息子「コブタの話と一緒だねえ!」
ハハ「じゃあ、悪いおおブタが出てくるのかねえ?」
いやあ、そのとおりなんでした!
オオカミのかーさんも心配します。
「悪いおおブタには気をつけるのよ」
オオカミは3匹一緒に、家を建てることとなります。
ワラ、木の家は飛ばして、最初からレンガの家です。
家や建つやいなや、悪いおおブタがやってきて、
「家に入れろ!」とのたまうのでした。
オオカミ3きょうだいはもちろん、入れない。
するとお約束、ブタはふうーとふいて、家を飛ばそうとするのだけど
家は壊れない。
ここからが今どきなメルヘンです。
大きなハンマーやら電気ドリルやらそれはまあ
リアルなものを持ってきて、つぎつぎ家をぶち壊していくのです!
悪役がブタだけに、
いくら悪ぶろうが目的は「家に入れろ」であって、
「食べちゃうぞ」ではない。
だからこそ、執拗に家を壊し続ける大ブタに、
「ああ、こういう人いるよな」と、
大人は現実にいる困ったちゃんの姿を見たりします。
最後は思いもよらない展開で、物足らない気もしたけど、
「現実の困ったちゃんとも、こんなふうに付き合えれば…」
と大人は思うのでした。
あ、すっかり大人目線でした!
子どもはというと、
かわいいオオカミごっこに夢中になり、
「ところがこのブタ、悪いのなんのって、
もうとんでもない悪ブタだったんです!」
と叫びながら、ハンマーや電気ドリルやその他もろもろで
家を壊す真似をしております。
それじゃ、心育てじゃないって?
いいえ、きっと将来、困ったちゃんと出会ったとき、
この、どんでん返しの結末が、人付き合いの礎となるはずです!
|
2005.10.21 掲載
|
|
|