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第100回
『旅する写真家 レイモン・ドゥパルドンの愛したフランス』

フランスを代表する写真家で、ドキュメンタリー映画監督、レイモン・ドゥパルドン(1942-)。世界最高の写真家集団として知られる「マグナム・フォト」に所属し、『モダン・ライフ』などの映像作品も高く評価される巨匠による、人生のハイライト集とも言うべきドキュメンタリー作品が本作。フランスの田舎を愛車のワゴンで巡りながら写真を撮影するドゥパルドンの現在の姿に、共同監督・ナレーションを務める妻クローディーヌ・ヌーガレが発掘した未発表映像を織り交ぜながら、“ガイドブックに載らない世界旅行記”が展開される。

この映画を見た理由は、タイトルに惹かれたからです。
正確にいうなら、宣伝チラシにとてつもない魅力を覚えました。

正直、レイモン・ドゥパルドン氏のことは、ほとんど知らなかったのですが、“旅する写真家”という言葉、さらにファインダーをのぞく彼の写真だけで十分すぎるほど興味をかきたてられましたね。その存在が、何よりの説得力!

そして、期待をはるかに上回るものを本作から味わわせていただきました。

特に印象に残ったところが3つあります。

まず、巨匠の目に映るフランス。
彼が写真に残しておきたいと感じるフランスとは一体どのようなものか?フランス好きの僕としては、気になるポイントの1つで、見れば見るほど、自分にない視点を感じずにはいられません。大きな刺激になりました。

次に、貴重な未発表映像の数々。
アラン・ドロン、ジャン=リュック・ゴダール、エリック・ロメールといった大物の姿、さらに、世界の紛争地帯や独裁政権、傭兵たち…。ネルソン・マンデラもインパクト大!一体誰が出てくるのか、という楽しみ方もできると思います。

最後に、レイモン氏が一体どんな旅をしてきたのか、という点です。世界各地が出てきますが、いわゆる観光旅行やバカンスとは全く異なるもの。“人生という名の旅”と呼ぶのがふさわしい気がします。

それと、作中で、ポツリと語った言葉が心に残ってます。

「私はもっといろいろな国を旅した方が良かったのかもしれない。この国(フランス)を撮るために…」といったようなもの。いろいろ考えさせられる深い言葉で、まさに旅する写真家ならでは!

「世界中を旅したフィルムのかけらで一本の映画をつくる」という彼の長年の夢が現実のものとなった本作、ぜひお楽しみください!2012年・第25回東京国際映画祭「WORLD CINEMA」部門、上映作品です。(映画祭上映時タイトル「レイモン・ドゥパルドンのフランス日記」)


『旅する写真家レイモン・ドゥパルドンの愛したフランス』
2017年9月9日より公開中
■公式サイト
http://tabisuru-shashinka.com/

2017.12.5 掲載

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