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第93回『おとなの事情』

月食の晩に、幼馴染みの3組の夫婦と1人の男が集まる。1組は新婚、1組は娘の反抗期に悩み中、1組は倦怠期の真っ只中、そして、なぜか新しくできた彼女を連れずに自分だけで現れた男。会が進むうちに、1人が「自分には隠し事などない」と言ったことをキッカケに全員が自分のスマホをテーブルに置き、「携帯電話にかかって来た電話を皆の前でスピーカーに切り替えて話すこと」「メールが届いたら全員の目の前で開くこと」というルールの“信頼度確認ゲーム”を行うことに。次々にかかってくる電話やメールによって、それぞれの秘密が次第に明らかになっていくが……。

イタリアのアカデミー賞に当たるダビッド・ディ・ドナテッロ賞で、作品賞、脚本賞のダブル受賞を始め、世界の映画祭で16冠を獲得した話題作。

いわゆる“ワンシチュエーションコメディ”で舞台は夕食の場のみ。現代生活の象徴といえるスマホをめぐって、さまざまなドラマが展開していきます。

一言でいうなら、
「笑えるけど、笑えない話」です。

スマホ1つに、一体どれだけの秘密や個人情報が隠されているのか?誰もが多少なりとも思い当たる部分があることで、現実の恐ろしさを感じずにはいられません。

たとえば、日記や手帳にも個人の秘密や情報が記されてますけど、スマホとは全く比較にならないでしょう。

スマホを使いこなせばこなすほど、日記や手帳的なことは当然含まれてきますし、それ以上に「その人の全てがわかる」といっても過言ではないほどの要素が集まってくるはず。

ものすごく便利なようでいて、実はものすごく危険なもののような気がしてなりません。

いろいろ考えさせられる作品であり、さらに先の時代になって振り返ってみたら「2017年前後の時代を知るためには、この映画を見ろ!」というくらい、当時を象徴するものになっていることでしょう。1つのスタンダードになるかもしれません。

内容的には世界共通というか、スマホを利用する国ならば、どこでも事情は同じ、と言ってよいと思います。だから、世界中で評価されるのも納得です。

が、このオチの付け方は、とてもイタリアらしいなぁ、と感じましたね。日本人監督だったら、きっとこうはしないはず!

その気になれば、いろんな角度から、いくらでも語れちゃう作品です。

自分が一体何を感じるのか、
楽しみにしてご覧いただければ幸いです。


『おとなの事情』
全国順次公開中
■公式サイト: http://otonano-jijyou.com/

2017.4.25 掲載

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