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第88回   神様の思し召し

天才だが傲慢で毒舌の心臓外科医トンマーゾ(マルコ・ジャリーニ)。家庭に戻れば、妻との仲は倦怠気味、長女は冴えない男と結婚し、ため息をつく日々。唯一の期待は、医大に通う息子アンドレアだけだ。
しかし、ある日アンドレアが突然「神父になりたい」と言い出し仰天!息子が誰かに洗脳されたと決めつけたトンマーゾは、アンドレアが慕うカリスマ神父(アレッサンドロ・ガスマン)のもとへと向かうが……。


2015年の第28回東京国際映画祭にて、
観客賞を受賞した傑作が、満を持して戻ってきました!

笑い、涙、家族愛、友情…
イタリアコメディの典型と言ってもいい内容で
誰でも安心して楽しめます。

一番の見どころは、傲慢で石頭な天才医師が、
ムショ帰りの破天荒な神父との交流によって、
どうなっていくのか、という点ですね。

お互い中高年男性という共通点こそあるものの、
エリートと前科者であることを筆頭に、
一見、何もかもが正反対のような二人。

噛み合わなくて当然です。

しかし、医者は人の命を救い、神父は人の心を救う、
つまり、どちらも“救う人”。

さらに言うなら、医者にできないことが神父にでき、
神父にできなことが医者にできるわけですから、
それぞれが世の中にとって必要な存在、と言えます。

もし医者と神父が力を合わせることができれば、
こんなに心強いことはないでしょう。

しかし、いつもは"救う人"であっても、
自らに救いを必要する時もあります。

そんな時、救いとなるのは、一体誰でしょうか?
医者や神父のように、特別な立場の人でしょうか?

必ずしも、そうとは限りませんよね。

特別な仕事をしていても、いなくても、
人は、日常の中でお互いに救ったり、救われたりしています。

本人に自覚があろうとなかろうと、
その人が存在することによって救われてる人が、きっといる。

本作において、主人公の二人以外の登場人物は、
揃いも揃って、うだつのあがらない人ばかりです。

彼らの存在が、今の世の中を映し出す鏡になると同時に、
本作の重要なスパイスである、と僕は思います。

ま、あれこれ語りましたが、理屈抜きに
大笑いしに行くだけでも十分価値があります。

どう見るかで、いかようにも楽しめるこの傑作、
ぜひご覧ください!


『神様の思し召し』
2016年8月27日より公開中
■公式サイト: http://gaga.ne.jp/oboshimeshi/

2016.9.25 掲載

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