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第72回   ルノワール 陽だまりの裸婦

1915年、コートダジュール。
人生の黄昏時を迎えていた大画家ルノワール(ミシェル・ブーケ)は病に冒され、満足に絵筆を握るのも難しくなっていた。追い打ちをかけるかのように、最愛の妻の死。さらに次男ジャン(ヴァンサン・ロティエ)が戦地で負傷したとの知らせも入り、失意のどん底にいた。
しかしある日、亡くなった妻に頼まれたという、絵画モデル志望のアンドレ(クリスタ・テレ)がやって来る。溢れる生命力と輝く美しさを持つアンドレを前に、ルノワールは『浴女たち』の創作に取り掛かることを決意するが…。


印象派を代表する画家で、日本でも高い人気を誇る
ピエール=オーギュスト・ルノワールの
晩年を描いた作品です。

それだけでも十分興味深いところですが、
物語の中に複数の見どころが交錯していて
実に興味深い人間ドラマとなっています。


たとえば、

1. 画家ルノワールの晩年、最高傑作「浴女たち」誕生に秘められた事実
2. 仏映画界の巨匠となる息子ジャン・ルノワールは、いかにその道を歩き始めたのか
3. 父子2人のミューズとなったアンドレとは、一体どんな女性か

これらの、それぞれに注目してもよし、
全てを俯瞰して見るのもよし。

3人の中心人物の、心の機微を追うほどに
物語の世界に入り込んでいけるはずです。


その一方で、180度違う見方も可能です。

物語云々は置いておいて、
絵画を見るように、ただ映像を見る!
それも素晴らしいことだと思います。

もし、本作において、
何が一番印象に残ったかと問われるならば、
それは、圧倒的な映像美です!

光と緑、そして人間。
全編が最高の絵画に見えるくらい
息を飲むような美しさに包まれています。

極端なことを申し上げるなら、
物語はあってもなくてもよいのではないか、
とすら思えるほどです。

さらには、要所に出てくるルノワールの言葉も
どこか哲学的で心惹かれます。

いろいろな美を多角的に堪能できる
またとない作品ですね。

芸術の秋に、ぜひおすすめします!


『ルノワール 陽だまりの裸婦』
2013年10月4日より公開中
■公式サイト: http://renoir-movie.net/

2013.10.28 掲載

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