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第66回   塀の中のジュリアス・シーザー

イタリア、ローマ郊外にあるレビッビア刑務所。ここでは囚人たちによる演劇実習が定期的に行われている。囚人たちは所内劇場で様々な演目を演じ、一般の観客がこれを見る。演出家のファビオ・カヴァッリは、今年の演目をシェイクスピアの「ジュリアス・シーザー」と発表。俳優のオーディションが始まり、シーザー役、ブルータス役、キャシアス役などが、次々と重警備棟の囚人に割り振られていく。本番に向け、所内の様々な所で稽古が始まるが…。


何の予備知識も持たずに、見始めましたが
すぐ何か違和感を覚えました。

何かが違う。
なんだろう、この感じは…。

そして気づきました。

シーザーらを演じているのは、
本物の囚人たちだったのです!

いわば、演劇実習のドキュメンタリーを通じて、
「ジュリアス・シーザー」の物語を重ね見ていく。
本作の最大の特徴です。


この世は舞台、人は皆役者。
シェイクスピアの名台詞をまさに地で生きている人たち。

演目が日常生活そのものと同化し、
刑務所内がローマ帝国になっていく。


一方で、役が役を越え、
自分の過去を思い出させてしまう。

何とも言えない緊迫感が
ひしひしと伝わってきます。

観客の前に立つ華やかな世界、解放感と達成感。
その一瞬の輝きのためのモノクロの世界。

あまりに対照的な光景が
言いようのない感情を呼び起こします。
特に、最後のシーンに注目!


尚、本作の監督は、「父/パードレ・パドローネ」など、
数々の金字塔を成し遂げてきた、
パオロ(81歳)とビットリオ(83歳)のタビアーニ兄弟。

兄弟の集大成ともいえるこの作品、見逃すべからず!!


第62回ベルリン映画祭金熊賞受賞
『塀の中のジュリアス・シーザー』
2013年1月26日より公開中
■公式サイト: http://heinonakano-c.com/

2013.2.9 掲載

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