WEB連載

出版物の案内

会社案内

第65回   ロンドンゾンビ紀行

都市開発が進む、ロンドン・イーストエンド地区。テリー(ラスムス・ハーディカー)とアンディ(ハリー・トレッダウェイ)のうだつのあがらぬ兄弟は、人生最大の危機に直面していた。育ての親である祖父(アラン・フォード)が入居している老人ホームが閉鎖されることになり、兄弟はそれを阻止すべく銀行強盗を計画。何とか実行したものの警察に包囲され、万事休す…と思いきや、町は大量発生したゾンビによって大混乱! その頃、老人ホームにもゾンビの魔の手が忍び寄り…。


この手の作品は、物語云々以前に、
ビジュアル的に、好き嫌いがハッキリしますね。
好きな人には、たまらなく面白いはず!

一方、ホラー特有のエグい絵面が苦手な人は
見ない方が安全でしょう。

思わず、うぅっと目を背けたくなる
シーンもけっこうありますし。

ただ、本作はホラーという理由だけで
拒絶してしまうのは、実に惜しい。

というのも、この作品を見る際、
ゾンビの存在を、どうとらえるかによって
見方が全然変わってくるからです。

見ようによっては、
いっときの娯楽に終わらない
大きな“何か”を得ることすら可能でしょう。


ゾンビ、それは、
変わりゆくイーストエンド地区への抵抗勢力か。

それとも、人が何かやろうとするときに、
その障壁となる存在の象徴か。

または、お互いに足を引っ張り合う
人間のおぞましさの化身か。

一瞬にして変わってしまう人間という存在の脆さか。

もちろん、単なる亡霊として普通に流しても
いいでしょう。

ゾンビが町を席捲するなど、
現実にはありえないことです。

しかし、あなたにとってのゾンビだったり、
ゾンビ同然の社会的存在が目の前に立ち塞がることは
大いにありえます。

そんな現実に直面したときに、
あなたならどうするか?

そんなことを、後で考えてみるのも
また一興かと思います。


他にも、イギリス下町英語のコックニーや、
『007ゴールドフィンガー』で人気を博した往年の名女優、
オナー・ブラックマン85歳の熱演など、
マニアックな見どころも豊富!

普通ではない映画を楽しみたい方に
特におすすめします。


『ロンドンゾンビ紀行』
2013年1月12日より公開中
■公式サイト: http://londonzombie.ayapro.ne.jp/

2013.1.26 掲載

著者プロフィールバックナンバー
上に戻る