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第63回   菖蒲

大河を望むポーランドの小さな町。医師と妻マルタ(クリスティナ・ヤンダ)は長年連れ添ったものの、第二次大戦中のワルシャワ蜂起の際、二人の息子を亡くした事が大きな傷となっている。夏が訪れようとする頃、夫は妻が重病で余命いくばくもない事を知るが、妻に告白できずにいた。一方、マルタは船着き場のカフェで美しい青年ボグシ(パヴェウ・シャイダ)を見かけ、彼の輝くような若さに魅かれる。翌日マルタは河辺で偶然ボグシを見かけ、つい声をかけてしまうが…。


久々に悩ましい作品に出会ってしまいました!

見終わった後、「んん?」と思いました。
正直、物語がつかめないのです。
居眠りしたわけでもないのに(笑)


物語がいわば三層構造になっていて
本筋と劇中劇の境目が途中で
わからなくなってしまったのです。

このモヤモヤを解消すべく、
もう一度、作品を見ようか、とも思いましたが、
まずは記憶を辿りながら場面を再現することにしました。

そして、わかったことがあります。
どこからどこまでが本筋だとか、境目だとか
そんなことはどうでもいいのだ、と。
そういう次元の話ではないんですよね、きっと。


作品の中に、こんなセリフが出てきます。

「なんて時代でしょう。でも河は流れていく」

この言葉のように、流されてみたらいいんだと思います。
これが本作を楽しむ秘訣ですね。

出会いはあまりに遅く、別れはあまりに早い。
命とは、かくも美しく、かくも儚い。

巨匠アンジェイ・ワイダの紡ぎ出す抒情の世界を
ぜひご堪能ください。


『菖蒲』
2012年10月20日より公開中
■公式サイト: http://shoubu-movie.com/

2012.11.1 掲載

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