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第60回   ファウスト

ファウスト
19世紀初頭のドイツ。ファウスト博士(ヨハネス・ツァイラー)は、ひたすら“魂”の存在を追い求めていた。研究費を使い果たしたファウストは、人々に悪魔だと囁かれている男、高利貸のミュラー(アントン・アダシンスキー)の元を訪れる。 生きる意味を教えるというミュラーに導かれた博士は、少女マルガレーテ(イゾルダ・ディシャウク)と出会い、一目で心奪われる。しかし、ミュラーの策略によって少女の兄を誤って殺してしまう。それでも彼女の愛を手に入れたいファウストは、自らの魂をミュラーに差し出す契約を結ぶが…。


タイトルからピンときた方も多いかと思いますが、
原作は、ドイツの文豪ゲーテの古典的名作「ファウスト」です。

悪魔と契約して魂を売り渡す代わりに、
地上の快楽を手に入れたというファウスト伝説。

ミステリアスで幻想的であるゆえ、
これまで何度も映画化されてきました。

しかし、本作はいろいろな意味で
これまでのものとは全く別の作品と
考えた方がよいかもしれません。

物語上の特に大きな違いが、
“悪魔・メフィストフェレス”が
高利貸しミュラーとして描かれている点です。

現代の悪魔といえば、高利貸し
という発想からの設定でしょうか。

ミュラーは高利貸しであるとともに、
毒を飲んでも死なない、
人間とは違う存在、として描かれています。

つまりは、高利貸しを営む悪魔、という感じですね。
見ていただければわかりますが、
これが何とも不気味!!(笑)

描かれた世界は、ファンタジーのようであり、
ゴシックホラーのようであり、絵画のようであり、全てが芸術。

悪魔との駆け引きの中で
急速に変わっていく運命の行方に吸い込まれます。

まぶたに焼き付いて離れない幻想世界は、
夢の中にまで出てきそうな気がするほどです。
あまり夜に見ない方がいいかもしれません(笑)
荘厳な音楽も心に残ります。

ファウストは“生きる意味”を
見つけることができるのでしょうか?

監督は『太陽』『エルミタージュ幻想』の
アレクサンドル・ソクーロフ、
撮影は『ハリー・ポッター』『ダーク・シャドウ』の
ブリュノ・ボルネオル。

この強力タッグが紡ぎ出す
摩訶不思議な幻想世界をぜひお楽しみください!


ファウスト

『ファウスト』
第68回ヴェネチア国際映画祭金獅子賞(グランプリ)受賞作
2012年6月2日より公開
■公式サイト: http://www.cetera.co.jp/faust/

2012.7.2 掲載

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